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※末崎視点
いつも一人で本を読んでいる、あいつ。
最初はよく思ってない奴らもいた。それで嫌がらせとかするやつもいた。よく思っていなかったのは、俺もそう。
当の本人は何にも考えてないのか分かんないけど、いつもその表情は変わらなかった。カバンの中に入っている小石を少し眺めては、また戻すという行為を始めてみたときは、俺もあいつとは仲良くなれないなと思った。小石集めてる奴なんて、絶対やばいやつだし。
放課後、友達と談笑した後、適当に小石を蹴飛ばして帰ってたとき、あいつはカバンから小石を出して、川岸に捨てているのが見えた。その次の日、登校中、あいつの登校班の同級生?上級生っぽいのがあいつのカバンに小石を入れている。最初はその行為の意味が分からなかったが、普通にいじめの類だろう。そう解釈した俺は、特に何も考えず班から抜け出して正義を成した。俺は非常に単純だったので、単純に正義を成すこと以外の事は分からなかった。その時あいつとその班の奴らにガチで変な目で見られたことは、割と恥ずかった。休み時間、あいつの席に行って朝のことを謝った。上の名前は冨土原だった。冨土原の下の名前は、よく読めなかった。冨土原はずっと日本語を喋らなかった。冨土原って実は外国人なんじゃないかと思った。
それから、冨土原といる事も多くなった。他の友達がいると話してくれないけど、冨土原なりに頑張っているのは分かってたのでより話せるようになるように俺がいろんな友達と会話させてやった。結局それは中学生になっても、高校生になっても直らなかった。
そんな冨土原が、最近好きなやつが出来たという。俺にもそんな時期があったなーなんて思いながら好きな人は誰だなんて質問を適当に受け流す。冨土原に好きなやつがいるなんて話の方が気になるに決まっている。関わりのある女性なんていたっけ、花園さんくらいか。なんて思っていたけど、やっぱり意外だ。聞いた話でしかないけど、だいぶ不思議なヤツらしいし。まあ、一年の頃徒競走ですげー活躍してたらしいけど。へんな奴同士趣味があったのだろうか。しかし、俺以外とまともに話せたり、興味のあるやつがいるっていうのも感慨深い。しかも気の置けないと来た。落ち着いて話せる相手が出来たというわけだ。成長してるんだな、冨土原…。
でも、俺には二人が思いあっているかどうかは分からない。ただ、冨土原の背中を押すことぐらいはしてやりたい。
いつもの放課後。
「で、どうしたいんだ?」
「なにが?」
「花園さんとどうなりたいんだよ。おまえは。」
「・・・ふむ」
ひとしきり考えた後、「わからない」。冨土原の親友ながら、もうちょっと将来のことを考えたらどうだと思う。
「好きなんだろ?付き合いたいとかさあ・・・」
「俺は、そういうのよくわからないからな。最初は、徒競走で花園さんのことが気になったってだけで。でも、話すようになって、一緒にいる機会も多くなって。」
「最初は徒競走?なんでだ?」
徒競走で普通気になる子とかいるのだろうか。それも冨土原が。
「・・・目、かな?凄く、きれいで・・・」
「・・・フーン。冨土原って目フェチとかそういうのなの?。」
「いや、違うから・・・」
「まぁいいや。告白は?するの?」
「俺が出来ると思う?」
「俺は信じているぞ。刎頸の友よ」
それを言った後、冨土原の目が少し濁ったような気がした。
その日、俺たちはいつも通りそれぞれの家に帰った。