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#異世界転生
しめさば
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リディアが転写石を大量に作ってゼゼに渡すと、蚊取り閃光の量産が一気に加速した。ドワーフの鍛冶師たちがパーツを作り、手の空いた獣人たちが組み上げていく。また、ヒルの魔物の他――ネブラに反応する蚊取り閃光も作成された。
……その傍らで、発明者のゾゾは別の開発を行っていた。
「……今度は何を作っているんですか?」
「リディアちゃん、興味がある~?」
「もちろんありますが、そもそも……みなさん、戦いの準備をしているので……」
全く役に立たない開発なら、今は戦いの準備を手伝って欲しい。ゾゾはなかなか制御が利きづらい性格のため、あまり強くは言えないのだが――
「じゃじゃ~ん! これを見てよ!」
「……この前作った、宙に浮かぶインテリアの箱……ですね?」
「そうそう! 底にスイッチを追加していて……これを捻ると、浮かなくなる!」
「はぁ」
「もう一度捻ると、浮くようになる!」
「はぁ」
「便利!!」
「はぁ」
ゾゾの扱いにも慣れてきたリディアは、ついつい話もスルーしてしまう。ただ……よくよく考えてみれば、今回の発明も使い方次第なのだろう。宙に浮く分、他の入れ物を使うより軽量化することができるのだ。
「――いえ。アイディアを持ち寄れば、面白い使い方が見つかるかもしれませんね。爆弾を入れて、宙に浮かせたまま敵の拠点に飛ばす……とか」
「え~!? これ、インテリアなんだけどぉ~!?」
「他にも――ああ、そうだ。ヴェルガの転移魔法の限界は、重量に依存するって話だから……これを上手く使えば、転移できる人数が増えるかも?」
「……あの、リディアちゃん? これ、インテリア……」
「そもそも、街の中でも使えますよね。台車に応用すれば、重いものでも簡単に運ぶことができますし……!」
「ワッチィ、やる気がなくなってきた……」
ひとりで盛り上がるリディアに、ゾゾは拗ね始めた。
「……インテリアとして使うなら、箱の部分を透明な素材に変えたり、宝石にしたり、中に灯りを入れられたりすると素敵ですね♪」
「おお、それはナイスなアイディ~ア!!」
「戦いの準備が終わったら、私も手伝いますね!」
「おっけー! 量産、頑張るぅ!!」
リディアは言葉巧みに、ゾゾを仕事に戻すことができた。まわりにいるドワーフたちも、リディアの話の持っていき方に感心していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
蚊取り閃光は――結局のところ、対象は蚊ではなく、何かを取るわけでもないが、名前はそのままになっていた。今さら変えるのも面倒で、ついでに語呂も良い、というのが理由だ。そんな蚊取り閃光は森の各地に設置され、ヒルの魔物やネブラがどこを通っても、侵入しようとすれば眩い閃光を出すようにされた。
「リディアさーん、設置が全て終わりました!」
エルフたちを指揮するヘルミナが、リディアに報告する。
「みなさん、お疲れ様。魔物やネブラで実証したわけではないけど、ゼゼさんのお墨付きはあるから……一旦は安心ね。でも、万が一もあるから油断はしないでね」
「次に捕まえたら、ちゃんと動くか確認します?」
「そうね、余力があればそうしましょう。前に確保していたのは、もう燃やして捨てちゃったから」
「あはは……。寄生してくる連中なんて、死体でも近くに置いておきたくないですよね……」
理想を言えば、魔物やネブラの死体は保存するべきだ。しかし心情的には難しい――それはヘルミナを始め、全員が同じ思いだった。
「魔物やネブラを見つけたときは、本当に無理をしないでね?」
「はい! 見つけたとき用の照明弾も、全員に渡りました。これを空に向かって撃つ、ということで!」
「ええ。蚊取り閃光が光ったら、遠巻きに確認して、すぐに使ってね。くれぐれも無理して戦わないように」
「はーい。そもそも、ひとりでは近付きたくないですし……」
これでひとまず、巡回体制は整った。あとは武器や防具、それ以外の道具を量産していき……そして、ドワーフやエルフの国から支援を受ける。本当の戦いはそれから。あとは準備が整うまで、敵が襲い掛かってこないことを祈るだけ――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……しかし、1週間後の夜。再び西の森の結界が破られた。そうそう簡単に破られるものではないのだが、ネブラにも優秀な人材がいるようだ。
「自身は低能のくせに、宿主の力を使えるようになったか――」
蚊取り閃光が輝き、夜空に照明弾が打ち上げられる。街の西側を巡回する者はそこに集まっていくが、リディアは念のため、街の中央で指示を出していた。その横では、ヴェルガが転移魔法で情報の伝達を担っている。
「……吾輩、結構大変なのでは?」
「鏑矢――音が鳴る矢で伝わる程度の情報なら、それでやるんですけどね。細かい情報は、やっぱり口頭でないと」
「人間は通信魔法を使えるのではないのか?」
「私は黒魔法と結界魔法、あとは死霊術が中心ですから。通信魔法は使えなくて」
「そうか……。吾輩も、今まで必要が無かったからなぁ……」
このとき、ヴェルガは密かに通信魔法を学ぶことを決めた。自分が楽をするためではあるが、迅速な情報伝達を実現するには必要なものだ。
リディアはヴェルガに指示を出して、西の森にいるヘルミナを連れてきてもらう。
「状況はどう?」
「ひぃん……。量が多すぎますよぉ~っ!? 森の遠くで陣形を組むくらい、人数がいるんですもん……」
「……陣形を? 今まで、そんなことは無かったのに……」
ネブラは複数いても、せいぜいふたりだった。しかし今回は、最低でも数百人規模ではあるようだ。
「今のオルトゥスで、機動力が一番あるのはヴェルガさんね……。ヴェルガさん、ちょっと空を飛んで偵察をしてきてくれますか?」
「おう、承知した。しばらく待っておれ」
「あ、ついでにヘルミナを前線に戻してください」
「い、行ってきますぅ……。おやつはアイスクリームがいいなぁ……」
ヴェルガはヘルミナと一緒に転移していき、その後、西の森から宙に飛んでいった。
「……さて、シオンもデュランも……頑張ってくれているかしら」
「我は、出ないで良いのか?」
ふと、一緒に残っていたレンザンが声を掛けてくる。レンザンの戦力はオルトゥスでも最高峰であり、活用しない手は無いのだが――
「西から、だけとは限らないので。レンザンさんは、北で襲われたでしょう?」
「ああ。……他の方角からも攻められる、と?」
「万が一に備えて、でしたけど……。陣形を組むほどには、戦術を持っているようなので」
「ふむ……。中央におれば、どこにでも駆けつけられるからな」
ヴェルガがいれば、転移で移動することもできる。しかし今がそうであるように、ヴェルガが不在の場合もある。だからこそ、応用の利く戦力を敢えて中央に残しているのだ。
「――うん?」
レンザンが声を上げると、北の空と、南の空で照明弾が打ち上がった。照明弾は敵を見つけたときの合図だ。それが北と南から上がったということは――
「同時に、2か所!?」
「引き続き、西でも攻撃を受けているようだから――これは厄介だな」
リディアは戦略を巡らせた。北と南には険しい山があり、そこから侵入するのは労力が要る。つまり、ある程度は敵の数も少ないはず――
「リディアさ~んっ!!」
「吾輩も戻ったぞ!!」
転移魔法の光の中から、ヘルミナとヴェルガが姿を現した。ヘルミナはもう、涙目になっている。
「ヒルの魔物が増えてきて……これ以上、止めるのは難しそうです……!!」
「西の外にいるネブラの大群は、1000体程度だったぞ。ついでに北と南も話を聞いてきたが、そこはネブラだけのようだな」
「……とはいえ、ヒルの魔物は後から出てくることもあるからな……」
ヴェルガの言葉に、レンザンは冷静に分析する。リディアはそれを受けて、しばらく考える。ただ、悠長に考えることはできない――
「レンザンさんは、北に向かってください。西の戦力を150人、連れていって良いので」
「ほう……?」
「南にはドワーフたちがいるはず。でも、少し足りないから……ヘルミナは50人の戦力と一緒に、そこに向かって?」
「で、でもそうすると……西はほとんど、戦力が残りませんよね? 西はどうするんですか……?」
「――私が出るわ」
リディアは静かに言い切った。確かにリディアは強い――という認識が、全員にある。ただ、圧倒的な敵を前にして、どれだけ戦えるのかは未知数だった。
「……まぁ、お嬢ちゃんなら上手くやるのだろう。ほれ、火竜よ。まずは全員、西に転移だな」
「おうよ、火トカゲ。さっさと行くぞ」
「それじゃ、中央での連絡役は――アルマ、よろしくね」
「わ、わたしですか!?」
突然の大役を押し付けられたアルマは、一瞬驚いたが……すぐに気を取り直して、力強く頷いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リディアは西の森に転移して、大声で指示を出した。西で戦う者たちは、ヴェルガの魔法で北と南に転移していく。度重なる魔法の使用で、さすがのヴェルガも疲労が溜まる。
「ヴェルガさん、転移が終わったら中央に戻っていてください。アルマもひとりでは心配でしょうから」
「うむ……。しかし、こんな少人数で本当に良いのか?」
リディアとシオン。それ以外には、レンザンから訓練を受けていた住人が――遠巻きに20人ほどで戦っている。彼らは何とか、ヒルの魔物の侵入を防いでいた。
「逆です。私が本気で戦うから、人数は少ない方が良いんです」
「……そうか。無事を祈るぞ、また後でな」
「ええ。戦いが終わったら、一緒にお酒でも飲みましょう」
ヴェルガは転移魔法で、中央に戻っていった。
さて……と、リディアは大きく息を吸う。そしてその場にいる全員に、これからの方針を伝える。
「――西の森は破棄します。全員、潰されないように注意しなさい」
リディアの足元から、闇のオーラが噴き出した。そして、それは一気に広がり――西の森を、短時間で掌握していった。
コメント
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読了しました…! 今回、ゾゾさんの「インテリア」発明がリディアにどんどん実用方向に持っていかれて拗ねるの、ちょっとかわいかったです笑。でも、あの浮遊箱の使い道、爆弾運搬とか転移の重量制限突破とか、確かに可能性感じますね。 そしてラスト…西の森を破棄すると宣言して、闇のオーラを噴出させるリディア、めっちゃかっこよかったです…🔥 今まで冷静に指示してた分、ここで自分が前に出る決断をしたのが彼女の覚悟を感じさせて、ゾクッとしました。 次も気になります…!