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俺は、同級生に恋をしていた。彼女は努力家だった。勉強も部活も、どれも人一倍やり抜く。笑顔は少なくて、無愛想に見える時もあるけれど、真剣なその横顔に何度も心を奪われた。


きっかけは単純だ。

クラスが同じで、席が隣だった。ただそれだけ。

でも、物を落としたら拾って渡す。忘れ物をしたら貸してあげる。といっても、ほとんど俺が忘れている。小さなやり取りが、俺には宝物だった。


俺は人見知りではない。けれど、彼女を前にするとどうしても遠回しになってしまう。

「この問題、分からなかったんだ。どう思う?」

「、、たぶん、こう」

そんなやりとりの中で、少しずつ心を寄せていった。

少しの時間が嬉しかった。


だけど、その想いは――届かなかった。


きっかけは、部活の先輩だ。

俺の教室に顔を出していた、誰もが“白馬の王子様”と呼ぶ完璧な先輩。

端正な顔立ちに、優雅な立ち居振る舞い。女性には誰にでも優しく、冗談交じりにお姫様のように扱う。

俺は尊敬していた。部活も、人との関わり方も誰よりも上手かった。先輩、後輩関係なく楽しめる人。

そんな先輩が、なぜか彼女に本気で惹かれていた。

最初は驚いた。

笑顔を見せない彼女に、あの先輩が何度も声をかけている。

「君は努力する姿が素敵だね」

「騎士みたいにカッコいいね」

他の人に言うように褒めていただけだと思っていた。

「綺麗だね」

そんな言葉を聞いたとき、胸が締めつけられた。

俺には言えないことを、先輩は素直に言う。

俺はただ、隣の席で彼女の努力を知っていた。誰よりも関わりがあった。

その近さだけが、俺の唯一の武器だったのに。

俺は焦った。もしかしたら、彼女は先輩の事が好きになるのかもそれない。

先輩の事をどう思っているのか聞こうと考えた。

だが、彼女が好きになってしまえば、もう叶わない。その事実が怖くて聞けなかった。


ある日、ふと気づいた。

授業中、彼女の視線が黒板ではなく、廊下の窓の外に向けられていた。そこに立っていたのは――先輩だった。

笑顔を見せないはずの彼女が、ほんの少し表情を和らげていた。


その瞬間、俺は悟った。

もう、勝ち目はないんだと。


二人が主役なら。俺は脇役の存在。

ただ同じクラスにいただけ。隣の席だっただけ。誰よりも近くにいられたはずなのに、肝心な一歩を踏み出せなかった。


いつも遠回しなアピールばかり。

「ノート、きれいだよな」

「練習、頑張ってるな」

本当は「君のことが好きだ」と言いたかったのに。


彼女は、少しずつ先輩を目で追うようになっていた。

俺はそれを見て、心の奥で静かに失恋を受け入れた。受け入れるしかなかった。

言い訳にしかならない。

だけど、思わずそう思ってしまった。

教室の窓から見える二人の背中は、あまりにお似合いだったから。


――彼女にとっての王子様は、俺じゃなかった。


遠回しに伝えるじゃなくて、堂々と言えたならこの結末は変わったのかもしれない。余りにも、臆病すぎた。


悔しいほどに眩しくて、切ないほどに綺麗な光景だった。

不揃いの想いに名前をつけて

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