テラーノベル
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朝。
窓の外では、今日も白い花が揺れていた。
「おはよ〜」
らっだぁが欠伸をしながら起き上がる。
「……おはよう」
身体は休めたはずなのに、妙に頭が重い。
昨日のことを思い返そうとする。
村へ来て。
宿へ泊まって。
それから──
「……あれ」
その先が曖昧だった。
「どうかした?」
「いや……」
首を振る。
思い出せないわけじゃない。
けれど。
思い出そうとすると、霧がかかったみたいにぼやける。
「朝ご飯行こっか」
らっだぁはそれ以上聞かなかった。
宿を出る。
朝の村は昨日と変わらず穏やかだった。
パンの焼ける匂い。
子どもたちの笑い声。
花びらが風に舞う。
「おはよう、良い天気ねぇ」
昨日会った女性が笑う。
「⋯あ、おはようございます」
自然に返事をする。
「昨日はよく眠れた?」
「はい」
そこまでは、たぶん普通だった。
「今日は学校、お休み?」
「え?」
思わず固まる。
学校。
学校……?
「……あ」
自分が学生だということは覚えている。
制服も。
教室も。
だけど。
「学校の名前……」
記憶から、出てこない。
「あれ……?」
どれだけ考えても。
何一つ。
思い出せなかった。
「ぐちつぼ」
らっだぁが静かに肩を叩く。
「行こ」
「……う、うん」
歩き出す。
胸の奥がざわつく。
そんなはずない。
ついこの間まで、普通に通っていた場所だ。
なのに。
名前だけが、ぽっかりと抜け落ちていた。
村の広場へ出る。
子どもたちが花びらを追いかけて遊んでいる。
その一人が転んだ。
「大丈夫?」
らっだぁが歩み寄って声を掛ける。
男の子は笑いながら立ち上がった。
「へーき!」
その笑顔を見て。
ふと。
誰かを思い出しかけた。
同じように笑う人。
⋯誰だっけ、
「…………」
出てこない。
胸だけが苦しくなる。
「思い出さなくていいよ」
隣で、らっだぁがぽつりと言った。
「……え?」
「無理に思い出そうとすると、余計に持っていかれるから」
その声は静かだった。
経験者みたいな口ぶりだった。
「……持っていかれるって、」
「記憶」
短く答える。
風が吹く。
花びらが舞う。
その白さが、少しだけ怖く見えた。
その時だった。
教会の鐘が鳴る。
ゴォン……
低く。
長く。
村中へ響き渡る。
笑っていた村人たちが、一斉に動きを止めた。
まるで。
何かの合図だったみたいに。
全員が。
ゆっくりと、村の奥を見つめる。
誰一人、口を開かない。
風だけが吹いていた。
「……何、」
息を呑む。
らっだぁは鐘の鳴った方角を見つめたまま、小さく目を細める。
「始まるよ」
その一言と同時に。
村の中心に立つ鐘楼から。
白い花びらが、雪のように溢れ始めた。
NEXT=♡1000
次回は回想です。
#ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
田中なす@末 やんでれしょた化
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