次の日、突然にも勇者がやってきた。魔王城の中にはいつもよりも緊迫した雰囲気が漂っていた。
「…アスバルト、いい?」
「あぁ、大丈夫だ」
一方、2人は拷問部屋にいた。とうとう脱出本番。一度しくじったら後が無い、2人は期待と不安でいっぱいたった。
「せーの!」
スキル発動変身
2人の身体がスライムに包まれる。次の瞬間、そこに立っていたのは別人だった。
「完璧じゃない?そのまま、勇者を探そう!」
「わかった!」
アスバルトがスキルを発動した。
スキル発動視覚拡大Lv1
このスキルは、五感のうち、視覚だけを研ぎ澄ます能力。このことによって、より遠くまで見渡すことができるようになる。
「いたぞ!こっちだ!」
これが作戦。まず、変身で変身する。次にアスバルトの視覚拡大で勇者を探す。ここまではきっと大丈夫だ。だが次が問題で、勇者のところに行って「助けてください!」と捕まっていた奴隷に成りきり脱出…という流れだが、どれだけ上手く成りきれるかが勝負になってくる。
先を進んでいたアスバルトが突然、ピタッと止まった。
「いいか、ミリカ。この先に勇者パーティーがいる。注意するぞ」
ミリカはコクンと頷いた。心臓がバクバクとうるさいくらいに鳴っている。
2人で頷きあって外に出た。
「た、助けてください!」
「ん?何でここに人が…」
「俺たち、奴隷として働かされていたんです!」
「何!?」
「どうか外に連れて行ってください!」