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次の日の放課後、私は少し考え事がしたくて、公園に来ていた。すると先客がいた。「あの時の女の子かな。」そう考えていた。だけど、違った。
「・・・あれ、ムギちゃん・・・。」そこに居たのは、レイ君だった。
「レイ君、昨日はごめんね。キミのことを守りたくて、ついムキになっちゃって・・・」私は、昨日の事を謝った。
「ううん、良いんだよ。でも・・・」段々とレイ君の顔が下を向き始めた。
「・・・何かあったの・・・?」私は、恐る恐る聞いてみた。
「・・・ボクのせいで、『もうムギちゃんとは関わるな』って言われちゃった・・・。それに、放課後は友達と話してないで早く帰って来いって。だから、ムギちゃんと関わる機会は無くなっちゃう・・・」と言われた。私は一気に罪悪感に襲われた。
昨日私があんな事をしたから・・・そう思った。レイ君は続けて話した。
「・・・やっぱり、無理な話だったんだ。男らしい事をできなかったボクが悪いんだもん。個性を大切にしようなんて、思うんじゃなかった。自分の個性を守るために誰かを犠牲になんてしたくないもん。もう・・・全部・・・どうでもいいんだよ・・・」
私は、なんとかしたかった。単純に彼を救いたかった・・・そもそも、「ジェンダーレス」の考え方が広まっていれば、こんな事にはならなかったんじゃないか、と、何度も考えてしまった。どうやったら彼の親や友人に理解してもらえるだろう、と、何度も考えた。・・・だけど、結局、彼を救う事はできなかった。
沈黙が続く。聞こえるのは、ブランコが2つ、揺れる音。あの時と同じ、ブランコだけが揺れる音。
夕陽が2人を照らす。梅の花びらはもう降るのをやめた。
「・・・さてと、もう行かなくちゃ。」どこか寂しそうな声で、レイ君は言った。
「もう帰る時間か。・・・もう会うのは許されないのかな。」私は涙を堪えながら言った。
「ううん、いつかきっと、また会えるよ。」レイ君は私を励ますような、優しい口調でそう言った。
「・・・そうだよね。きっとキミの親も理解してくれるよね。そしたら、また会おうね。それに、クラスは違うけど、休み時間とかに話せるもんね。」
その言葉に対して、レイ君は少し迷ったような仕草をした後、「・・・うん、そうだよね。『絶対話せない』って事じゃ無いもんね。」
「うん。」私は涙を堪えたまま、笑顔を見せた。レイ君もまた、目に涙を浮かべながら、満面の笑みで「また今度ね。」と言ってきた。
公園を出る時、レイ君が小さな声で、「もし生まれ変われるなら、次は女の子になりたいな。」と言うのが聞こえた。
家に帰った後、どこか寂しい気持ちになりつつも、「早く明日にならないかな。」そう思いながら、眠りについた。
次の日。なんとなく嫌な気分だった。それでも、いつも通りに、朝食を用意した。その日は何故か、フレンチトーストが食べたい気分だった。フレンチトーストを食べながら、ニュースを見る。・・・すると、とあるニュースを見て、私は固まってしまった。
「昨日、市内の川付近の空き家にて、男子高校生とみられる遺体が発見されました。」・・・私は何とか冷静さを取り戻そうとしたが、無理だった。気づいた時には、レイ君の母親がリボンを投げ捨てた川に向かって走っていた。
「立ち入り禁止」のテープを無理矢理剥がし、中に入った。
私は、そこでの光景を見て、全てを察してしまった。レイ君の母親が警察から取り調べを受けていた。川の岩には血が着いており、その岩の上にはあの紫色のリボンがあった。
私は何もできず、すぐにその場を去って、学校へ向かった。私の頬を、涙が伝った。
学校に着き、朝会が始まった。・・・私はその日、授業に集中できなかった。
今日は、なんだか眠くならなかった。外に出て、夜空を見て過ごすことにした。
夜空はまるで、私を励ますような・・・でもこの辛い現実の中でも何も感じること無く変わらず輝いているような星を見た。
「お願い・・・生き返って・・・寂しいよ・・・ひとりぼっちなんて、もうやだよ・・・」と、星に向かって言う。でも、星は何も変わらない。アニメみたいに光が増して、レイ君が生き返る、なんて展開は無い。だけど。
無慈悲な輝きの中、事実を受け入れるしか無かったとしても。私は、進んでいこうと思う。友達ができなくてもいい。変わっていてもいい。そう、彼が教えてくれた気がするから。
fin・・・?