その日の撮影が終わり、ほとんどのメンバーが帰り支度を終えた楽屋。
目黒蓮は、スマホをいじりながらも、その視線は誰かを探すように虚空を彷徨っていた。
そんな彼の隣に、ラウールが
「あ、めめ!おつかれー」と言いながら静かに腰を下ろす。
🖤…なあ、ラウールはさ…
ぽつりと、自分でも驚くほど弱々しい声が出た。
ラウールは「ん?」と不思議そうにこちらを見る。その真っ直ぐな瞳から、目黒は思わず視線を逸らした。
🖤最近さ…康二のこと、どう思う?
聞きたかったけど、聞きたくなかった問い。康二に冷たくしてしまったのは自分だ。
何も話してくれないあいつが悪いと、自分に言い聞かせてきた。
でも、心の奥ではずっと、何かが違うと叫んでいた。
🖤周りからも色々言われてるみたいだし…。なんか、俺もどう接していいか、わかんなくて…
言い訳がましい自分の言葉が嫌になる。
ラウールは、そんな目黒の言葉を黙って聞いていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
🤍うーん…難しいことはよくわかんないけど…
そう前置きをして、ラウールは続けた。
🤍でも、康二くん、全然楽しそうじゃないよ。みんなといる時、笑ってるけど、目が全然笑ってないもん
その言葉に、目黒は息を呑んだ。
そうだ、ずっと気になっていたのはそれだった。あいつの笑顔から、光が消えている。
🤍誰かが言ってたとか、やる気があるとかないとか。 僕にはそういうの、あんまりよくわかんない。
🤍でも…僕はただ、いつもの康二くんじゃないのがすごく嫌だなって思う
ラウールは、ただ純粋な目で目黒を見つめた。
🤍…めめは、今の康二くん見てて、悲しくないの?
悲しくないの?
その問いは、鋭い刃のように目黒の胸に突き刺さった。
そうだ。俺は、イライラしていたんじゃない。悲しかったんだ。
一番の親友がすぐ隣で苦しそうな顔をしているのに、何もしてやれない自分が情けなくて。
くだらない噂と、意地と、寂しさで、一番大事なものを見失っていた。
🖤……悲しい、よ
絞り出した声は、震えていた。
🖤本当はすげぇ、悲しい…
スタッフAの言葉じゃない。周りの評価でもない。見るべきは、信じるべきは、たった一つ。目の前で苦しんでいる、たった一人の親友の心だった。
ラウールは「だよね」と小さく頷くと、優しく目黒の肩を叩いた。
🤍じゃあ、めめが助けてあげなよ
🤍康二くん、きっとめめを待ってると思う
その無邪気で、でも何よりも強い言葉に、目黒は顔を上げた。
もう迷いはなかった。もう一度、あいつとちゃんと向き合おう。何があったのか、全部聞こう。
そして、もしあいつが一人で泣いているなら。
今度こそ、絶対にその手を掴んでやろう。
目黒の中で、止まっていた何かが、確かな音を立てて動き始めた。
コメント
1件
続きが気になる、