メンバーそれぞれが康二への想いを再確認し、「明日こそ、ちゃんと話をしよう」と静かな決意を固めた、まさにその夜。
しかし、そんな彼らの心とは裏腹に、運命は最も残酷な形で彼らをすれ違わせる。
翌朝、グループメールにマネージャーから一本の連絡が入った。
『【向井康二】ですが、急遽決まったドラマの撮影のため、本日から一週間、地方ロケになります。しばらくグループの仕事には参加できませんので、共有いたします』
その一文に、メンバーは言葉を失った 。
話をするどころか、会うことすらできない。
最悪のタイミングだった。そして、そのメールには、彼らの胸をさらに締め付けるような一文が追記されていた。
『なお、現地でのサポートは、スタッフのAが担当します』
それを見た瞬間、特に事情を知る阿部、佐久間、岩本、深澤の血の気は一気に引いた。
よりによって、なぜその男が。
それはまるで、檻の中にいる傷ついたウサギを、一匹の飢えた狼に預けるようなものだった。
その頃、康二はたった一人、新幹線に揺られていた。
隣の席には、Aが座っている。
A「おい向井」
🧡は、はい
A「お前今回の仕事、Snow Manの看板背負って来てんだからな。お前一人のせいでグループに泥塗るようなこと、絶対すんなよ」
発車して早々、突き刺さるような言葉。康二は「わかってます…頑張ります…」と小さく頷くことしかできない。
この一週間が、地獄になる。
そんな予感しかなかった。
そして、その予感は的中する。
撮影が始まると、Aの康二への態度は、東京にいた時よりもさらに酷くなった。
二人きりになる車内やホテルの部屋で、彼はまるで溜まったストレスを全て吐き出すかのように、康二を罵倒し続けた。
「お前の演技、大根すぎ。見てらんねえよ」
「NG出すなよ、迷惑だろ」
「本当、お前って使えねえな」
些細なミスを針小棒大に責め立て、人格を否定するような言葉を毎日毎日浴びせかける。
康二の心は、日に日に削られていった。抵抗なんて、できるはずもなかった 。
ここで何か問題を起こせば、本当にグループに迷惑がかかる。
その恐怖が、康二を完全に無力にしていた。
食事も喉を通らず、夜もまともに眠れない。日に日に痩せこけ、目の下の隈は濃くなる一方だった。
鏡に映る自分の顔は、まるで生気のない人形のようだった。
東京のメンバーは、康二に連絡を取ろうとした。しかし、康二が電話に出ることはなかった。
Aにスマホを取り上げられ、「余計な連絡はするな」と釘を刺されていたからだ。
返信のないLINE。繋がらない電話。
メンバーの焦りと心配が募っていく一方で、康二は誰にも助けを求められない深い孤独の底へと、ゆっくりと沈んでいっていた。
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