テラーノベル
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彼が帰ってきたのは、雪の降る夜だった。
紫色マフラーはすっかりくすんでしまっている。まだ着けていたのかと苦笑いすると、お前がくれたものだからなと返された。
ps「おかえり兄さん」
ni「ただいま」
ps「またよく分からないもの持って帰ってきたね…何これ?」
ni「石…ひとらんが漬物石欲しいって言ってたから……」
ps「だからって何でこんな重たい石、カバンに入れてくるのさ…w」
ni「鉄道じゃ間に合わなかったんだよ…」
軽く会話を楽しんで、兄さんに怪我がないか確認する。
ps「痛いところとか、変わったことは?」
ni「ない」
特に傷もなく、感染症なども心配なさそうだ。
はぁ、と安心から吐いた息はすっかり白い。連絡があってからずっと外で待っていたからだろう。
ni「…別に毎回出迎えてくれなくても良いのに」
それを見た兄さんが、心なし申し訳なさそうにそう言う。
ps「良いんだよ、俺がやりたくてやってることだから」
ni「……早く入るぞ」
相変わらずそっけない人だ。もう少し優しく言えないのだろうか。
それも微笑ましい気がするけれど。
一度だけ、グルッペンが撃たれて帰ってきたことがある。
帰ってきた……というか運ばれてきた、という表現が正しいけれど。
僕が彼を目にしたときにはすでに体が冷え切っていて、本当に死んでしまうかもしれないと焦った。
目を覚ますと、死人のような顔色で「こんなことでは死なないゾ!」とか言うから、一発本気で殴ってやった。
この軍の人間は、命を軽々しく見るやつが多い。
だからなのか、身を捨てるような行動をするアホばかりだ。あの時も、観光客から子供を庇って撃たれたらしい。
子供を守ることは良いことだが、方法は他にいくらでもあっただろうに。
そう言うとアレが一番手っ取り早かったんだよ、と言う。
…神を名乗っているけれど、俺は神様じゃないし、神様にはなれない。
怪我を一瞬で治す力があるわけでもなし、
飲めば病気を完治させる聖水があるわけでもない。
………一度死んだら、生き返らせることは出来ない。
俺にできることは、目の前の患者が死なないよう祈るだけ。
どれだけ助けようとしても、患者の命は手からすり抜けていく。
その命の中に、大切な人が含まれているかもしれない。そう思うと、神様を恨みたくなる。
______________戦場では、医療を受ける前に死ぬ人もいる。
俺は待つことしか出来ない。怪我をした人が帰ってくるのを。
…帰ってこれなければ、手の施しようがないから。
だから待ってしまうのだろう。
ちゃんと皆が帰って来たことを確認したくて。
ps「……俺が神様だったら良かったのに」
ni「ん?何?」
ps「いや…」
ps「なんでも」
この時期に咲くはずのない〝カンパニュラ〟という花を見ながらそういった。
スクロールお疲れ様でした!
今回は軍医さんのお話でした。私的にこんなペ神であってほしいな〜と思って⋯⋯…
アッ文字数バレました?ハイちょっとサボりましたスミマセン…次回頑張ります……
ちなみにカンパニュラの花言葉には「救われなかった命」というものがあります。
「神!!ぴったりやん!」と思って書こうと思ったらまさかの春から夏にかけて咲く花…
いや雪の日って書いてもうたし。寒いって言うてるやん???
そんな時は「咲くはずがない」ってつけりゃいいんです。これ逆に花のこと強調できるし使えますぜンフフフフフ(((
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