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旅行から戻り、日常の空気に包まれた家。

学校に追われながらも、兄たちはさりげなく3人の欲しいものを探り始めていた。


らんは夕食後、何気ない風を装ってこさめに声をかけた。


「なあ、最近ほしいもんとかある?」


「んー? あ! 鮫のぬいぐるみ! それとスルメイカ!」


満面の笑みで答えるこさめに、らんは思わず吹き出しそうになった。


「……お前らしいな。鮫とスルメイカか……」


「だって好きなんだもん!」




___




一方、ひまなつは登下校の道すがら、いるまに何気なく問いかける。


「お前さ、なんか欲しいもんある?」


「…ゲームとか。別に特別欲しいわけじゃねえけど」


「じゃ、今度一緒にゲームしよ。俺、いるまに負ける気しねーけど」


「は? 絶対勝つし」


口では悪態をつきながらも、いるまの口元はわずかに緩んでいた。




___




そしてすちは、帰り道にみことへ穏やかに尋ねた。


「みこちゃんは? 何か欲しいものある?」


するとみことは立ち止まり、じっとすちを見つめる。

そのまま、ためらいなく指ですちを指した。


「……え?」


一瞬言葉を失ったすち。だがみことは表情を変えず、そのまま前を歩くいるま、こさめ、そして兄たちを順番に指さしていった。


その仕草にすちは胸が熱くなる。


(……そうか。欲しいのは、物じゃなくて“人”。家族そのものなんだな)


トキメキを抱えつつも、すちは柔らかく微笑み、みことの肩に手を添えた。


「俺も、みこちゃんが大好きだよ」


みことはほんの少しだけ目を細め、照れくさそうに笑った。







誕生日当日。


3つ子が学校に行っている間、兄たちは午前授業のみだった為、終えるとすぐに帰宅した。


「急げ、時間がねえ!」


らんが鞄を置くなり声をかけると、3人はそれぞれ動き出す。


ひまなつは居間に駆け込み、風船やガーランドを取り出して壁や天井に飾り付けを始めた。


「うわ、テープがくっつかねぇ! すちー! そっち押さえて!」


「はいはい、落ち着いて。ずれちゃうと可愛くないからね」


笑いながらも、カラフルな飾りで部屋を明るく彩っていった。



一方、キッチンではすちが真剣な表情でケーキのスポンジをオーブンに入れる。


「ここは絶対に失敗できない……」


計量も焼き加減も丁寧に。フルーツを切りながら、クリームのデコレーションをどうしようかと頭の中で描いていた。


その間にらんは街へ。


「鮫のぬいぐるみとスルメイカ……あとゲームだな…そういやこさめが、いるまは熊、みことは猫が好きって言ってたな…ぬいぐるみにするか!」


頼まれたリストを思い返しながら、大きな袋を抱えて汗をかきつつ走り回る。


(あいつらの喜ぶ顔が見たいからな)


重い袋を提げた手に力を込めた。



そして父と母は手際よく豪華な料理を作り上げていた。

煮込み料理の香りが漂い、揚げ物の音が弾ける。


母が「ここまで本格的にしなくても」と笑えば、父は「今日は特別だからな」と真剣な表情。


みんなで準備に追われながらも、家の中は期待と温かさで満ちていた。

あと数時間後、この空間が驚きと笑顔でいっぱいになることを願って――。








午後、学校から帰宅した3つ子。

玄関の扉を開けた瞬間、家中に彩られた風船、カラフルなガーランド、香ばしい料理の匂い、甘いケーキの香りが一気に飛び込んできた。


「わ、わぁ……?」


3人は思わず足を止め、目を丸くして戸惑う。

今日は自分たちの誕生日だということをすっかり忘れていたのだ。


父、母、そして兄たちは3人を迎え、口を揃えて笑顔で言った。


「「「「「誕生日おめでとう! 俺たちと家族になってくれてありがとう!」」」」」


その瞬間、3つ子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

こさめは声を上げ、涙を流しながら床に座り込むように泣きじゃくった。


「うわぁぁぁん!」


今までの不安や孤独が一気に解放されたかのようだった。

らんはそんなこさめをそっと抱きしめ、頭を撫でながらささやいた。


「大丈夫だから。もう、怖くないよ」


いるまは声を押し殺すようにしゃがみ込み、肩を震わせて泣いていた。

ひまなつはその肩に手を回し、優しく抱きかかえる。


「もう、気を張るな。甘えていいんだから」


みことは腕で目を擦りながら、嗚咽を漏らすように泣いていた。

すちはそんなみことに両手を添え、視線を合わせながら微笑む。


「赤くなっちゃうから……大丈夫だよ、みこちゃん」


みことは涙を溢しながら、ふと口を開いた。


「……お母さんに、産まなきゃ良かったって言われたのに……なんで、お祝いするの?」


その言葉に、すちは胸を痛めながらも優しく応えた。


「俺たちは、みことといるまとこさめが家族になってくれて嬉しかったんだ。 3人のことを心から愛してるんだよ」


その言葉に、3つ子の涙はさらに溢れ、静かに嗚咽する声がリビングいっぱいに響いた。

すちはそっとみことを抱きしめ、耳元で何度も繰り返す。


「どこにも行かないよ。大好きだよ……大好きだよ……」


みことはその腕の中で体を震わせながらも、少しずつ安心した表情に変わっていく。

いるまもひまなつに支えられながら涙を流し、こさめもらんの胸に顔を埋め、溢れる感情を解放していた。


部屋中に広がる暖かさと愛情の中、3つ子は初めて心の底から、家族のぬくもりを感じていた。




落ち着きを取り戻した3つ子は、リビングの大きなテーブルに並べられたご馳走に手を伸ばす。

色とりどりの料理が並ぶ皿を前に、こさめは目を輝かせながら笑顔で言った。


「わぁ、美味しい!」


口に運ぶたびに頬が緩み、楽しそうに笑うこさめの姿に、兄たちも思わず微笑む。


いるまとみことは無言だったが、箸の進みは早く、あっという間に皿の料理が減っていく。

時折、みことはすちに小さな視線を送る。無言ながらも、家族の中で安心して食事を楽しんでいることが伝わってくる。


食事が落ち着くと、すちは手作りのフルーツケーキを取り出す。

スポンジの上に色鮮やかな果物が丁寧に並べられたケーキを見た3つ子は、目を輝かせた。


「…美味しそう」

「すご」

「わぁ、美味しそう!」


喜びの声をあげ、嬉しそうに両手を合わせる。


父と母がバースデーソングを口ずさむ中、3つ子は息を合わせてロウソクの火を吹き消した。


火が消える瞬間、みことも自然に微笑み、ほんの少しだが笑顔を見せた。

それを見たいるまは胸がいっぱいになり、泣きそうになりながらも、安堵したように微笑む。


ケーキを切り分け、家族でゆっくりと口に運ぶ。

みことは少し大きめにケーキを頬張り、口元をクリームで汚しながらも、すちに向かって家族になって初めての控えめじゃない笑顔を見せた。


その姿に、いるまとすちは胸が熱くなる。

無言でケーキを食べるみことの表情が少しずつ戻っていくのを見て、2人は安心と喜びを噛みしめながら、静かに微笑み合った。


リビングには、久しぶりに、家族全員の笑顔とあたたかい空気が満ちていた。







リビングのテーブルの上には、それぞれのプレゼントが置かれていた。


まず、らんがにこやかにこさめの前に座り、包みを手渡す。


「こさめ、これ……誕生日おめでとう。」


包みを開けると、中には鮫のぬいぐるみとスルメイカが入っていた。

こさめは目を輝かせ、ぬいぐるみをぎゅっと抱きかかえながら、笑顔で叫んだ。


「ありがとうー!らん兄ちゃん!」


らんも嬉しそうに微笑み、こさめの頭を軽く撫でた。



次にひまなつがいるまの前に座り、熊のぬいぐるみとゲームの箱を差し出す。


「いるま、誕生日おめでとう。」


いるまは少し照れくさそうに視線を逸らすが、ふと微笑みながら言った。


「……お前となら、一緒にゲームしてやってもいいけど。」


ひまなつはその言葉ににまっと笑い、いるまの頭を撫でた。



最後にすちがみことに、手作りのお菓子と猫のぬいぐるみを渡す。


「みこちゃん、誕生日おめでとう。次の休み、一緒に出かけて欲しいものとか買いに行こうね」


みことはぬいぐるみを抱きしめたまま、すちをじっと見つめ、小さく頷くと、そっとすちの頬にキスをした。

すちは一瞬驚き、赤くなりながらも、優しく微笑み返す。


「…うん、楽しみにしてる」


リビングには、笑顔と小さな幸せが溢れ、3つ子と兄たちの間に、これまで以上の絆が静かに芽生えていた。






家族になりたい🎼

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