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白木の組まれた天井に、ふわりふわりと白い湯気が登ってゆく。のんびりと見上げてはいてもどこか寂しく切ないのはなぜだろう。夜回りでは笑って肩を並べていたあの方は、わたしがここに居ることを知っているはずなのに顔を見せても下さらない。わたしは既に…貴方様の虜だと言うのに…
「ふぅ。……今日も来ませんねぇ。…こんなにいい湯加減だとゆうのに…」
本日の夜回りは五等級が11体。八門さまの手を煩わせること無く殲滅した。わたしの武器はこの人間離れした破壊力を持つ肉体だ。でも肉感的なふんわり女子を好まれるレオ様に嫌われないよう出来るだけ筋肉質な姿にはならない様に気をつけている。それでもちょっと気を緩めると、お茶碗やお皿を粉々にしてしまうので困っちゃう時もあるのだけれど、最近では微妙な力加減を随分と長く維持できるようになった。何事も修練なのだ。
「もう八門さまはぁ。『悪鬼退治のあとは必ず禊を』とお願いしてあるのにぃ。そんなにかのえと入るのがお嫌なのでしょうか。…寂しいですね。」
初めての夜回りであの方が見せた八門一門の力の片鱗。振り上げた神木の棍は白く輝いて見えた。恐らく無意識のうちに霊力を纏わせたのだろう。そうでなければ人魂を二千以上は喰っている怨霊を、一閃で葬るなどあり得ない。そもそも血肉を持った霊体と言っても、ふつうの武器では掠り傷さえ付けられないのだ。それを八門獅子は…苦にもせず葬ってみせた。
「はぁ。わたしが焦り過ぎているのでしょうか?。…でも、わたしよりも強い殿方なんて…初めてのことですし。…欲しがるのは女のサガですし…」
雨降りを好まれる黒羽嬢さまの命で、ずぶ濡れな男を座敷牢まで運んだのは良しとしても、まさかお世話や試練や鍛錬までも託されるとは思いもしなかった。そもそも男とゆう生き物は臭くてガサツでドスケベでキモい。
二年前に自らヤツカドを名乗った男は耐性こそあったが、鍛錬用の鉄刀は持てず、木偶に反撃もできない腰抜けで、文書を読めない馬鹿で、鍛錬後の汗が臭くて、わたしより遥かに弱くて、寝顔がとても不細工で、隙あらば触りたがるドスケベだった。八門一門の血脈なんてもう絶滅したのよ。
そう思っていたのに…八門さまは臭くなかった。しかも繊細で、ちょっとだけ臆病で、からかって誘惑すると逃げてしまう。とても不思議で、とっても素敵な紳士だった。でもわたしは彼に触れると理性が保てなくなる。甘えたくなるし、抱きしめたくなるし、触れて欲しくなってしまうのだ…
「あ。なんだ、カノエだけか。…八門さまはどうした?。魔を払った後は必ず禊を受けなければならないのに。ん?。まさかもう先に出たのか?」
「はぁ。何しに来たのですか?うずめ。まだ務めには早いでしょう?」
「無粋だな?かのえ。あたしがなぜ夜も明けないうちに禊の湯場に来たのかなんて直ぐに推察できるだろう?。この鍛えに鍛え、磨き上げた曲線美を八門さまに見せつけるためだ。…側女でもある以上は尽くさねばな?」
「……うずめって、ほんとに目障りです。…今はわたしとヤツカド様だけの時間なのにノコノコと姿を現すだなんて。喧嘩を売っているんですか?」
「ほほう?。御庭番衆の頭領を…目障りだとのたまうか。いい度胸だ…」
『ザバッ!』
『ザバシャ!』
無駄に性欲の強いこのくノ一も、八門さまに対する目的はわたしと同じ。彼を誘惑し、見染められ、いずれ子種を着けてもらうこと。この大社の外に大手を振って出るにはそれしか方法が無い。そもそも男子禁制の社だ。参拝者も務める者も全てが女性であるからには出会いなど皆無。つまり八門一門の末裔の到来は、正に千載一遇の好機なのだ。…恐らく次は無い。
「ごめん、かのえさん。遅くな…………や、やっぱり後で入るよ。じゃ…」
わたしとウズメが湯船から立ち上がり、龍虎相まみえる様に睨み合った瞬間…純白の湯衣を着た八門さまが禊場に入って来た。そしてわたし達の姿を見るやいなや…束の間、不動になってから…静かに禊場を出て行った。
「えーっ!?八門さま!?。そんな!。あーしと一緒に入るっすーっ!」
「八門さま。……無駄よウズメ。…わたしたちの湯衣が透けているから…」
「え!?。あ。…ぜんぶ見えちゃってるから逃げたのか?。八門さまは。」
「ええ。…とてもタイミングが悪かったみたいね。…ちゃんと胸元まで湯に浸かっていたのなら…一緒に入ってくださったのに。…うずめの馬鹿…」
「ふ!ふんっ!。最初に挑発したのは!…か!かのえの方だろうっ!?」
「あーはいはい。…それとうずめ。もう煩くするのはやめて。ウザいわ…」
いつもわたしの邪魔しかしない、霞うずめとゆう女は本当に目障りだ。付き合いだけは10年にも及ぶのだが、お互いに与えられた役割りを考えれば馴れ合う事だけはしない様にしている。御庭番衆の彼女はどうあれ、わたしはいつ居なくなるか解らないから。好色だった二年前のヤツカドと夜回りに行った際、わたしは初めて殺されかけた。生きた盾にされたのだ。
その悪鬼は二等級。わたしの援護もせず、逃げ回るだけの八門は簡単に殺された。その後に一人、夜が明けるまで切り結んだわたしは重傷を負う。しかし寸での所で朝日が鎮守の森を照らし出す。いのち拾いした瞬間だ。
あの恐怖があるからこそ、自身が認めた現在の八門の子供を一刻も早く孕みたい。いつか殺されるであろうその日までに彼の血を残さなければ…この大社を守れる者が潰えてしまう。わたしの身を捧げてでも絶やせない。
しかし、わたしが護りたいのは、この大社と大社に詰める仲間たちと黒羽の姫様だけ。世の中に悪霊が蔓延ろうが地獄になろうが知ったことではない。床についてから少しだけ覗くネットの世界。同じ民族同士で攻撃しあう言葉の暴力が横行していて見るに耐えない。日ノ本はもう終わるのだ。
「あれ?。まさか俺を待っててくれたの?。なんちゃって。…さっきオレの部屋にウズメが来たから、かのえさんも上がったのかと思ったのに…」
「……わたしが見初めた未来の旦那さまですよ?。待つのは…当然です♡」
「あははは。俺がかのえさんの旦那さまですか。じゃあもっと強くならないとだね?。…それじゃあ…お邪魔します。…ふぅ。…しかし凄かったよ、かのえさんの速攻。両手の拳が…焔を纏っているようで綺麗だったし…」
「うふふっ♪。あれは発した練気の色です。それぞれ特性があって、赤は炎の加護を賜っていることを示しているんです。青は水の加護を、緑は風の加護を。そして…レオさ…ま…の?。(……あ。あら?…め、目眩が…あ)」
「わーーーっ?かのえさんっ!?。どうしたの?…しっかりしてっ!」
「……え?。…(あ……あれ?。……意識が…遠く…)…ぷくぷくぷくぷく…」
「わーーー!かのえさんっ!?沈んじゃダメだから!。かのえさん!?」
うずめが出ていってから…どれくらい待っただろう?。夜回りの後の禊は守り人としての義務だ。彼は必ず戻ると信じて湯に浸かっていた。そして待ち人は来てくれたし少し話もできていたのに…なぜだかそこからの記憶が無い。レオ様の顔を見た途端に顔が熱くなって、目眩がして、え〜と?
「…………ここは?。……どこかしら?。……わたしは…確か…お風呂に…」
「すぅ。……すぅ。……すぅ。………かのえ…さん……だいじょう……だから…」
「!!!!?。(ななっ!なぜレオ様の顔がこんな近くにっ!?。あ。)」
「……ぐぅ。……すぅ。……ん……んん?。……あ、かのえさん。大丈夫?。」
ふっくらとした布団の上で目が覚めたわたしの側には、大好きなあの人が横たわっていた。作務衣姿で布団の外で、わたしに気がつくと胡座をかいた。カーテンの隙間から差し込む薄っすらとした陽の光が、彼の安心したような柔らかい表情を見せてくれる。なんだか居た堪れなく恥ずかしい。
「気分はどう?。はい。取り敢えずは水を飲もうか。…風呂場で脱水症状になるなんて初めて聞いたよ。…あ、着替えはうずめに頼んだから…ぜんぜん見てないから安心してくれ。頭痛いとか無いっ!?。…ええっと?。(また抱きつかれてしまった。…また…ベアハッグされるのかなぁ?)」
「……申し訳ありませんでした、ヤツカドさま。それと…ありがとうございます。…また…助けられてしまいましたね。…この女体で…是非お礼を♡。(ああ…こんなにも温かい♡。レオ様ぁ♡…どうかこのままひとつに♡)」
「そ、その様子だと大丈夫そうだね?。ほら?水は飲んどこうか。ね?。(お?。締めつけてこない。しかし、おっぱいの押し返しが相変わらず凄いな…かのえさん。 って!湯あたりで弱っている彼女になんてことを!)」
わたしは羞恥心をかなぐり捨てるようにレオ様に抱きついてしまった。こうして全身でくっつくのは初日以来な気がする。またあの『せっかん棒』が暴れ出してくれたなら、今度は迷わず迎え入れたい。そう、レオさまに馬乗りになってでも、私の淫らな蜜穴を貫いていただくのだ。最奥まで♡
「かのえさん…俺としては嬉しいんだけど、こうゆうのは辞めておいたほうがいいよ?。…天井の左側の角をよ〜く見てくれ。…何かいるだろ?」
「!?。…うずめぇ。そこでなにをしているのです!?。不気味なっ!」
「…かのえ。お前こそ何をしている。…八門さまを手籠めにしようとしたな?。もしも『せっかん棒』に手をかけていれば…命は無かったぞぉ?」
布団の縁のあたりで獅子さまをなんとか押し倒した。初めての時と比べれば随分と逞しくなられて♡。恐らくは自ら倒れてくださったのだ。と、ゆうことはこの後のこともわたしに任せて下さるはず♡。そう喜んだのも束の間だった。あの毒女は…わたしの恋心をどこまでも邪魔する気らしい。
「そもそもさ?。どちらも俺の仲間だよな?。しかも全員が命がけの仕事をしている。それなのに、なんで男と女としてしか考えられないんだよ。」
「それは…八門さまへの尽きない愛情と好奇心と言うか…執着と言うか。何よりあーしは…女として認められたいっす。そして専用の愛女として…」
「…わたしも、うずめと近い考えです。…ひとりの女として、側女として尽くし…まぐわう事は…ヤツカド様への忠誠の証でもありますし…」
レオ様の一声で、わたし達は布団の周りに集まった。彼は既に大社の要として活躍なされているのに、その前で胡座に座るうずめが、わたしはどうしても気に入らない。今や白獅子大社は八門の血の庇護下にあるとゆうのに畏敬の念すら無いらしい。御庭番衆は露払いだとして不敬が目に余る!
「う〜ん。俺も正直、まったく興味がないわけじゃない。こら、うずめ。そんなに脚を開くから股が食い込んてるぞ?。ええっと…だから順番は決めてある。その…黒羽の姫さまはどうあれ、最初はやっぱりその…かのえさんがいい。…それがいつになるのかは分からないけど…覚えててくれ。」
「…そんなぁ。黒羽さまはあーしを!…1番側女に指名したんっすよぉ?」
「え!?。…ぐしゅ。……ありがとう……ぐしっ。……ございます。…すん。必ずや…満足して…ぐしゅ…頂けますよう……ぐすっ。お尽くし致します…」
この上なくお慕いしている殿方の、思わぬ一言に涙が溢れた。これは悦びによる興奮なのか?正座に座る全身の震えが止まらない。どころか、レオ様の寵愛に期待するかの様に濡れてしまった。わたしは、なんてはしたない牝なのだろう。それでも想いと身体のシンクロはどうしても止められない。だけど…いつになるかは分からないのだ。…できるだけ傍にいよう♡
こんな想いをもっと早くにしたかった。そしてきれいな身体でお迎えしたかった。穢れを知らない乙女とは言えわたしの身体には大きな傷痕が残されている。またいずれ現れるであろうあのニ等級の怨霊が憎い。そして現在は…もっと猛烈な怨念が渦巻いている。日の本の神は限界が近いのだ。
今日も人間たちの歪な偏見や腹黒さや欲望や汚さが、さも当然のように垂れ流されているネットの世界。そこから溢れ出す怨念は数百年分の憎悪や積まれた業さえ比にならない。だが誰も改めようとしないだろう。そもそも他者を攻撃して歓喜する種族だ。己の身に還されても文句は言うなよ?
「はぁ。(ん〜。…なんだか目が冴えてしまいました。と、言うより…なんだか身体が火照ってしまって眠れそうもありませんね。…曲がりなりにもレオ様に覆い被さってしまった。…あの、レオさまの腿を跨いだ感覚が…とても卑猥でドキドキしました♡。本当なら…股間を跨ぐのですよね?。
固く反り立ったレオさまのせっかん棒の先…亀頭を、わたしの割れ目の真ん中に合わせてから…ゆっくりとお尻を下げて。しかし、万が一に…入らなかったらどうしましょう?。潤滑油となるお蜜の量が多いだけではダメなのではないかしら?。でも、膣を広げるために異物を入れるのはイヤですし。…そうですね。その時に…レオ様に押し広げてもらいましょう♡)」
あらぬ妄想に欲求が不満してくる。それでも自慰行為は想い人への不敬にあたると思えて仕方がない。今も寝間着としている白衣《しらころも》の下では、わたしの女が淫らに欲しがっていた。横向きになるとお蜜がお尻の裏や太ももを伝ってしまう。わたしは枕元のティッシュに手をのばしてシュッシュと2枚ほどを引き抜いた。それを丁寧に畳むと…小股に挟む。
『これでよし。おやすみなさい…レオさま♡。』ようやく落ち着いた気がしたのも束の間、今度は固くなってしまった乳首の位置が微妙に感じた。妙に衣に擦れてビクッとしてしまう。仕方ないので横向きになると…小股からトロリとお蜜が流れるのが分かった。これでは本末転倒ではないか。
わたしを身を起こして厠へと向かう。何となくみっともない姿でお蜜を拭き取り、止まったことを確認してからソコを出た。このまま禊場にでも向かおうと思ったのだが、そのみそぎ場から水音が聞こえる。恐らくは姫さまだ。今ここで私が顔を出せば彼女の世話をする黒子さん達にストレスを与えかねない。そう考えたわたしは自室に戻って、磨かれた小箪笥から1枚のパンツを取り出した。眠る時には一重衣が基本なのだが…今日ばかりは仕方がない。八門獅子さまの好みは純白なので、私はその白を穿いた…