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◇クラブ雅
匠平の働く会社では公務員に準ずる厳しいサプライヤー《【供給者/供給元】》
行動規範というものが設けられており、[一切の不正な贈答・接待など、その他の
経済的な利益の供与を禁止する]という諸規則がある。
なので、会社絡みの接待という形で夜の街に繰り出してネオン街に
連ねられている店に行くことはない。
また、常時仕事が忙しく同僚たちと行くこともなく過ごしてきた。
そんな匠平がたまたま仕事を早く上がれた日、最寄り駅のプラットホームで
偶然学生時代の友人と再会したことで、夜の街へと繰り出すことになる。
友人は東京に本店のある企業に就職しているのだが、半年ほど前に関西に
ある支店へと異動して来たという。
この日がたまたまの水曜日で圭子が実家に一泊する日だったため、帰る時間を
気にしなくてもいいということもあり、匠平は友人である稲岡哲也と共に
改札口まで戻り夜の街へと繰り出した。
「俺さ、こっちへ帰ってからちょくちょく接待なんかで使っているいい店が
あるんだ。そこへ行こうぜ」
「接待するほうなのか? それともされる側なのか?」
「どっちも有りかな。
不動産デベロッパーはゴルフや飲み会が頻繁にあるからなぁ。
俺はさ、独身だから無問題なんだけども、接待で行った先の店の子と
ややこしい関係になって離婚したヤツなんかいっぱいいるわ。
よその会社はどうか知らんがうちの会社はほんとヤバい」
「デベロッパーじゃないけど不動産関連の会社に行った知り合いがいるけど、
稲岡とは真逆の事言ってたから世の中はいろいろなんだなってことを実感するな」
「そいつは何て?」
「営業だが、接待でゴルフも夜の店も行ったことないけど仕事に支障は
無いってさ」
「それって眉唾物だな」
「いや、そんな仕事のことで嘘をつくようなヤツじゃないし、ほんとなんじゃ
ないかな」
「加納はさ、接待されたことないのか?」
「うちはそういうのは厳しくてな。
仕事にそういうものは介在させないことが徹底されてるよ」
「ある意味、羨ましいなぁ~。
俺なんか、酒の飲み過ぎで身体壊しそうだもんな。
今から行く店なんだが、こっちに飛ばされてから行き始めた店なんだけど、
最近ちょっと気になる子が入店しててさ」
「へぇ~、稲岡は面食いだから相手はさぞかし綺麗な嬢なんだろうな」
「割と素人っぽくて、それでいて人妻を思わせる色っぽさがあって
ずっとチャンスがないかと探ってるところ」
「それって本気でとかなのか?」
「どうだろう? 相手と自分の気持ち次第ってところかな。
まぁ、普通は夜の店で働いてる女性を妻に決めるのは
余程惚れた場合じゃないとな。
何といったって親には反対されるだろうし、それをものともせずエイヤーと
ぶった切り結婚するのだからな。
まぁ、結婚相手とかそんな堅苦しいことは横に置いといて、
今は彼女にしたいっていうところだな」
「そんな気持ちで釣るなんて相手が可哀そうだろ」
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