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「はあぁ~腰、すっげぇ痛え。ドッと疲れが出てきた感じだ」
「腰、ですか? 先生、腰痛? にきく薬でも買ってきましょうか?」
「あー違うよ。とわ君、春ちゃんはねぇ……」
「だ――――ッ!いうな、そういうことを小林の前で言うんじゃねえ!」
俺は、ニコニコと小林に俺の腰の痛みの原因について話そうとしたので、痛みも忘れて、神津の口を覆った。神津はもごもごと苦しそうにしていたが、さすがに小林の前でいうのは違うだろうと、俺は全力で止める。
小林は、俺とか神津の関係を当てられたら弟子にするという条件をクリアして現在にいたるため、俺と神津の関係については知っているだろうが、小学生にキス以上のことをしているなど大きな声で言えないし、まだそういうのを教えるのは早いと思う。教育に悪い。
それに、そんなこと弟子に知られたくないというのもまた一つの理由だった。
純粋無垢な小林は「仲がいいんですね」と微笑ましそうに俺たちを見ていたので、良心にぶすぶすと針が刺さる。騙しているわけではないが、何というか、こういう反応をされると罪悪感を感じる。
俺とは小林から目をそらした。
「先生どうしたんですか?」
きょとんとした顔でこちらを見る小林に、俺達は苦笑いを浮かべた。
「何でもねえよ。まあ、腰が痛いのは働き過ぎだからだ。気にすんな」
「えっ、先生新しい依頼でも受けたんですか?」
「うっ……」
時に純粋さは人を傷つけると、身をもって教えられた。
新しい依頼というよりかは、恋人のみの安全のため動いているといった方が正しい。依頼を無理矢理頼ませた形だし、これは依頼の内にはいらないのではないかと思った。となると、やはり新規の依頼は0である。ストーカーの嫌がらせによって、新規の依頼は来ないし、未だ恐怖のラブレター攻撃は続いている。
「僕が依頼したんだよ」
「恭さんが? 一体、どんな依頼を?」
神津は、俺の手を退けながら小林に説明しようとしていた。小林は、どうして神津が俺に依頼を? と興味津々といった感じに目を輝かせていた。
小林が、俺と神津どちらの方が優秀だと思っているか分からないが、事件の数をこなしてきたのは神津のため、神津が相談するほどの依頼とは何なのか。きっと気になったのだろう。
神津は、教えて欲しい? と小林に問いかけると、はい! と元気よく返事をした。神津は嬉しそうに口元を緩ませて笑っていた。
小林は本当に好奇心の塊だと思う。それか、恐怖心がないのか。誘拐事件の時もそうだったが、狙われていたのが少女とは言え犯人の邪魔をすれば殺される可能性だってあったはずだ。それなのに、友達を救いたいからと言う理由で動いていた。怖い思いだってしただろうし、普通ならそこでもう関わりたくないと思うはずだ。だが、小林はまた事件に興味を持っている。何というか探偵むきなのかも知れない。
「春ちゃんには、僕のストーカーを捕まえて欲しいって言う依頼をしたんだ」
「恭さんのストーカー?」
「うん、何年か前から付きまとわれていて、ここ二年は大人しかったんだけどね。僕だけに害を加えてくるなら良いんだけど、春ちゃんにも被害がいってて。このままじゃいけないなあって」
そう神津が説明すれば、納得したように小林は頷いた。
「まあ、そういうことで春ちゃんに依頼したの。そしたら、春ちゃん張り切っちゃって」
「それは余計だ」
「ありゃ、本当の事じゃん」
と、神津はによによと俺の方を向きながらいった。
小林はそんな俺たちのやりとりを見ながら、いきなり挙手をした。どうしたのかと小林を見れば、「僕も手伝わせてください!」と目を輝かせている。弟子というか、助手だな……と思いつつ、俺は神津と顔を見合わせた。
小林は、神津のストーカーについて何かしたいと思っているようだが、俺は小林を巻き込みたくはない。
これは、俺と神津の問題なのだ。
俺がそう、断ろうとすると神津が俺を制止し、分かった。と一言いった。
「はあ? 神津、お前」
「じゃあ、とわ君にはまた電話してもらおっかな。ストーカーを見つけたら僕か警察に電話して?」
「は、はい!」
「お利口だね。じゃあ、これ。これ渡しておくね」
と、神津は何やら小林に紙のようなものを渡していた。
何だろうと、覗こうとすれば神津にまた止められる。
「何で止めるんだよ、神津」
「うーん、春ちゃんには別のお仕事があるから。弟子の仕事までとっちゃダメでしょ?先生」
そう言った神津は、何か策があるとでもいうように嬉しそうに笑っていた。