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== shp ==
予定通り、夜16時。b国が襲撃に来た。
国民はあらかじめ避難させている。
俺は、初めて人を殺した。
できれば、人は殺さずに人生を終えたかったが、この世界に生まれた以上、しょうがない。
shp「…西側の住宅地らへん大体終わったんで、中央の方向かってます」
tn『よろしくー』
shp「……ふぅ」
8年間計画してきた割には、そこまで強くはない。
e国と戦えば良い感じにはなるんだろうけど。w国の軍事力には勝てない。
あたりを見回せば、死体。仲間もいる。
もはや、死体を見ただけじゃ何も思わなくなってしまった。
住宅地から抜けようとした時、誰かに刺されたような声が耳に入ってきた。
気になってチラっと覗けば、緑のフードとw国の服。
正直、1番会いたくなかった。
一歩踏み出せば、しゃがんでいるその男が振り返る。
zm「…ん?」
shp「ッ…ゾムさん…」
zm「今、戦争中やぞ」
そう言って死体を地面に落とす。別人のような冷たさだった。
shp「…ぁあの!全部終わったら…ゾムさんはどうするんすか…」
zm「え?」
その返しが1番怖い。
ゾムさんは、フードを深く被る。
zm「…自害」
shp「…ぇ…」
zm「いやぁ、さ。俺、生きてるだけ迷惑かなって。仲間も裏切って。どうせこの襲撃もw国の勝利で終わるんやろ?8年もかけたのに。俺のせいで、今までが無駄になってさ。俺はいないほうが、みんなは幸せになれる。償いだよ」
shp「い、や…国に戻ろうとは思わないんすか。みんな受け入れてくれますよ…」
zm「変に気使わせるだけや」
俺の声はどんどん掠れていく。
風に削られていくみたいに、頼りない。
shp「…俺はゾムさんに出会って、変われたんすよ。w国に入ってからも。ゾムさんはそんなこと無かったんですか?俺だけだったんですか?」
zm「…そうかもね」
淡々と言うけど、わずかに揺れていた。
shp「これからでもゾムさんは救われる。今からでもw国に…」
zm「出会いは人を変える?」
その言葉の瞬間、風の音すら止まったように感じた。
ゾムさんは、よろ、と立ち上がる。
zm「…ははっw そうか。ショッピはそう思うんやな」
shp「俺はゾムさんに救われて」
zm「そんな訳ねぇだろ?」
刺さるほど冷たい声。
そのあと、彼は大きく息を吸った。
zm「ッそんな訳ねぇよなぁ”!?俺は誰とも出会えなかった!!国を出る時、家族は止めてもくれなかった!!俺の気持ちは知ったこっちゃない!!自分が1番辛いみたいな顔して!!1番大好きなのは自分!!国のため?じゃあ俺は?俺の気持ちは?俺はどうなったっていい!!?」
心からの叫びだった。
zm「俺は、本当に独りなんだよ」
しぼんだ声だった。
さっきまで怒鳴ってたとは思えないほど弱い。
shp「……俺はゾムさんのこと、大好きですよ」
zm「そんなの……」
震えた声。ほんの少しだけ、何かがほどけた気がした。
安心して手を出そうとした時、ゾムさんが睨みつけるように視線を向ける。
zm「じゃあ、お前が全部なんとかしてくれんのかよ?」
shp「……え?」
zm「大好きって言えば俺が救われると思ってんのか?そんなに大好きなら…俺のこと思ってるなら…今からb国行って、『もう無理です、やめましょう』って言って、全部なかったことにできる?無理やろ?無理なんだよ…俺は、もう」
ゾムさんが、呟くというより落とすように言った。
周りでは、まだ戦っている兵士たちの叫びが飛んでいた。
b国の人数は確実に減っている。
勝敗はもう見えてきている。
俺は、ゆっくりとゾムさんへ近づいた。
「俺はゾムさんが大好きです。ゾムさんのためなら死ねます。そのくらい、大好き。俺は救われたんです。だから、貴方は独りじゃない」
優しく。丁寧に。ゾムさんは、ナイフを持つ手を下ろした。
良かった。そうほっとした。
ーーーそんな俺が甘かった。
ゾムさんは、素早く左腕で俺のことを抱えて、右手のナイフを俺の首元に当てた。
そして、枯れるような声で、大声で叫ぶ。
zm「皆様聞こえますかぁ”ッッ!?w国を裏切ったゾムでぇぇ”すっッ!!」
初めて聞いた、狂気で満ちた声。初めて見る表情。
一気に周りの兵たちが静まり返る。
zm「今からお前らが変なことをすればw国幹部ショッピの首がぶっ飛びまぁぁすっっ!!」
ゾムさんの叫び声は、戦場の喧騒の中でもしっかり響いた。
一瞬、あたりの時間が止まったような錯覚がする。
見える範囲の w国兵は皆、困惑して動きを止める。
誰もが理解したのだろう。
今この場で最も危険なのが、目の前にいる。
ナイフの切っ先が、俺の首筋をわずかに押す。
冷たさが伝わって、背筋がびくりと震えた。
shp「………ゾムさん、やめましょう。俺は……逃げませんから」
俺がそう言うと、ゾムさんは表情を変えずに言った。
zm「お前さぁ……ほんま、優しいよな。そんな顔で言われたら俺が悪者みたいやん?」
言いながら、刃はまだ首に触れたまま。
だが押し込む動きはない。
shp「悪者なんて、思ってないですよ」
zm「…じゃあ何で震えてんの?」
ゾムさんが、俺の耳元で囁く。
恐怖で、息が一瞬止まった。
shp「……怖いですよ、今。でも、ゾムさんが一番」
zm「黙れ」
低い声。
もうゾムさんの心は狂気に染まってるのに、同時に誰よりも苦しそうで、孤独で。
その矛盾が、余計に恐ろしくてたまらなかった。
ゾムさんは俺の肩を強く掴み、戦場全体に聞かせるように再び叫ぶ。
俺は冷たい刃を首元に感じながら、唾をのみこんだ。
周りの兵士らも動きを止め、ゾムに視線を向ける。
ざわつきが、風を切る音みたいに耳に刺さる。
shp「……そんなことして、どうなると思ってるんですか」
声の奥にある焦りは隠しきれていなかった。
zm「“奪われる側”で終わるのは嫌だ」
ショッピの首に当たるナイフが、きゅっと深く押し当てられる。
shp「ゾムさん……俺は、貴方に死んでほしくないんです」
zm「ははっ……そんな言葉、今更よう言えたなぁ?」
耳元でささやくその声は、優しさなんて完全に捨てていた。
w国「動くな!!ショッピさんから離れろ!!」
兵の怒鳴り声が飛ぶ。
ゾムさんはナイフを俺の首元に突き立てた。
zm「首飛ばすって言ったやん」
兵たちの呼吸が止まる。
ゾムさんは、俺の肩に顎を乗せるようにして、ひどく嬉しそうに笑った。
shp「……ゾムさん。俺を人質にしても、何も救われませんよ。ゾムさんがもっと傷つくだけです」
zm「傷つく?今さらこれ以上、何を失うって言うねん」
ゾムはぱっと片腕を広げ、w国全体に向けて叫んだ。
zm「さぁw国答えろ!!“裏切り者”の命と、国の命。お前らはどっちを取るかなぁ”ッ!?」
空気が凍りつく。
誰一人として返事をしない。
返せるはずもない。
沈黙の中、俺はゆっくりと息を吐いた。
shp「……俺の命で、何を証明したいんですか」
ゾムはショッピの耳元で、ぼそりとつぶやいた。
zm「……“俺は独りや”ってこと」
その声音だけは本当に泣きそうなほど、寂しすぎた。
どうも、あめです。
あと1か2話かな
個人的にはここが1番好きです
これ終わったらBLかなんか書こっかなーって思ってます。
それでは次回もよろしくお願いします