【能力者名】 千代子令子
【能力名】 腐れ外道とチョコレゐ卜
《タイプ:擬態型》
【能力】 チョコを食べることで視界に
表裏一体映る全ての人間のスマホの履歴
を見ることができる。
【以林下、細菌達の記録】
《お昼休み、米津高校一年B組の教室にて》
千代子令子は新しい情報や噂を集めるのが
三度の飯より好きだった。大好物のチョコレートと同じくらい好きだった。
故にチョコレートを 食べながら新しい噂が飛び交う昼休みの教室を鑑賞する時間は千代子にとって至福の時間だった。
今日も米津高校一年A組では様々なニュースが飛び交っていた。
この教室で、今一番センセーショナルな
ニュースはこれだろう。
「ねぇねぇ、聞いた?こないだ米津高校近くの河川敷で翼の生えたクマが現れたんだってー!!草野球をしてたシリアスブレイカーとパンダと川中島達が警察が来るまで戦って大怪我したらしいよー!!」「えーこわーい。」
米津高校近くの河川敷で空を飛ぶクマが
出た。このニュースはすぐに校内に広まった。クマについては能力によって生み出されたもの説や 遺伝子改良説、政府の陰謀説、
ガチの熊説など様々な 憶測が飛び回った。
「ほんっとにこわかったんだよー!!!がおーーってこんなこわい顔してさーー!!」
シリアスブレイカー達と草野球をしていた恋原表裏一体は身振り手振りを交えてその時の様子を実況してみせた。
「にしても表裏一体達《ボランティア部》は
あんま怪我とかなさそうで安心したわー。」
クラスメイトの酒池肉林がそういって牛乳を飲んだ。
「うん!!ボクと心蔵は《深海シティーアンダーグラウンド》で避難してたし、どろりは
死んだフリしてその場をやりすごしてたよー。」
「死んだフリって空飛ぶクマにも有効なんだなー。」
と林は感心した。
(飛ばないクマにもあんま有効じゃないらしいけどね。)
と千代子は心の中で思った。
「まぁ、僕は死んだフリのプロだからね。」
と、どろりは弁当の唐揚げを食べながら
情けない自慢をした。
「どろりは食べてもあ美味しくなさそう
だからクマもスルーしてたんだよー。」
と表裏一体がケラケラ笑った。
「あんまそういうこというのはよくない。
かなしいことだ……。」
そういってどろりは眉を潜めた。
「それにしても……活躍した三人は皆大怪我したみたいだね……。」
とクラスメイトの白雪ちゃんは心配そうに
言った。
「一番可哀想なのは川中島だよなー。
手足を骨折する重症に加えてなぜか能力まで
使えなくなったらしいからなー。」
林が気の毒そうに言った。当の川中島は
松葉杖をつきながらちゃんと学校に登校し、一年B組の自分の席でおいおい泣いていた。
「あまり川中島のことを噂するのはよくない。川中島が可哀想だ。」
どろりも同情して言った。
「か、川中島くん!!あの…..ね。私の
知り合いの先輩にあるは先輩って人がいるんだけどその人がお昼休みに悩み相談してるんだ…..。今、 すごく辛いだろうから……
よかったら相談してみて…….。」
そういって白雪ちゃんは川中島を励ました。
「か…..かだじけないでござる…..!!!
拙者は侍の魂である愛刀《ギガンティックO.T.N》を失ったでござるが、拙者には
まだこんな温かい仲間達がいたでござるなぁ……..!!」
川中島は感極まってまたおいおい泣き出した。
「そんでシリアスブレイカー先輩も腕を大怪我したからしばらくTiktok チャンネル休むってよー。すげえよな空飛ぶクマ。あの
シリアスブレイカー先輩に傷をつけるんだぜ?」
林はあらためてクマという生物の恐ろしさ
にぞっとした。
(まぁ、シリアスブレイカー先輩達に怪我させたのはクマじゃなくて殺人鬼なんだけどな。)
この事件の真実を知っている唯一の男、
どろりは誰にも悟られないように心の中で
思った。
「そしてクマと大立ち回りを繰り広げた
パンダは全身筋肉痛で休みなんだってー☆
ボク、クマが怖くて震えてたからよく見てなかったけどパンダって強かったんだねー。」
表裏一体が白雪ちゃんからウサギ型のリンゴとオレンジを交換し合いながら言った。
パンダとは米津高校一年B組の男子生徒、
半田緋色のことである。
「ただ教室でずっと寝てるやつじゃなかったんだな。」
と林は言った。噂のパンダ本人は今日は
全身筋肉痛で 授業は病欠していた。
(というかシリアスブレイカーや川中島が
普通に学校来てる方にびっくりだわ。
やっぱ能力者ってタフだよなー。)
と千代子令子はチョコを齧りながら心の中
素直で 感心していた。
【しばらく雑談は続く】
噂好きの千代子は次の最新ニュースを
皆に披露した。
「ところでさーこれは友達の友達のさっちゃんから 聞いた話なんだけどー、転々ちゃんが今度の体育祭実行委員に立候補するんだってー。」
千代子がそういうと表裏一体達は意外そうな
顔で教室の一番前の席でノートにお絵かき
してる独絵転々を見た。転々と反対側の一番前の席でずっと勉強していた転々の双子の姉、独絵三十九秒も思わず手を止めピクリと反応した。
「えー☆転々そうなのー?ボクてっきり
転々はそういう学校行事興味ないと思ってたー。」
表裏一体は意外そうな顔で転々に話しかけた。
「アイヤー、ばれちゃったカー。千代子ちゃんの言う通りネ。今年は私が体育祭実行委員に なって体育祭をよりアイヤーなものにしてみせるヨー!!この転々にどかーんとまかせるネー。」
そう言って転々はふっふーん、と表裏一体達に言ってみせた。
「いいじゃんいいじゃん☆なんか楽しそう!!
ボクは応援するよー!!」
そう言って表裏一体は転々にハグをし、
転々のほっぺをすりすりした。
「アイヤー!!ありがとネー。」
転々はくすぐったそうにしながらはにかんだ。
転々の双子の姉、独絵三十九秒は
(妹が…….体育祭実行委員?どういう風の
吹きまわしだ?)
の怪訝そうな顔をしたが
(……私には関係ない。私はひたすら勉強して次のテストで今度こそ妹に勝つ。それだけだ。)
とまた机で現代文の過去問を解きだした。
一方噂好きの千代子令子は自らの能力で
転々の真意を暴こうとした。
千代子は板チョコをパキッと齧った。
千代子の能力はチョコレートを食べることで
発動する。
千代子の能力は『腐れ外道とチョコレゐ卜』、チョコレートを食べると、約十分の
間視界に映る人間のスマホの履歴を視ること
が出来る能力だ。
千代子はばれないようさりげなくチラッと
転々を見た。千代子はこの能力を使っていることを周囲に決して悟られないように常に
うっとうしいほど前髪を伸ばし、茶色の
カラコンを入れて《擬態》していた。
千代子はチラリと転々を見た。転々の検索履歴にはいつものように《ちいかわ》や《おぱんちゅうさぎ》など転々の好きなキャラクターの検索ワードがあった。
そして転々がこれまでの悪鬼退治とロカ•タランティーネ先生の経歴、そして米津学園にいる生徒のことを
調べていることが分かった。
(……どういうことだ。転々はこの体育祭で
ロカ先生に何か仕掛けるつもりなのか?
だが何故?転々がロカ先生と敵対する動機なんてあるのか?)
林にほっぺをもみくちゃにされながら
千代子令子は思案した。
そこで千代子令子は思い出した。最近
SNSで『クローバー同盟』というアカウント
が悪鬼退治のために能力者•非能力者を問わず仲間を集めているのいう噂を耳にしたことを。
(…….ああ、思い出した。気になってクローバー同盟のアカウントをハッキングして
身元を特定したんだった。たしか、一年E組の黒尾場じゃんねってやつか?……ってことはまさか転々と黒尾場は裏で繋がってるのか? )
千代子はクラスメイトの林ちゃんと組子と
談笑しながら頭の中でそう推理した。
(だとしたら転々はなぜそんな奴と手を組んでるんだ?転々はこの体育祭で何を企んでるんだ?)
転々はクラスメイトとポーカーをしながら
もう少し『クローバー同盟』に探りを入れる
ことにした。
かくして各々の陰謀が渦巻くお昼休み。
転々と黒尾場じゃんね率いる
『クローバー同盟』は静かに、着実に。
暗躍を始めていた。
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