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また逢いたい。
あなたの目を見て話したい。 きっと私達、二度と出逢えないはずだから。 そんな時、目の前に不思議な宝飾店が現れるらしい。
「その人にぴったりのジュエリー」を用意してくれるんだって。
今日は特別な日だ。
学生の頃から大ファンだった、シンガーソングライター小白摩紗矢の復活ライブのバックステージに当選したのだ。
+
小白摩紗矢が事故に遭ったのは五年前。
リハビリの為に無期限活動休止に入ると聞いた時はとてもショックを受け、落ち込んだ。
しかし過酷なリハビリに打ち勝った小白摩紗矢は療養を終え、わずか五年で完全復活することになり、ライブが開催される事になった。
そのライブのバックステージに当選するという奇跡が起こったのだ。
私は、小白摩紗矢こと摩紗兄の復活を信じ、活動休止中もファンクラブに入り続けていた。
【畠中志乃さま
ファンクラブ運営事務局です。この度は、2月3日(土) 東京都・N会館 大ホール バックステージにご応募頂き誠にありがとうございました。厳正に抽選させていただいた結果、「ご当選」されましたのでお知らせいたします。
参加特典
1.ツーショット写真(会員様のカメラで撮影します)
2.フリートーク
3.お好きなグッズや私物にサイン(1点)
4.限定バックステージパス発行(記念品としてお持ち帰り頂けます)】
復活ライブの二週間前に届いた当選メールを見た時は、目を疑った。
ライブに行けるだけではなく、摩紗兄本人に会えるのだ。
嬉しさと戸惑いが頭の中を駆け巡る。
普段は職場でも空気のように息を潜め、なるべく人と関わらないようにしている。
そんな私が、摩紗兄の顔をちゃんと見て話せるのかどうか不安だ。
だけど、こんなチャンスはきっと二度と来ない。
目立たない私に、人生で一度だけ神様がくれた奇跡に違いないと思う事にした。
+
ステージ上の摩紗兄からは私の姿なんて見えないだろうと、普段着で行くつもりだったが、すぐに新しい服を新調した。
長い間、手入れを忘れていた肌にも、ドラッグストアで買ったばかりの化粧水を染み込ませ、髪も美容院で整えた。
風邪が流行っている季節だったので、体調には充分気を付けた。
そして無事にライブの日を迎えることが出来た。
「今日、予報は雨だって。 傘、持ってったら?」
ライブの日の朝、母にそう言われたので、折り畳みの傘を持っていく事にした。
電車を乗り継ぎ、N区へ来たのは数年振りなので、時間配分を間違えて開場時間の二時間半前に会場に着いてしまった。
他の都道府県から来た人達もいるのだろう。
ロビーには、開演まで時間を潰しているような人達がちらほらと確認できた。
私もソファーに腰掛け、時間が経つのを待つ。
五分すらも長く感じる。
グッズを見たり、設置してあった棚に入れてある摩紗兄のライブのチラシを手に取ったりしていたが、全然時間が進まない。
+
やっと開場時間になった。
到着した時の何倍、何百倍の人達がロビーに並び始める。
トイレを済ませ、列に並び、係員にチケットを見せた後、座席に向かう。開演まで、あと五十分……、あと、三十分、あと五分……!
長いブザーの音と共に、会場が暗転した。
数秒後、一筋のスポットライトが当たったその先にいたのは、やはり摩紗兄だった。
黄色い完成が沸き起こり、それに応えるかのように摩紗兄も歌い、踊る。ペンライトとマフラータオルを胸の前で握り絞める。
私、この後、摩紗兄と話が出来るんだよね? もう、信じられない!
+
素晴らしいライブだった。
汗をマフラータオルで拭いながら、余韻に浸る。
ロビーは帰路に着く観客でごった返している。
汗でメイクが崩れちゃったかな?
鏡を取り出そうと、リュックの中に手を入れた時だった。
「畠中様!バックステージに当選された畠中志乃様、いらっしゃいませんかーー!?」
大きな白いボードを持ったスーツ姿の男性が、私の名前を呼んでいる。
ボードに手書きで書かれた五人のフルネームの一人が、私の名前だった。
「はい……、はい!」
周りの視線が一点に集中する。
右手を挙げて、大きな声で返事をしている自分がいた。
「畠中志乃様ですか?」
私は財布から免許証を取り出し、スーツの男性に見せた。
「はい、畠中様! あちらでしばらくお待ち下さい。準備が出来次第、係の者がお部屋にご案内します」
ロビーの端の方にあるソファーに腰掛ける。
当選者は、私を含めた女性三人と男性二人の計五人らしい。
+
「それではお部屋にご案内します」
しばらくして女性マネージャーから声が掛かり、私達は関係者用の通路を進む。
「小白は後から来ますので、もう少々こちらでお待ち下さい」
椅子が六脚置いてある小さな部屋。その内の五脚は緩い弧を描き、くっ付けて並べてある。
残りの一つは、五つの椅子達とほぼ向かい合わせになるように置いてある。
摩紗兄が座る席だ……!
+
「年末の摩紗矢くんのディナーショーには行かれます?」
「今年はファンクラブとのツアー旅行、ありますかね?」
「これ、十年前のファンクラブイベントに参加した時に貰ったサイン」 他の当選者の人達が雑談を交わす。 私も首を縦に降り、話を聞いていたが、皆がもうすぐ現れる摩紗兄との対面に緊張しているのが分かった。
部屋にあった、花の形をしたすみれ色の掛け時計の秒針の進む速さが、今まで生きてきた中で一番遅く感じられた。
スタッフの人が、部屋にある荷物を取りにドアを開ける度に、私達五人が一斉にそちらに視線を向ける。
スタッフの人はその度に、「すいません……(小白摩紗矢じゃなくて)」と、申し訳なさそうにしている。
そのやり取りを四、五回繰り返していたので、感覚が麻痺してきていたその時だった。
「お待たせしてすいません。 小白摩紗矢です」
摩紗兄がいきなり現れ、会釈をした。一番右端に座っていたファンの女性は、摩紗兄が入ってきた瞬間に、言葉にならない声を漏らした。私は視線をどこに向ければいいのか分からなかった。
「本日はお越し頂き、ありがとうございます。 お疲れ様でした!」
そう言った後、目の前の椅子に摩紗兄が腰掛けた。
私は偶然、五脚ある椅子の真ん中に座っていた。
ちょうど摩紗兄の正面だ。 き、緊張する……!
「では、どこから来られたのか、ファン歴、今日一番グッと来た曲を教えて下さい。順番を決めるから、両端の人はジャンケンして!」
私は真ん中だから、どちらから数えても三番目だ。
私達側から見て左端の男性がジャンケンに勝った。
男性はどちらから来たか、ファン歴、そして摩紗兄に対する熱意を語り出した。二十年以上の筋金入りのファンらしい。
そういえば、摩紗兄の過去のライブでも何度か見た事がある気がする。
「長い間、応援してくださってありがとうございます」
摩紗兄が椅子から立ち上がり、男性ファンに両手を差し出した。
男性ファンは、摩紗兄の手を力強く握り返している。
その表情はとても満足気だ。
+
二分ほどが経ち、私の左側に座る女性ファンに摩紗兄が質問を始めた。
次は私の番だ。
さっきまでは摩紗兄の視線は、私を含む五人に分散されていた。
だけど、一対一で話すとなれば摩紗兄の視線は私に集中してしまう。
パニックを起こしそうになっている時、「じゃあ、次の方」と摩紗兄の声が聞こえた。
摩紗兄が私の顔を見ている。
摩紗兄の視界に私が入っている。
「かっ……K区、東京都K区から来ました、畠中です……」
「畠中さん。いつファンになってくれたの?」
「十三年前です。十三年前に、N県で行われたカウントダウンライブをテレビの生放送で見てて、それをちょうどビデオに撮っていて。ライブをテレビで見てて、それをちょうど撮っていて、ブルーレイに。十三年前に……」
ああ駄目だ。
元から人と話すのが苦手なのに、緊張で余計に上手く話せない。
「普……段、あまり人と話さないから……。 緊張します……」
せっかくフレンドリーに話をしてくれているのに、何だか申し訳なくなり俯いてしまった。
次の瞬間、摩紗兄が立ち上がり、私の目の前に来て両手を差し出してくれた。
「大丈夫、ちゃんと話せてますよ。長い間応援してくれていたんですね。ありがとうございます」
震える両手で、摩紗兄の手を握る。
柔らかくて大きな手だ。
+
五人全員への質問が終わった後は、摩紗兄が他の人の質問に答えたり、曲への想いを語ったりしていた。
他のファンの人達は摩兄にたくさん質問をしていたけれど、やはり私は積極的にトークに入る事が出来なかった。
「ではサイン行きましょうか」
十五分ほど話したところで、ビデオを回しているらしい女性マネージャーが摩紗兄に声を掛けた。
「では準備が出来た方から」
色紙や、グッズを差し出す人達のなかで、私は一際大きい一枚の紙を取り出して摩紗兄に渡した。
摩紗兄は、少し不思議そうにその紙を見つめている。
「描いてきました……」
私は、おずおずと小さな声で言った。
B4サイズのケント紙には、摩紗兄と自分が並び、お互いの片手を合わせてハートを作りながら笑顔を浮かべているイラストが描かれている。
二週間前に当選メールが来た日から、何度も何度も描き直したものだ。
もしかしたら、サインの為にこんな大きな物を持ってきたファンに驚いているかもしれない。
「昔、漫画家を目指していた時期があって……。最近はもう描いてないんですけど」
そう、夢だった。
私の描いた漫画がアニメ化されて、そのオープニングソングを摩紗兄に作ってもらう事が。
「描いた方がいいですよ」
その言葉に、心臓がドキリと跳ねた。
「描いた方がいい。こんなに上手なんだから」
摩紗兄が私の目をまっすぐ見てそう言った。
「……はい、ありがとうございます……」
夢を見る事なんかとっくに忘れていた。
努力の足りなさを、夢を諦める口実にしてずっと向き合ってこなかった。
大好きな人に背中を押される事がこんなに嬉しいなんて。そして、自分が描いたイラストに摩紗兄のサインを書いてもらう日が来るなんて、思いもしなかった。
「では写真を撮りましょうか」
女性マネージャーが言った。
「じゃあ、ステージに行きましょうか!ここじゃ、つまんないでしょ?」
摩紗兄がはにかみながらそう言った。
摩紗兄が発する全ての言葉の語尾に星が付いて見える
+
さっきの部屋とは打って代わって、ステージはひんやりとしていた。
さっきまで摩紗兄が立っていた場所だ。
機材が全て片付けられた空間から客席を見渡す。
こんなに沢山の人達の前で歌えるなんてすごいな。
「準備が出来た方からカメラを渡してください」
私はデジカメを取り出し、女性マネージャーに渡し、摩紗兄の元に近付いていく。
たぶん真っ直ぐ歩けていない。
「どんなポーズで撮る? ハグか、バックハグも出来るよ」
ハグ……?摩紗兄とハグ……!?
「バックハグ、バックハグがいいです。 バックハグ、してもらってもいいですか……?」
もう、好きが止まらない。
摩紗兄は笑みを浮かべ「いいよ」と言ったその瞬間、私の後ろから両手を回してきた。
懐かしい匂いがした。
香水なんだろうけれど、ふんわり香る系の柔軟剤に近いような、心地よい香り。
「さあ、笑って!」
摩紗兄が、私を包み込んでいる両手にぎゅっと力を込めた。
「!!!」
脳ミソがとろけるとはこういう事だろうか。
ハグがこんなに気持ちのいいものだなんて。
彼氏いない歴イコール年齢の私は、男性とハグをする事自体が初めてなのに、その相手が摩紗兄だなんて、光栄だけれど刺激が強過ぎる。
……意識が飛……ぶ……。
「撮れました」
女性マネージャーの声に、ふと我に返る。私からゆっくりと腕を離した摩紗兄が、「写真、確認しておいで」と言った。呼吸の仕方を忘れていた為、頷いた瞬間に「フゴッ!」とブタ鼻が鳴ってしまい、それを聞いた摩紗兄が思わず吹き出した。
私はフラフラの足取りで女性マネージャーの元に向かう。
女性マネージャーにお礼を言い、デジカメの画面を確認している間、摩紗兄は必死に笑いを堪えていた。
どうやらツボに入ったらしい。
そして、摩紗兄が自ら近付いてきて、デジカメの画面を覗き込む。
「ふふっ……、何だかカップルみたいだね!」
王子だ。王子様だ。
今までブレイした恋愛シミュレーションゲームのどんなイケメンキャラも、この王子には到底敵わない。
「ありがとうございました……」
頭がクラクラしたまま、お礼を言う。
私もう、夢の中にいるみたい。
これは現実なの?
「クッ、……ふふふ……、こちらこそ!」
摩紗兄は、私にに気を遣って必死に笑いを堪えようとしているが、なかなかツボから抜け出せないらしく、そのまま次に待っていた男性ファンの元へ向かい、撮影を始めた。
+
夢のような時間はあっという間に過ぎてしまった。
「夢、叶えるんだよ!」
摩紗兄が帰り際に掛けてくれた言葉に「はい!」と強く頷いた。
ああ、もうお別れなんだ。
でも今日の出来事は、人生の最高の思い出として胸に刻んでおかなくては。
他の当選者にも別れを告げ、呆然としながら帰路に着く。
終電にも間に合い、何とか自宅へ元へ帰る事が出来た。
自室に入ると、家を出る直前まで悩んでいた洋服達がベッドの上に乱雑に散らかっている。
明日、片付けよう。
私は摩紗兄のサインの書かれた紙を、一時間以上、何度も何度も目に焼き付けていた。
+
翌日は仕事が休みだった。
私はというと、布団にくるまり悶絶していた。
何て醜態を晒してしまったんだろう……!!
摩紗兄相手にブタ鼻を鳴らすファンがどこにいるって言うの!!!
朝に確認したデジカメの液晶に表示されたのは、驚きと緊張で今にも目玉が飛び出しそうな自分の顔。
しかもライブで涙を流した為、目の下には安物のマスカラがびっしりとこびり付いている。
あの時ロビーで、鏡を見る前に名前を呼ばれたから、確認するのをすっかり忘れていた。
穴があったら入りたいってこういう事だよね……。
でも摩紗兄の事、ますます好きになったな。
+
高ぶった気持ちも、日を追うごとに少しずつ落ち着いていき、夢を追い掛けていた頃の自分の姿を思い出し始めていた。
思い立ったその日から、毎日少しずつ漫画を描き始め、ブランクを取り戻そうとしていた。
しかし、出版社に投稿した漫画は賞に一切引っ掛かる事もなく次々と返却された。
+
あのライブの日から半年が経ち、季節は夏になっていた。何作も描いたのに、一度も賞に入らないとなると、やはり焦ってしまう。私、やっぱり才能がないのかな。
壁に飾られたツーショット写真とサインを見つめながらぼんやりと考える。
私、何の為に頑張ってたんだっけ。ああそうだ。
摩紗兄が背中を押してくれたんだった。
摩紗兄のツアーライブは今も続いていて、来月に千秋楽を迎える。……また会いたいな。
だけど仕事の都合で、今回のライブ参戦はもう出来ない。
あの日、一日だけのチケットを取るのもやっとだったんだから。
私の人生、きっとあの日がピークだったに違いない。
摩紗兄、もう私の事を忘れちゃったかな。
別のインナーを着ていけばよかったとか、メイクももっと上手く出来たはずだとか、質問にこんな風に答えれていればとか、数ヵ月経っても、あの特別な日の事が頭から離れなかった。
やるせない気持ちのまま日々は流れ、休日に母に買い物を言い付けられた私は、米とトイレットペーパーを買いに、ドラッグストアまで車を走らせていた。
「あれ?」
確かにドラッグストアの駐車場に停めたはずなのに、そこには見慣れない店が建っていた。
車を降り、不自然なその建物を眺めていた時、後ろから声がした。
「ようこそいらっしゃいました、畠中志乃様」
驚いて振り向くと、そこには長身の男性が立っていた。
どうして私の名前を?
「……ここにあったドラッグストアは潰れちゃったんですか?」
「どうぞ、中へお入りください」
会話が噛み合わない。
「あの、このお店は……お米とかトイレットペーパーとか売ってますか?」
「いいえ。当店は宝飾店ですので、そのような商品はございません」 淡々と答える不思議な店の男性に不信感を抱き、一端家に引き換えそうと車のドアを開けた。
「え!?」
たしかに車の運転席に座ったはずなのに、キラキラした目映い空間の中で、アンティーク調の椅子に私は腰掛けていた。
目の前で、さっきの店の男性が不適な笑みを浮かべて立っている。
「ここは……?」
「宝飾店でございます」
「いや、私はドラッグストアにお米とトイレットペーパーを買いに来たんですけど」
「畠中様にぴったりの商品がございますよ」
会話が噛み合わない。
「……アクセサリーとか、別にいらないです」
席を立ち、入り口らしい大きな扉に近付き、取っ手を引っ張る。
開かない……。
「当店は、商品を受け取って頂くまでお帰りになれませんよ」
はい、危ない店キタ!!
「帰してくださいよぉ……」
情けない顔をしながら振り返り、懇願する。
「当店は怪しい店ではありませんよ」
いや、思いっ切り怪しいって。
「小白様」
え?今、何て?
「小白摩紗矢様にまた会いたいのでしょう?」
「どうしてそれを……」
「こちらに見覚えはございますか?」
店の男性の手の上に、いつのまにか四角いケースが乗っていた。
開かれたケースの中で銀色の輝きを放つそれに、見覚えがあった。「摩紗兄のバングル……?」
「そう、あながが毎晩見つめている写真に写っている、小白摩紗矢様が着けていらっしゃるバングルと同じ商品でございます」
何故その事を、この店の男性が知っているのだろう。
私をバックハグする摩紗兄の左腕には、確かに目の前のバングルと同じ物がはまっていた。
「体調はお変わりありませんか?編集者の方に酷い事を言われて、落ち込んでおられるのでは?」
……そう。
この前、投稿ではなく、初めてC区にある出版社に原稿の持ち込みをしてみた。
私の原稿に乱雑に目を通した後、編集者の男性はこう言った。
「君さあ、男と付き合った事ないんじゃない?そんなんで少女漫画とか、読者が共感できる作品が作れると思う?ぶっちゃけ処女でしょ?結構いるんだよね、自分を客観的に見れない人が」
それからすっかりやる気を失ってしまった。
もしもこの先デビューできたとしても、あんな編集者がどこにでもいるのかと考えるだけで胃が痛くなる。
夢に挫折は付き物だけど、こんな形の苦痛は本当に必要なんだろうか?
「パワハラやモラハラに過敏な世の中とは言え、現状は昔とさほど変わっていないのかもしれませんね」
そして、あんなに頑張って描き上げた原稿を最後に破り捨てられてしまった。
……摩紗兄に会いたいよ。
涙が頬を伝う。
急にあの日の感覚が蘇ってきた。
目がとろりとなり意識が朦朧とする。
「また摩紗兄に会いたい……。あの日に、戻りたい……!」
頭の中の言葉が勝手に声になる。
「かしこまりました」
その言葉を待っていたとばかりに、店の男性の口角が上がった。
「当店の商品は、きっとあなたのお役に立つ事でしょう」
+
スマホのアラームで目が覚めた私は、自室のベッドの上で横になっていた。変な夢を見たな。
スマホを手探りで手繰り寄せ、アラームを止める。
寝ぼけ眼で液晶画面を見ると、日付けが二月三日と表示されている。
あれ?スマホがおかしくなってる。もう買い換え時かな。
布団をめくって起き上がり伸びをした時、左手で掴んだ右手首に違和感を感じた。
「嘘……」
あのバングルがガッチリとはまっていたのだ。
必死に取ろうとするが、まるで手首に吸い付いたようにびくともしない。
すぐに二つ目の違和感にも気が付いた。
何でこんなに寒いの!?
今は真夏のはずなのに、部屋の温度計の表示は10℃を下回っている。
昨夜はTシャツと短パンを着て寝ていたはずなのに、私はスウェットの中にヒートテック着ていた。
頭がよく回らないまま階下に降りていく。
「今日、予報は雨だって。 傘、持ってったら?」
母親が発した言葉に既視感を覚え、急いでテレビを付ける。
「まだまだ寒い日が続き……」
お天気キャスターが今日の日付と天気を告げていた。
間違いない。
ライブの日に戻ってる。戻る前の、あの店の男性とのやり取りを思い出す。
……戻ってしまったのなら、またライブに行く以外に選択肢はない。
私、また摩紗兄に会えるんだ!
私はまず、車でドラッグストアへ向かった。
そこにあの不思議な店はなく、馴染みのドラッグストアが建っているだけだった。
私は以前と違うタイプの落ちないマスカラを購入した。
家に戻ると、一度目とは違うインナーを選び、買ったばかりのマスカラを塗った。
一度よりも違う仕上がりになった鏡の中の自分を見つめ、あの日よりも四本遅い電車に乗り、ライブ会場へ向かった。
前回の経験を活かし、開場十五分前にライブ会場に到着した。
一度目よりも時間は早く流れ、開場時間となった。
+
開演時間になり、ステージに摩紗兄が現れた。
やっぱり格好いい。
二回も摩紗兄に会えるなんて、信じられない……!
二度目でセットリストや話す内容が分かっていても、私はとても満足だった。
ライブが終わると、以前と同じようにロビーは帰路に着く観客達でごった返していた。
その中から、やはり大きな白いボードを持ったスーツ姿の男性が私の名前を呼んだ。
「畠中様!バックステージに当選された畠中志乃様……あ、畠中様ですか?」
前回よりも早くにスーツの男性に気が付いていた私は、免許証を素早く提示し、ロビーの端の方にあるソファーに腰掛けた。
「お久し振りです」
そう声を掛ける私に、他の当選者達は不思議そうな顔をした。
そうだ、これが初対面なんだっけ……。しばらくして女性マネージャーから声が掛かり、関係者用の通路を進む。
「小白は後から来ますので、もう少々こちらでお待ち下さい」
椅子が六つ並べられた小さな部屋。やっぱり、あの日と同じだ。
+
「お待たせしてすいません。小白摩紗矢です。本日はお越し頂き、ありがとうございます。お疲れ様でした!」
二度目の私は、緊張はしているものの、一度目よりは冷静に摩紗兄を見つめていた。
ジャンケンにはやはり私達から見て左端の男性ファンが勝ち、しばらくして私の番が回ってきた。
「じゃあ、次の方!」
摩紗兄が私の方を見てそう言った。 私は、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「……K区から来ました、畠中志乃です」
「畠中さん。いつファンになってくれたの?」
「十三年前です。N県で行われたライブをテレビの生放送で見て、それをちょうど録画していて……。姉が摩紗兄のCDを持ってたから何曲かは知ってたんですけど、動いてる摩季兄を見るのは初めてで……。曲も摩紗兄もカッコいいなって思って、何度も巻き戻して見てました」
よし、言えた!
「ふふっ、そうなんだ。長い間応援してくれていたんですね。ありがとうございます。あれ、同じバングルしてるじゃん!」
摩紗兄が椅子から立ち上がり、こちらに近付いてくる。
目の前に差し出された両手を、私は強く握り返した。
+
フリートークが終わった後は、やはりステージに移動する。
女性マネージャーにデジカメを渡し、摩紗兄に近付く。
「どんなポーズで撮る?」
「バックハグがいいです……!」
「オッケー!」
摩紗兄が微笑んだ次の瞬間、後ろから両手で抱き締められた。
私も、自分の鎖骨辺りにある摩紗兄の逞しい腕に両手をそっと添えてみた。
ああ、幸せ……。
+
「夢、叶えるんだよ」
特別な時間は、またあっという間に過ぎてしまった。
名残惜しく感じつつも、自分比でなかなか写りのいい写真を、デジカメの画面で確認しながら満足していた。
わりとうまく話せて良かった。やっぱり夢を叶えたいから、明日から頑張ろう。
終電にも間に合い、帰路に着く。
そして自分のイラストに書かれたサインを少しだけ眺めた後、すぐに布団に入って眠ってしまった。
+
「嘘……」
夜が明けたら元に戻ると思っていたのに。三度目のライブの日がやって来た。
+
八度目のライブの日を迎えた私は、マスカラとアイライナーとファンデーションを買う為、またドラッグストアへ向かっていた。
だんだん不安になってきた。
最初は嬉しかったけれど、もしこのまま永遠に同じ日が続いたら。
ドラッグストアの駐車場に車を止める。
道路ですれ違う車両も、信号が変わるタイミングも、毎回同じなので随分とスムーズになったものだ。
車から降りると、いつものドラッグストアではなく、あの不思議な店が建っていた。
「お久し振りです、畠中様。 当店の商品はお気に召されましたか?」
店の男性がにこやかに微笑んでいた。
「お久し振りです!あの! もしかして私、同じ日を永遠にループしちゃうんですか……?」
不安げに店の男性に尋ねる。
「ご心配無く。ライブの日に戻れるのは、十三回。十三日目を最後に、元の日常へと戻っていただけます」
……あれ?この前はパニックになってちゃんと顔を見ていなかったけれど、この店の男性もかなりイケメンだな。
「どうなさいました?」
整った顔をした店の男性にじっと見つめられ、気恥ずかしくなった私は顔を伏せた。
「そうなんだ……。戻れるんですね、安心しました。でも、あなたはどうして、私なんかにこんなに親切にしてくれるんですか……?」
赤らめた顔を上げた時、すでに不思議な店はなく、別の車から降りてきた子連れの夫婦が私をガン見していた。
いない……。
でも今日を含めてあと六回、ライブとバックステージを楽しめばいいって事だよね?
+
「摩紗兄サイコーーーー!!!!!」
十三回目のライブを迎えた私は、ペンライトのリズムもジャンプのタイミングも完璧に覚えていた。
今日で特別な日が終わる。この日の摩紗兄に会えるのも、これで最後なんだ。
+
「二列目にいたよね?見えてたよ。 無茶苦茶上手かったよね。前日に新曲の振り付けをSNSで配信したから、踊れない人も多かったんだけど」
ライブ終演後、最後のバックステージで摩紗兄が私に言った。
「えーと、猛特訓して……」
十三回目だなんて言えない。
「そうなんだ。ありがとう」
摩紗兄が微笑む。
そしてステージでの十三回目の写真撮影、十三回目のハグ。
大好きなはずなのに、もう同じシチュエーションの握手とハグにすっかり慣れてしまった。
……そろそろ次のステップに進みたい。
私、摩紗兄にならファーストキスを捧げてもいいよ?
「こんなにハグしておいて、焦らしすぎだよ、摩紗兄」
「えっ?」
耳元で囁いた私に摩紗兄が驚き、少しだけ体を離して向かい合った一瞬の隙に、唇を尖らせ、勢いよく顔を近付ける。
「何してるんですか!!」
女性マネージャーが間一髪で私を摩紗兄から引き剥がした。
摩紗兄も流石に引いている。
「いや、最後の記念に……」
他のバックステージ当選者やスタッフの白い目が、私に向けられていた。
+
私は駅にいた。
終電まで、まだまだ余裕がある時間帯だ。
実はあの後、関係者によって私は会場の外へ連れ出されてしまったのだ。
明日になれば元の日常に戻る。
最後の最後がこんな感じになってしまったのは残念だけど。
……でも、十三回も摩紗兄に会えたのなら、もう夢とか叶わなくてもいいかも。
『電車が通過します。白線の内側にお下がりください』
人気のないホームにアナウンスが流れる。
……しかし惜しかった。
一人で唇を尖らせる。
乙女漫画では二回目くらいハグしたらキス……みたいな流れなのに。
でも、振り返ってみたら、緊張でガチガチでもメイクが落ちていても、意識が飛んでブタ鼻を鳴らしても、摩紗兄が『夢、叶えるんだよ』と最初に言ってくれた一回目のライブの日が一番嬉しかったかもしれない。
明日を迎えた時、摩紗兄の記憶に残っているのは、一体どの日の私なんだろう。
その瞬間、背中に衝撃が走った。線路に落ちる僅か数秒、スローモーションのような感覚。
体が翻り、満天の星空を背景に、見覚えのある顔が瞳に映り、助けを求めて咄嗟に伸ばした右手のバングルが外れた。
「な……んで……!」
その声は電車のブレーキ音にかき消された。
私が人生の最期に見たのは、狂ったような笑顔を浮かべた、見覚えのある人物だった。
+
「他のスタッフから聞いたよ。バックステージで途中で追い出されちゃった子、帰りに電車に轢かれて亡くなったんだって?まさか、追い出された事にショックを受けて……?」
ツアーの千秋楽を迎えた日、ライブ直前に小白摩紗矢がマネージャーに問い掛けていた。
「違うって。あれは歩きスマホが原因の事故だったのよ。私があの日、あの人……畠中さんの忘れ物を届けに駅に着いた時は、ちょうど線路に落ちる瞬間で……。監視カメラの死角だったし、私以外に目撃者がいなかったらしいけど」
「そうなんだ……」
「ちょっと!今から大勢のお客さんの前に出るのよ?畠中さんの事は残念だけど……。あんたも暗い顔しててどうするの!?」
女性マネージャーが小白摩紗矢の背中をバシバシと叩く。
「……そうだね……なあ、マネージャー。事故に遭ってからもずっと支えてくれて、マネージャーには本当に感謝してる。実は俺さあ、療養中の五年間がすごく長く感じたんだ。十年、……いや、もっと長かった。でもリハビリしながら、復帰した時の為の曲もたくさん作れたし。絶望した時期もあったけど、また歌えて嬉しいよ」
「……そういう台詞は、今日の千秋楽を無事に終えてから言ってちょうだい」
「分かったよ。あ、そうだ。事故に遭ってすぐにマネージャーがプレゼントしてくれたバングル、いつの間にか無くしちゃったんだよ。 肌身離さず着けてたはずなのに……、ごめん」
「そんな事はいいの!!摩紗矢が復帰できた事が、私にとって一番のプレゼントなんだから。ほら、さっさとスタンバイして!」
「ありがとう。行ってくるよ」
小白摩紗矢は微笑みながら鏡の方を向き直し、静かに気合いを入れた。
ステージの幕が上がる。
女性マネージャーが、輝かしいスポットライトと、割れんばかりの声援を浴びる小白摩紗矢を、涙を浮かべながら見守っていた。
+
「本当に良かった……」
ライブ終演後、全ての仕事を終えた女性マネージャーが、機材が運び出された広いステージから客席を見つめ、呟く。
「素晴らしいライブでした」
誰もいないはずの客席の中央から、あの店の男性が拍手をしながらステージに向かって歩いてくる。
「当店の商品にご満足いただけましたか?」
「……まあね」
事故に遭い、『二十年は治療しないと復帰は難しい』と医者に言われた時、小白摩紗矢と女性マネージャーは絶望した。
そんな時、女性マネージャーの前にあの店が現れたのだ。
「『時間を操るバングル』。小白様にも肌身離さず着けていただいていたようで、光栄です」
「本人はそんな不思議な力があったなんて全く気が付いてなかったけどね。実際にリハビリに掛かった時間が二十年だった事も。世間ではワイルド系イケメンとか言われてるけど、あれで結構天然入ってるから」
「畠中志乃様から『時間』を頂いた訳ですが、後悔は?」
「ないわよ。だって、事故の犯人はあの女なんだもの」
女性マネージャーが捲った左腕の洋服の裾から、バングルがきらりと光った。
+
畠中志乃は五年前に事故を起こした。
ある日の早朝、自身が運転する車で職場に向かっていた畠中志乃は、信号のない横断歩道を確認もせずに左折した。
こんな時間にジョギングをしている人がいるなんて思わなかったのだ。
そのまま逃走し職場へと向かった畠中志乃は、昼の休憩室で流れるニュースを見て全身をガクガクと震わせていた。
『小白摩紗矢、重体』『発見されたのは事故から約四十分後』『すぐに救急車を呼んでいれば、こんな事には』『再起不能か』
私が轢いたのは摩紗兄だったの!? 大変な事をしてしまった。
摩紗兄から大切な時間と歌を奪ってしまった……!
志乃はとても受け入れられなかった。
記憶と証拠を全て消し、畠中志乃は何事なかったかのように平然と日常生活を送っていたのだ。
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「あなたに犯人……あの女の事を教えてもらってから、どうやって復讐しようかずっと考えてた。復帰してから始めた摩紗矢のTwitterに毎回、執拗にリプしてくるファンのアカウントを見たら、アイコンにあの女がドアップで写ってるんだから驚いたわ」
「バックステージに畠中様を当選させたのもあなたでしたね」
「そうよ。私とも接点を作る必要があったから。どの面下げて摩紗矢に会いに来るのかと思ったら、事故の事を完全に忘れているみたいだった。……あの女を殺せてせいせいしてるわ。これで『時間の前借り』はチャラになるんでしょ?」
「ええ、しかし危険な掛けでした。『二人分の時間』を一人の人間から奪うというのは。しかし、あなたご自身も小白様と同じ年月……二十間も、一人の人間を支える為だけに費やす事ができるとは、まさにマネージャーの鏡ですね」
いつの間にか女性マネージャーから回収したバングルを手の平に乗せた店の男性が、客席をちらりと見る。
客席三階の中央の席から、死んだ畠中志乃がステージ上にいる二人を見つめていた。
女性マネージャーには見えてはいないようだ。
「ああ、スッキリした。着け心地悪かったわよ、それ」
女性マネージャーが左手首をさすりながら言う。
「商品改良の参考にさせていただきます。さて、今から打ち上げがあるのでしょう?そろそろ小白様の所へ戻られてはいかがですか?」
「そうね。こんな所で時間を無駄にしてられない。この世界はね、一分一秒が命取りになるのよ。……これからも小白摩紗矢は、私が一生を掛けて支えていくわ」
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女性マネージャーの背中を見送り、店の男性は畠中志乃の方に目をやった。
「当店とした事が、説明不足でしたね。このバングルは、『時間を巻き戻す』だけではございません。『時間を奪い合う』事も可能なのです」
畠中志乃はピクリとも動かない。
「あなたが命を落とさなければ、小白様と女性マネージャーの寿命が短くなっていたのです」
畠中志乃が、いつの間にか二階席の中央に移動していた。
店の男性が構わず続ける。
「五年前に事故を起こした時、すぐ助けを呼んでいれば小白様は軽傷で済んでいたのです。そして誠心誠意謝罪したあなたを、小白様は一切責めることはありませんでした。何度も見舞いに訪れるあなたの夢を知った小白様は、『夢を叶えるんだよ。僕も応援してるから!』と言葉を掛けて下さるのです」
畠中志乃は、やはり反応がない。
「その言葉に背中を押されたあなたは必死に漫画を描き続けます。出版社で酷い目に遭ったあなたは、自身の作品をWebサイトにアップします。ボツになったはずのそれらの投稿作品がネットで話題となり書籍化、そして数年が経ったある日、映像化が決定するのです」
二階席にいたはずの畠中志乃の姿がどこにも見当たらない。
「そのオープニング曲を手掛ける事になるのが小白摩紗矢様だったはずなのですが……、仕方がありませんね。保身の為に、人一人……いいえ、二人の人生を狂わせたのですから」
畠中志乃が店の男性の顔の目の前に立っていた。
目玉がない空洞から血の涙を流し、何かを訴えようと必死に叫んでいるが、聞き取る事は出来ない。
もはや人間の姿ではなくなっている『それ』は、鋭利な牙の並ぶ口のようなものを大きく開け、店の男性に襲い掛かってきた。
店の男性は怯む事なくそれに語り掛ける。
「……そろそろお時間が来たようですね」
次の瞬間、それの姿は消え去っていた。
静まり返ったステージの中央で、店の男性がぽつりと話し始める。
「特別な日というものは、毎日続くとただの日常になってしまいます。例え失敗したとしても、次に訪れるはずの『特別な日』の為に人は努力し続けるのです。もっともそれは、命があるからこそ出来る事なのですが」
いつの間にか会場の外にいた店の男性は、まだ灯りが灯るきらびやかな繁華街の中に紛れるように消えていったが、すれ違う誰の目にも、その姿は一切映っていなかった。
コメント
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読み終えたよ〜〜〜!!!😭💕✨ いやもう、めっちゃ重厚な話だった……!最初は「推しに会える奇跡」って純粋にキラキラしてたのに、ループを重ねるごとに主人公の変化がリアルで、最後のどんでん返しで全部の意味がひっくり返ったよ……。「時間を奪い合う」って発想、すごくエモくて切なかった。摩紗兄の優しさが全部伏線だったのも胸熱すぎる……!! 沙里央さんの描く人間の弱さと業の深さ、めっちゃ刺さりました。続きが気になるけど、この完結感も好きです。素敵な作品をありがとうございます🌸✨
はじめアキラ
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柘榴とAI

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swingout777
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