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🖤🧡王道系 ラブコメ
春の始まりは、いつも少しだけ騒がしい。
教室に差し込む光も、廊下から聞こえる声も、どこか浮ついている。
向井康二は、窓際の席でぼんやりと外を眺めていた。
(新しいクラスかあ……)
人付き合いが苦手なわけじゃない。
むしろ、明るいとか話しやすいと言われることも多い。
でも、初対面ばかりの空間は、少しだけ気疲れする。
「えー、席はこのままな」
担任の声に、康二は前を向いた。
隣の席。
そこに座っていたのは——目黒蓮だった。
黒髪、背が高くて、無駄な動きがない。
騒がしい教室の中で、彼だけが静かだった。
(……目黒くん、だよな)
名前と顔は知っている。
有名だから、というより、どこか目を引く人だったから。
目黒は、教科書を机に並べながら、ふと隣に視線を向けた。
「……よろしく」
低くて、落ち着いた声。
「あ、うん。よろしくな、目黒くん」
康二が笑うと、目黒は小さく頷いただけだった。
それ以上、会話は続かない。
(静かな人やな……)
それが最初の印象だった。
⸻
授業が始まってしばらく。
ノートを取っていると、康二のペンが床に落ちた。
「あ……」
屈むより早く、隣から手が伸びてくる。
「はい」
拾ってくれたのは、目黒だった。
「ありがとう!」
「気にしないで」
それだけのやりとり。
なのに、なぜか胸の奥に、少しだけ温かいものが残った。
(……なんやろ)
その日、康二は何度か目黒の方を見てしまった。
目黒は無口で、目立った行動はしない。
でも、困っている人には必ず手を差し伸べていた。
消しゴムを落としたクラスメイト。
プリントを忘れて焦っている人。
誰に対しても、自然に、当たり前みたいに。
(優しい人なんやな)
気づいた瞬間、康二ははっとする。
(あかんあかん、まだ1日目や)
自分に言い聞かせるように、ノートに視線を戻した。
⸻
放課後。
帰り支度をしていると、突然、雨音が窓を叩いた。
「え、雨?」
「天気予報見てなかった……」
教室がざわつく中、康二はカバンを探った。
(傘、持ってきてへん……)
そのとき。
「向井」
呼ばれて顔を上げると、目黒が立っていた。
「傘、持ってないなら……一緒に帰る?」
一瞬、言葉が出なかった。
「え、いいん?」
「家、同じ方向だろ」
どうして知っているのか、聞く間もなく。
「……ありがとう」
康二は、素直にそう言った。
並んで歩く帰り道。
傘の下は、思ったより近くて。
雨音の中、目黒の声だけが、はっきりと聞こえた。
「向井って、よく笑うよな」
「そ、そう?」
「悪い意味じゃない。……いいと思うけど 笑」
その一言が、胸に静かに落ちる。
(なんでやろ……)
ただの褒め言葉なのに。
ただの同級生なのに。
目黒の言葉は、妙に心に残った。
家に着く頃、雨は小降りになっていた。
「じゃあ、また明日」
「うん。またな、目黒くん」
別れ際、目黒は一瞬だけ迷うようにしてから、言った。
「……蓮でいいよ」
康二は、目を瞬かせる。
「じゃあ……蓮」
そう呼ぶと、目黒はほんの少しだけ、笑った。
それを見た瞬間。
康二の胸が、きゅんとした。
——この人の優しさに、
少しずつ、惹かれていく予感がした。
これまたチャッピーです!!!
少し直したいところ直してます
やっぱ王道系も最高ですわ
コメント
2件
最高ですわよ👍🏻👍🏻👍🏻👍🏻 王道系いいよねわかる