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#恋愛
#大人のロマンス
#イケメン
眩しいほどの朝日が、雨上がりの医局に差し込んでいた。
私は、鏡の前で何度もブラウスの襟を正す。
(……信じられない。私、本当に冬馬先生と……)
首筋に残る微かな熱と、全身を包むけだるさが、昨夜のことが夢ではなかったと告げている。
医局のドアを開ける手が震える。
中に入ると、そこにはすでに白衣を羽織り
いつものように冷徹な顔でカルテをチェックする冬馬先生がいた。
「……おはようございます、冬馬先生」
「……ああ。五分遅いぞ、海老名。昨日の嵐の後始末で、事務作業が山積みだ」
冷たい。
あまりにもいつも通りのドSな態度に、胸の奥がツンと痛む。
(やっぱり、昨日の夜は、熱のせいだったのかな……)
悲しさを押し殺して自分のデスクに座ろうとした、そのとき
「──海老名」
名前を呼ばれ、振り返る。
冬馬先生は、他の医師たちがまだ出勤してこないのを確認すると、無言で私のすぐそばまで歩み寄ってきた。
そして、私の耳元に顔を寄せ、周囲には聞こえないほどの低い声で囁いた。
「……昨日の続きは、今夜だ。それまでに、その泣きそうな顔をどうにかしておけ」
「っ…!せ、先生……」
「お前の主人が誰か、もう忘れたのか?」
眼鏡の奥の瞳が、悪戯っぽく、けれど狂おしいほどの独占欲を孕んで細められる。
私の心臓は、一瞬で昨夜の熱を取り戻した。
「……忘れてません」
「ならいい。……コーヒーを淹れろ。昨日の夜、散々俺を振り回した分の埋め合わせだ」
ドSな言葉とは裏腹に、彼は去り際、私の指先に一瞬だけ、自分の指を絡ませた。
それは、二人だけにしかわからない「共犯者」の合図。
嵐が去り、二人の関係は「仕事上のパートナー」という仮面を被ったまま
より深く、より甘い「秘密の支配」へと堕ちていく。
けれど、その平穏を壊す影が、すぐそこまで迫っていた。