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俺の初恋は、中学一年の春だった
相手は同じクラスの、いつも陽キャの中心にいる男友達だった。
名前は、樹くん
自分でも、自分の気持ちが気持ち悪いって思ってた。
男なのに、男に恋をするなんて
それでも、本人には言わず
胸の中でそっと、大事にしていた
吐き出してしまったら、きっと全部壊れるとわかっていたから。
ある日の放課後
教室を出ようとしていた俺の肩を、誰かがぽんと叩いた。
「なあなあ、ちょっといい?」
振り返ると、そこには樹くんがいた。
彼は少しだけ照れくさそうに笑いながら、でもどこか探るような目で言った。
「鈴木って、俺のこと好きなの?」
一瞬、頭が真っ白になった。
まさか、そんなふうに聞かれるなんて思ってなかった。
「えっ、え?な、なん、どういうこと……?」
心臓が、ぎゅっと握り潰されたみたいだった。
「わ、わかってるよ。無理だったら、今まで通り友達のまま接してくれればいいだけだし……気にしなくていいから…!」
何とか笑おうとしたけど、声が震えてるのが自分でもわかった。
だけど、彼はもう──
「いや…これ聞いて、そのまま仲良くできるわけないじゃん」
その日から、友達だった掛くんは、簡単に“他人”になった。
そりゃ、そうだ。
男友達に、そんな目で見られてたなんて知ったら、近づきたくなくなるのは当然。
きっと気持ち悪かったんだろう。
気まずくなったんだろう。
でも、だとしても
「同じ人間とつるんだ方がいいんじゃね?」
そんなふうに言われるなんて、思ってなかった。
ただ「無理」と言われるほうがマシだった。
まるで俺が〝人間〟じゃないみたいだった
〝普通〟の人と違うだけで、線引きされて、拒絶されて。
確かに、俺はこれまで女の子を好きになったことがない。
でも、それだけでこんなふうに否定されなきゃいけないなんて。
悔しくて、悲しくて、苦しかった。
掛くんの言葉で、俺の初恋は終わった。
静かに、でも確実に、心が裂けた。
ゲイであることを、拒絶されたのと同時に
〝人間として〟も拒まれた気がした。
やっぱり気持ちなんて伝えない方が良かった
そうすれば、ずっと友達でいれたんだ。
俺は深く後悔して、自責に苛まれ
誰にも嫌われないように
ちゃんとした恋をしなきゃって思った。
今度こそ、“普通の”恋をしようって一ー
思ったはずだった。
……なのに。
樹くんを吹っ切った中学二年の春
俺はまた、男に恋をしてしまった。
それも、今じゃ一番の親友一一日高 圭に。