テラーノベル
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あの鬼畜は、待ち合わせた駅前のロータリーに時間通りに来た。ヤツなりに身なりを整えたつもりなのだろうが、ドラ◯もんに酷似したダルマ体型に、ボーダー柄なシャツとはセンスを疑う。妙に似合ってはいるのだが…
「おいっ!運転手!。さっきから!ここはどこやって聞いてんねん!。会場の市民ホールはすぐソコやろっ!さっさとクルマを出さんかいっ!!」
「…うふぁあああぁむ。……ん…むにゅ?。…えええ?……何がですかぁ?」
「あ〜。まぁまぁ。ここはその市民ホールの南側にある河川敷ですねぇ。あ〜ほらぁ♪夕焼けがとても綺麗ですよぉ?徳元先生。うふふふっ♡」
「お前は黙っとらんかい!。おいっ!?お前や運転手!!。ここはどこやって聞いてんねんっ!。あんまりふざけとるとイテまうど!?コラァ!」
滔々と流れる幅広い川の河口淵、堤防の車道から死角になる河川敷に俺は車を停めた。当然として講演会は嘘っぱちだし、屋根だけが見えている市民ホールに向かう用もない。今も後部座席で怒鳴り散らしている徳元裕二の頭蓋をボコリと潰して片付けてしまうのも良いいのだが、俺の狙いは他にある。しかし喧しい。確かコイツの産まれは関西圏だ。方弁は名残か…
「あーキャンキャン煩いなぁ!。クルマの中だとアレなんで一旦降りて話しましょうか?徳元サン。それと…はい今日の報酬です。カネが欲しいんでしょう?。…残りの72万円。ちゃんとありますから、どうぞ外へ…」
「お!?おう。降りたらぁ!。それとお前、エロ女。お前は逃げんなよ?このボケ運転手と話ついたらラブホやからな?。股濡らして待っとれ!」
「はぁい♡この助手席から一歩も逃げたりしませぇん♡。うふふふっ♡」
俺の隣に座るカスミさんに向かって威嚇するブタ男。誰がどう見たってこのふたりは似合わない。所詮は弱者を虐げることで金に替えようと考える典型的な日本人の男だ。言葉の端々に汎ゆる欲望が滲み出ている。それは大手企業でも変わらない。正義など無くとも金さえ稼げれば勝者なのだ。
「ほれ!?降りたど!?。早よカネ寄越せやクソ運転手!。人が大人しゅうしとったら調子に乗りやがってぇ。サッサと渡してトットと消えや!」
やはり思っていた通りだ。このブタはカネに飢えていてそのうえ汚い。それは悪い事でもないのだが、まともに働いたことも無い奴が金に汚いのは頂けない。少しは過去を振り返ってみろよ。ただ怒鳴るだけで金が降ってくると思っているのか?。こいつは虚勢を張るばかりで中身が空っぽだ。
「はぁ。まぁ渡さない事も無いのですが、少し話しませんか?俺と。徳元裕二サン…俺ねぇ?…今、凄ぉく怒ってるんですよぉ。…東雲鈴って若い女性、勿論ご存知ですよね?。…アンタが一昨日に乱暴した、歯科助手やってる女の子ですよぉ。…すごく可愛くてねぇ?…甘えん坊で…真っすぐで…我慢強くて…笑顔が素敵で…でもどこか儚くてねぇ。…知ってますよね?」
「はぁ?。シノノメ・リンなんて女、僕は知らへんなぁ。なんやワレ?僕に因縁ふっかけるつもりか?。ほんなら僕にも考えがあるで?。……あ、佐藤さんでっか?。僕です、徳元です。……はぁ。はい。…あ、いまカネ取れそうなクソガキが目の前におるんですわ!ええ。…南側の河川敷です。あー。白いベンツが停まっとるんですぐに解りまっさ!。…へえ、ほな待ってます。へぇ!よろしゅう。………へっへへへ!クソ餓鬼ぃ、これでお前は死んだでぇ?。バリバリなスジモンの!僕の親友を呼んだからなぁ?」
堪りかねた徳元が遂に動いた。白黒チェック柄の、ジャケットの内ポケットから取り出したスマホで電話をかける。電話相手と少し話したあとには鼻息を荒げて、俺を睨みながら勝ち誇っていた。数が増えたからと言ってどうとゆうことはない。所詮は烏合の衆か害虫の集いだ。処理は容易い。
「ほ〜。バリバリなスジモンですか?。それってポケ◯ンの親戚みたいな感じなんですか?。あれもバリバリって稲妻を出すのがいますよねぇ?」
「われ…フザケとったら今ここで殺すどっ!?。舐めとんか!コラァ!」
「別に舐めませんよ汚いし。あ〜電話の相手は…佐藤麗一で、たぶん単独では来ないだろうから伊勢一輝も一緒でしょうねぇ。…佐藤は前科2犯で家庭持ち。今は反社の構成員。そして伊勢は、成人してからの逮捕歴が強制性交1件で、中学二年の頃に3件の婦女暴行事件を起こして少年院に招致されている。そして今はアンタの情報源ですね?。そして徳元裕二。アンタはもっと罪深い。高校に入ってすぐに、クラスメイトの女子を四人も強姦。その全員を秋になるまで犯し続けた。さらには頻繁にカネを強請り取っている。…そして二年になる直前に訴えられて逮捕。たしか20歳まで豚箱に入ってたんだよねぇ?。成人してからの逮捕歴は無いけど、その異常な性癖は治っていない。…お前のせいで42人もの若い女性が…今も毎日苦しんでるんだよ。お?もう来たか。良かったねぇ仲間が増えて♪」
「あっ!佐藤さーん!ココです!ここー!。…お前ぇえ。そんな昔ばなしを掘り出しとったら血ぃ見るどぉ?。そんなん『若気の至り』やっ!。もう罰もガッツリ受けとる!僕を犯罪者扱いするんも大概にしとけや!!」
徳元裕二が電話をしてから10分たらず。整備された河川敷に降りるためのスロープを、中肉中背な黒いスーツ姿の男と、かなり太った小男が駆けてくる。小男の方は小型犬の刺繍が入った真っ白なジャージを着ていた。そして何かしらの棒を手に携えている。アレで俺を殴る気らしい。…ふ。
「ん〜?。こいつか裕二?金になるって小僧は。でもお前さ?こ〜んなヒョロいガキに舐められてんの?。しかもこーんな河川敷にまで連れてこられて?。…お前さぁ?42にもなって何やってんのよぉ?。…馬鹿なの?」
「そんなぁ佐藤さん、いくらなんでも酷いですよぉ。僕だって回してるじゃないですかぁ?動画。アレでけっこう稼げてるって喜んでたクセに〜」
「あーそれだよ裕二ぃ。そろそろ新しいネタを頼むわぁ。言ってた歯科助手の女はヤッたんだろお?。その動画は撮ってないのかよ?。回せよぉ」
眼の前に立っている俺のことなど眼中に無いらしい。まるでタクシー運転手の様な姿なので、特に違和感も無いのだろう。夕方とは言えまだ日も高いし好きにさせておこう。リンの傷の消毒まであと2時間はあるし、この三人が顔を合わせるのもこれで最後だ。今生の別れくらいはさせてやる。
「佐藤のアニキ!あのベンツ、に。はぁはぁ…とんでもなく美人な外、人が乗ってやしたっ!。はぁはぁはぁ…。あ!裕二さんっ!。ちわっす!。あ、あの女の事を言ってたんですよね?。昨日の電話。…良いなぁ…ヤりたいなぁ。…裕二さんがヤッた後に…オレにも貸してくださいよねぇ?」
「そうだなぁ。どうせなら一緒にやるか?。でもオマ◯コは譲らないからな?。僕がズコズコしている間にカズキは口を使え。上下を当時になんて経験ないだろうし、クセになる程やってやろうぜ?。…でもその前にコイツだ。先ずはこいつをボコボコにイワセてから…あの女とベンツを頂く…」
男達が揃って俺を見た。真ん中の徳元は胸を張るようにして睨んでいる。三人で顔を寄せ合い、なにやらゴニョゴニョと話し合っていたのだが、ようやく纏まったみたいだ。背の高い者から順に、佐藤麗一、徳元裕二、伊勢一輝と、仲良く律儀に並んでいる全体像が滑稽すぎて笑えてきた。ぷ。
「なぁ?ヒョロいお兄ちゃんさぁ?…本物のスジ者が来たからにはタダじゃすまないの解るよなぁ?。俺達はメンツで食ってるんだよねぇ。だからその手に持ってる封筒を渡したら帰れ。な?。あの外人女とベンツで勘弁してやるからさ?。…それとも三途の川を渡ってみるか!?ああっ!?」
「…類は友を呼ぶ。か。ぷっふふふ。よく言ったもんだな。…佐藤麗一、伊勢一輝。俺はあんたらも探してたんだよ。…この二ヶ月、夜の街に顔を出さなかったよなぁ?。…消えた構成員でも探してんの?。それとも…」
俺からすれば佐藤麗一と伊勢一輝の合流は思惑通りだ。この街で暮らすようになって目の当たりにした、日本とゆう国の女性軽視。特にこの大きな街では日常的に眼にしてしまう。深夜の繁華街を百歩も歩けば性犯罪に出くわすと言っても過言ではない醜悪な街は、反社や半グレ達の稼ぎ場だ。
そして俺は、守る者としての役割さえ忘れた鬼畜な男達を炙り出しては狩っている。それももう20や30では無くなってきた。しかもその全員が殺されているとは気付かせない。なぜなら今の日本の警察組織では『死体なき殺人事件は立証しがたい』からだ。つまり…本人を示す血肉や骨片でも発見されなければ、その行方不明者が死んだとは法でも断定できない。
「そ!そうだ佐藤サン!。このガキ、俺達の過去を嗅ぎ回ったらしいんですよ!。カズキや僕が少年院にいた事まで知ってて!。…ねぇ佐藤さん、なんか不味くないですか?コイツ。…二度と偉そうな口をたたかっ!?」
「うるせえぞ?裕二ぃ〜。そーゆー事はなぁ?。本スジの俺が決めんだよぉ!?。…おいにぃちゃん。俺も暇じゃないんだよ。サッサとカネ置いて消えろや?。…あと五秒だけ待ってやる。…い〜ち。…に〜い。…さ〜ん。」
「よ〜ん。ご〜お。…はい五つですね。それで?どうするんですか?サトウさん。…あ、名前が『トシオ』じゃないのは残念だったねぇ?。もしもそうだったら事務所の人気者になれたかもなのに。残念なサトウさん♪」
凄んで見せる本スジを騙る佐藤麗一。実のところ反社の構成員とは名ばかりで、違法薬物の裏販売やアダルト動画のデータを売って暮らしている。最近では妹にキャバクラを立ち上げさせたらしいのだが、そこにも暗闇があった。上京したての女子大生を騙して妹の店で働かせて、言葉巧みに自宅に連れ出し、犯すだけ犯したら風俗に売り付けるのが佐藤の錬金術だ。
「やれ…伊勢。こんなガキ…そのバールで殴り殺していい。ちゃんと殺せたら店の女をくれてやる。それと裕二。俺の車から獲物を取ってこい… 」
「は!はいっ!。ただいまスグにっ!?。これで死んだぞ?クソガキ!」
「…お前に恨みは無いけど…オレのセックスの為に死ねっ!。おらぁ!」
佐藤麗一の一言で男達の眼の色が変わった。来た時から右手にぶら下げている、先に釘抜きのついたバールを伊勢が両手に持ち替えて振り上げる。
その向こうでは徳元が、スロープに向かって走っていた。どうやらこの二人は佐藤の犬らしい。そんな事を考えているうちに、伊勢が力任せに振り下ろしてくる。このまま避けもしなければ、俺の頭部に直撃するだろう。
『ビュンッ!。………………カン……カン……コン………ガサガサ…』
「おいおい一輝!やるじゃねえか!。一発で殺しっ!?…て…ない?」
「…さ、サトウさん。…オレの…バ…バールが……切られてます……ほら。」
「な…なんだ?このガキ。…腕でガードを?…いや、鉄製のバールを素手で止められるわけがねぇ。…何だ?…なんなんだよ!?。コイツはぁ!?」
俺の背後に飛んで行ったバールの半分。そしてそれは折れたのではなく切断されていた。飛び出さんばかりに目を見開いている伊勢と佐藤。恐らくコイツらにとっての今の俺は『謎の生物』そのものだろう。しかしタネを明かすのはもっと後でいい。先ずはこの二匹の虫を、どう始末するかだ。
「くっくっく…先ずは伊勢一輝…お前はこの街で…四人の少女をクスリ漬けにした。今でも廃人そのものだ。…お前は死んで償え。このブタ野郎…」
俺は呟くとギロリと伊勢を睨んだ。どう殺すのかは、ついさっき決めたところだ。こうゆう性欲の権化は最初から居なかったコトにするに限る。酷く恵まれた家庭環境に産まれているのにどこでそうなった?。そもそも小学校の四年生からオナニなんてするから快楽主義者になるんだ、馬鹿者!
「え?えっ!えええっ!?。なんで身体が浮くんだぁ!?。あっ!?あっ!?腹が!股が!アタマが!痛ぇええああああーーーっ!!??。たすっ!たしゅけって!しゃどお!しゃがっ!?。ぎぁあああっ!!!……ぶくれぶぅ!!いっばぁああい!よごぼぉっ!!ぎゃあ!?ぼがばっ!!」
何の前触れもなく、伊勢一輝の身体は空に浮いて、みるみる膨れ上がると断末魔とともに爆裂した。それは序盤に上がる控え目な花火のように小さく広がって…風に流される間もなく霧散する。体内に異物が入り急激に膨張するとその激痛たるや断腸の比ではないらしい。因みに処女が初体験で受ける苦痛も似かよっているそうだ。異物を体に捩じ込まれるのだから…
「……………な…なんだ?……今の。……一輝が…浮いて。……爆発……した?」
「良かったじゃないか…あんなブクブクに太り散らかしてても、最後は綺麗な紅い花火になれたんだからさ?。…た〜まや〜♪って囃してやれよ。それとも、か〜ぎや〜♪のほうか?。どちらも有名な花火屋なんだぜ?」
そりゃ青褪めるのも仕方ないよねぇ。さっきまで元気ハツラツでバールを振り回していた子豚が、フワフワ浮いてポン!って弾けたら驚くよねぇ。でも大丈夫だよぉ?けっこう面白かったから♪。でも血の一滴も肉片も、骨くずさえも残らなかったのは俺のせいじゃないからねぇ?。俺は『爆ぜろ』って思っただけで、お前たちが耐性を持たないから悪いんだぞぉ?
「あ。佐藤さん!取ってきましたコレ!。こんな良い物を持ってた…あれ?カズキは?。カズキはどこに行ったんですか?。小便ですか?。アイツめ!佐藤さんを一人にして用を足しに行くなんて!ぶん殴ってやる!」
「…違うんだ裕二。か…一輝はもういねぇ。死んだんだよ、ついさっき。い、いきなり空に浮いてからこう…身体のあちこちがぼこぼこって膨らみ始めてよぉ。……ポンって花火になっちまった。…跡形も…残さずに…」
「な…なに言ってるんですか?佐藤さん。…人間が花火になって…消えちゃうなんて…あるわけ…が…。ほ…ほんとなんですか?…本当にカズキは…」
「どうやったのかは解らねえ。…でも間違いなくカズキは弾けて消えた。骨の欠片も…残っちゃいないんだよ!。…おっ!俺は降りるぞ?裕二。あとはテメェ1人でやれ。俺は…帰る。…にっ!兄さん?俺は関係ないからな?俺には家で待ってる娘達が三人もいるんだよ。な?見逃してくれ。」
さっきまで俺に睨みを効かせて、酷く威張り腐っていた佐藤麗一が後ずさり始めた。両手を開いて宥めるようにしながら、強張った顔にも脂汗を流している。そろそろ夕日がビルの谷間に消えてゆきそうだ。リンの事を考えたら少し急ぐのもありだろう。…佐藤麗一も…生かしてはおけないし…
『ポシュ!!。』
「ひっぎゃあああーっ!?。手っ!?右手がっ!?吹き飛んだっ!?。いっ!いっ!いっ!痛ええええっ!?痛てえよぉおおっ!母ちゃーん!!」
「佐藤麗一さん。あんた高2のころにさ?中学2年な乙女のマンマンに、指を4本も突っ込んだよな?。痛がろうが、出血しようが、お構いなしにかき回して、大怪我させたんだよなぁ?。そんな悪い手は無い方がいいんだよ。…それとチンチンも細かい輪切りにしてやるよ。亀頭を甘噛みされるのが大好きなんだろ?。先っぽから斬ってやるからせいぜい楽しめ♪」
「や!やめっ!?。ひっ!?ぐっ!?やっ!?がっ!?。やっ!?ヤメて!?。ひっ!?ぎっ!?がっ!?。あがぁ…あががが…あぐうっ…ぐ…」
右手の痛みも忘れ、両手で股間を押さえて転げ回る佐藤。艶の浮いていた上等そうなスーツも今では見る影もない。因みに俺からどこかを切断されても出血多量では死ねない。こんな非道な男に、そんな楽な死に方などさせてたまるか。無理矢理に犯され、虐げられた女性の屈辱を、風俗に沈められた女達の無念を、食い物にされている彼女達の苦痛を教えてやるっ!
「さっ!?佐藤さんっ!?。佐藤さ…ん?。…こっこの化物がぁ!おどれいわしたるわっ!。……へへへ。こっちにゃダンビラあるんじゃ。われなんぞたたっ斬ってやるっ!。さぁ行くぞ糞餓鬼!ナンボのもんじゃい!」
「おい徳元。さっきから聞いていると、標準語と播州弁と関西弁と広島弁がゴチャゴチャになってるんだけど?。任侠映画にでも憧れたクチか?」
「やかましいわいっ!おんどれ殺したるっ!。うりゃあっ!?。…へ?。ぼ、僕のダンビラが…日本刀が…消えた?。…あれ?柄は…あるのに…?」
威勢よく吠えた徳元が黒い鞘から引き抜いた銀色な刀剣は、まだ差している夕日を弾いてひどく美しかった。それを無造作に上段に掲げた太った男は、いざ振り下ろそうとしてからその異変に気づく。頼みの綱である白刃は跡形もなく溶解していた。みるみる青褪める徳元裕二。ようやく何かを悟ったのか、滝のような脂汗を顔面に流し始める。眼が玉になっていた。
「状況が、やっと理解できたようだなぁ?徳元裕二。お前は悪魔を怒らせたんだよ。お前みたいな男がいるから…俺みたいな雑種が産まれてくる。この場で殺してもいいんだが…俺に協力しろ。そしたら死なずに済むかもだぞ?。おい佐藤。まだ帰っていいとは言ってない。逃げると死ぬぞ?」
「おっ!俺は関係ない!もう勘弁してくれっ!、た!頼む!見のぎゃしてぇえええくえっ!?。はっ!?はぁあああ!?。いっ!イヤだあ!?。ぐっ!ぐるじぃいいいっ!はっ!はら!腹がはりさけぶぅううううっ!?。だっ!だぢげでえーっ!じっじぬっ!死ぬっでぶぁああ!!。だっす!。おがーぢゃんっ!だだ!だずがばっ!!おがっちゃーあがぶばっ!!?」
「………………え?。……さ…さとう……さん?。……麗一…さん?……え?」
地べたを這ってでも逃げようとする佐藤の背中を俺は睨んだ。その直後に男の身体はふわりと宙に浮く。そしてボコボコとスーツのあちこちが膨らみ始めた。そうなってもジタバタと藻掻いて、なんとか逃げ出そうとする姿が、義理や筋道を重んじる極道者とは程遠く感じた。弟分を置いてでも逃げ出したい奴の、一体どこに意地や任侠があると言うのだろう。虫め…
「た〜まや〜♪。か〜ぎや〜♪。ん〜。やっぱり俺的には玉屋だな。…さて残りはお前だけだよ徳元裕二サン。それで?どうゆうふうに殺されたいか聞いてやるよ。お勧めは…全関節から引き千切り。とか、股間から細切れになる。とか、皮膚を一層ずつ剥がしていく。とかかなぁ?。何にしてもお前は…お前だけは楽には死なせない。お前は…41名もの純粋無垢な少女たちを…身勝手な性欲と懐を満たす為に傷物にしたんだ。絶対殺す…」
「まっ!待ってください!。ぼ!僕はまだ死にたくありませんっ!。それに!僕が犯した女たちの中には!快楽に喘ぎ狂っていた人もいました!。そ!そうなんですっ!僕は喜ばせてあげたくて!襲っていたんですっ!」
「………性交ってのは…お互いの合意が基本なんだよ。徳元裕二…お前がどう釈明しようと罪は変わらない。…しかし…俺と三つだけ約束するなら、命は助けてやる。…生き延びるのかはお前次第だ。どうする?徳元裕二。」
「しっ!しますっ!。約束いたしま!いやっ!させてくださいっ!。全身全霊を賭して!貴方様との約束を必ず守りますっ!。聞かせて下さい!」
「よぉし、いいだろう。…取り敢えず俺の車に乗れ。話しは道すがら話そう。…本当に生き延びたいなら…俺との約束を破るなよ?。くふふふ…。(対峙する相手によって…態度も口調も主張さえもコロコロ変える。こいつ…典型的な現代の日本人そのものだな。国の繁栄や出来もしない約束を騙って、金と票を集める政治屋と同じだよ。まぁ…どうでもいいけど…)」
どうやら鬼畜徳元も観念したらしい。身体の再生もできない人間なのだから、殴られたり蹴られたりする事も、身体中を切り刻まれることも、殺されることも、本気で怖いのだろう。借りてきた猫のようにトボトボと車に向かう奴の背中には、情けなさだけが滲んでいた。笑顔のカスミさんが助手席から手を振っている。もうすぐ日が暮れる。さっさと終わらせよう…
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