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「エトワール様寝不足?」

「んん?違う、ちょっと眠いだけ」




それを寝不足っていうのよ。と、リュシオルにため息をつかれつつ、私は身体を起こす。あれから、少しだけラヴァインと談笑して、それから巡回に来たメイドの気配に気づいてラヴァインは自分の部屋に戻ってしまった。それはもう、脱兎のごとく、閃光のごとく。

ラヴァインの身体能力の高さを再確認して、此奴を敵に回したくないなあと思うと同時に、記憶を取り戻すなら、聖女殿の中じゃなくて、別の場所が良いと思った。今の時点で、かなりラヴァインに聖女殿の構造を把握されちゃったわけだし、メイドや騎士の人数や行動時間も把握されている。


敵に戻ったときのことを前提で考えるのは、防衛本能による物なので許して欲しい。だって、元々敵だったし、ラヴァインの性格を考えると、どうも気が抜けない。

でも、今私が関わっているラヴァインは、子供のようにイタズラ好きみたいな感じだけど、手のかかる弟とも捕らえることが出来るので、まだ平和である。関わりやすいし、表情が読み取りやすい。だから、以前の彼が如何に自分を取り繕って、気を張っていたのかが分かった。何故、気を張っていたのかは不明であるが、何となく、アルベドに馬鹿にされないように、認めて欲しかったからなんじゃ無いかなあなんて思った。当のアルベドは何処にいるのか分からないんだけど。




「でも、昨日よりもスッキリしてない?」

「ああ、うん。ちょっとラヴァインと話してて……前に、リュシオルが行ってくれたとおり、エトワールストーリーって、攻略キャラの過去とか、背負っているものにぶつかっていく物語だって事思い出して、自分でこういうのはなんだかなあ……と思ってるんだけど、本編が終わって、番外編とかに突入しているなら、本編で攻略できずにいたラヴァインの攻略を始めても良いかなあなんて思って」

「確かに一理あるわね。エトワール様が心を溶かしたからこそ、殿下も、ブライト様も、あの双子も……皆救われたんじゃないかしら」




と、リュシオルは微笑む。


救えたのかどうかはさておいて、変わったとは思っているから、何かしら影響を与えられたんじゃないかなとは思っている。影響……きっかけを与えたに過ぎないかもだけど。それが、大きな功績というのなら、間違いではない。




「よおし!リュシオルに応援エール貰ったから、私、この先も頑張る!」

「でも、自分で問題を増やしちゃったわね」

「あ……そっか」




リュシオルにいわれて、自分が抱えている問題を増やしてしまったことに気がついた。確かに、アルベドの事とか、グランツの事とか、元々ラヴァインに対しては記憶を取り戻す手伝いだけだったのが、彼の人格形成云々のことにも手を出そうとしている自分がいたのだ。いやはや、恐ろしい話ではあるが。

それでも、自分でやるって決めたわけだから、このままやり遂げたいというのはあるわけで。




「大丈夫」

「震えてるわよ。そんな、エトワール様こそゆっくりやっていけば良いのよ。まだ、若いんだし」

「ででで、でも、そのあ、あの、えっと、だって、若いうちじゃないと、こ、子供とか……ああ、えっと、あのね。リースとそういう話がって、ああ!えっと、だから、皇族との……跡継ぎ問題とか」




と、若いんだし。から、どうしてそんな話になるのかと聞かれたら、私が気にしているからだとしか答えられないようなことを言ってしまった。


いきなり私がこんな風に虚取ってしまったので、リュシオルも目を丸くして、私をただ見詰めているだけだった。いきなりどうした、壊れたか、見たいな目を向けられてしまったので、少し恥ずかしくはある。




「確かにその問題はあるけれど、殿下はそんなに焦っていないんじゃない?」

「でも、こういうのって若いうちにって言われるじゃん……その、前世とは世界が違うわけだし」




それもそうね。と、どっちなんだよ、と言いたくもなったが、リュシオルはまあ、頑張ってと、私の肩を叩いた。こればかりは、リュシオルに相談しても、私とリースの問題なので、どうにも。という感じなのだ。




(リースはどう思っているんだろう……)




そういういえば、忙しくて、正式に結婚発表していなかったし、結婚式も挙げるといってまだ先みたいだし。それなのに、子供の話とは話が早すぎる気もした。徐々にやっていけば良いのだろうが、災厄から早一週間経っているということで、時間の進みに恐怖を感じてしまっているのだ。このままだったら、すぐに年いっておばあちゃんになってしまうと。

一人焦っていても、どうにもならず恋人であるリースと話さないといけないのだが、彼も彼で忙しくしているようで顔を見ることすら出来ていない。此の世界に電話という物がないのは不便である。いっそのこと、電話を開発してしまおうかと思ったが、電話を作る為の素材というか、技術が此の世界にあるのか不明だ。




「はあ……」

「また、溜息」

「溜息カウントでもしてるの?やめてよ。生理的な、溜息」

「生理的溜息ってどんなのよ」




と、リュシオルに突っ込まれる。


言葉のままの意味である。それ以上でもそれ以下でもない。

そういえば、リュシオルは肩をすくめた。




「疲れているのは分かるし、疲れがたまるのは分かるわ。まだ災厄が過ぎて、一週間程度だもの。ストーリーと違って話し合いでどうにかなったのはよかったけれど、本来だったら、身体が耐えきれないぐらいの魔力を放出するそうよ。封印には」

「そうだったの。じゃあ、ラッキー……っていう言葉合わないかもだけど、私は、楽だったのかも知れない」




本来であれば、聖女は混沌を封印した後、消えてしまう見たいな物だから、私もトワライトも消えずにすんだのは奇跡なのだろう。

ラッキーという言葉を使っていないのは、混沌がどんな思いで産まれてきて、どんな思いで復活したか知っていたから。だから、ラッキーという言葉が不釣り合い、似合わなすぎて、私は使いたくなかった。

今頃どうしているのだろうって、時々考えてしまう。




(ああ、そういえば、ブライトの所行くんだった。忘れてた)




ファウダーのあのアメジストの瞳を見て、ブライトを思い出し、ブライトならラヴァインのことどうにかしてくれるんじゃ無いかと思ったのだ。弟の面倒を見るの得意そうだ死というのもあったけれど、ブライトも、信頼しているうちの一人だから。




「そういえば、手紙送ってくれた?」

「ああ、ブライト様への?送ったわよ。今日、伺う予定だったわよね」

「そうそう。あーちょっと面倒くさいけど、準備しなきゃ」

「面倒くさいって、準備は、私の仕事なんですけどー」

「メイドだから、仕方ないじゃん」

「給料あげてよね?」

「それって、私の仕事だっけ?」




何て、会話をしながら、私はリュシオルにドレスを着せて貰い、髪の毛をセットして貰った。リュシオルの仕事は早いし、他のメイドに任せるよりも、リュシオルにやって貰った方が何十杯も早くて効率が良いのだ。

本当にそう言うところ、尊敬している。私じゃ出来ないから。




「はい、出来た。今日も可愛いじゃない」




そう言って、リュシオルは鏡を見せてくれる。珍しく、ポニーテールにしてあって、誰かさんを彷彿とさせる。




(わざとやっているんじゃないだろうけど……)



でも、ポニーテールとは、エトワールの姿で中々斬新である。あの銀色の髪がポニーテールにされているのだ。ふわふわで、馬の尻尾だと、名前の通りであると、一人テンションが上がっていた。もうこの長さには慣れたがくくってみると、かなり楽だった。




「ありがとう、リュシオル」

「いいのよ。エトワール様の髪って、意地利害があって楽しいし」




と、リュシオルはウィンクする。


それから、もう少しメイクやら何やらを施して貰って、玄関に降りた。すると、朝食を済ませ、身支度をすませたであろうラヴァインがこちらに気づいて走ってきた。何だか、仔いぬみたいだと……いいや、背の高さ的に仔いぬじゃなくて、大型犬なんだが。




「エトワール、珍しいね。その髪型」

「珍しいって、アンタとはまだ数回しか顔を合わせてないじゃない」

「いや、髪を下ろしているイメージだったから、へえ……うん、似合ってる」

「そ、そう?」




純粋に誉められて照れくさかった。後ろで、リュシオルが、私が手がけましたと胸をはっているのが面白かった。

それでも、ラヴァインが私のポニーテールに反応したのは、いつもと違うからっていう理由だけじゃ無い気がして、ちょっと気になって聞いてみたのだ。




「ねえ、何か思い出した?」

「何を?」

「……アンタの、兄もさ、ポニーテールなのよ。アンタよりも綺麗な、長い紅蓮の髪を一つに結んでるの」

「そう」




返ってきたのは、興味なさげな声だったが、彼はその後何かを考えるような素振りを見せた。少しずつ、そうやって思い出していけば良いのよ、と私は馬車に乗り込んで、ブライトに手紙では伝えたが、いざあってどうラヴァインのことを伝えようかと考えながら、窓の外を眺めては、頭の片隅でちらついた紅蓮を追っていた。


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