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お気に入りの部屋での週末はあっという間に終わり、やむを得ず電車にぎゅうぎゅう詰めになって会社に向かう。


今日は特別に憂鬱な月曜日だ。


雪緒が務めるのはSEKという、日本有数のシステムインテグレータ企業だ。

傘下に多数のグループ企業を持つ。


のけ反らないとてっぺんまで見えないくらいのピカピカのビルに、陰鬱な顔で向かう。ぞろぞろと大勢が無言で入っていく様は、まるで働き蟻が蟻塚に吸い込まれるようだと思う。


何度かドラマの撮影にも使われたロビーの奥、ゲートに社員証をかざして通過する。豪華だろうがなんだろうが、毎日見ていればそれはもう日常に落とし込まれる。


20階の自分の所属部署に到着し、専用ロッカーからノートパソコンや業務で使う資料を取り出す。


フリーアドレス制で、固定のデスクでない。ちらほら埋まっている座席をざっと見て、一番端の、目につきにくい席を選んだ。


通りがかりの社員に挨拶をしつつ、席についてパソコンを立ち上げる。

メールを確認し、業務の情報が集まるグループウェアのメッセージを確認し、仕掛中だったドキュメントを開く。


そちらに集中しかけたとき、隣の席に座った人がいた。ちらりと確認する――高見だ。


引きつる頬でどうにか笑い、


「おはようございます……」

「おはよう。先週はどーも」


両手を組み合わせて顎にあて、にこやかに言う。

とても、「散々金を使わせ、わざわざ予約した高級ホテルの部屋に入る直前で、別れたはずの旦那と姿を消した」相手に対する表情には見えない。ある意味、さすがだ。


「あの、先日は大変失礼を……」

「えっ? サーバに繋がらない? おっかしいな、ちょっと直接サーバのコンソール見てみよっか。一緒に来て」


雪緒の言葉を遮って高見が言い、立ち上がる。

ここは、従うほかなかった。

雪緒も立ち上がり、先になって歩く高見の後を追う。


長い通路の途中、壁のセキュリティーパネルに高見が社員証をかざすと、閉ざされたドアが解錠された。


サーバルームはセキュリティー厳守のため、限られた社員しか入室出来ない。


そして、外部の人間の目は遮断され、常に一定の温度に調整され、中の音も外に漏れにくく――こんな部屋を高見の自由にさせたらダメだろうと常々思っている。



好きだったのはきみじゃない

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