テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
街並みの広場が、いつも以上に賑わっていた。太鼓の音、手拍子、笑い声――まるでお祭りのようだ。
「……なに、あれ?」
人だかりの中心で、移動式のショーが始まっていた。
軽快なピアノの旋律。
鍵盤を叩く背の高い男性は、楽しそうに観客を煽る。
「さあさあ!笑う準備はいいですかー!」
ダイスケの指が跳ねるたび、音が踊る。
その隣では、可愛らしい女性がくるくると動きながら、
パントマイムと歌で観客の視線をさらっていた。
「はいっ!ここ、笑うところですよ〜!」
ヒナの一挙一動に、子どもも大人も大爆笑。
レオニ、モモジャン、ビビバス、そしてMachico――
声優たち13人は、完全に釘付けになっていた。
声優たち13人(心の声)
(……え?)
(……今のピアノ……)
(……あれ……)
(廣瀬大介さんと、木野日菜ちゃん!?じゃん!?)
ショーは最高潮のまま幕を閉じる。
ダイスケ
「今日も観ていただき、誠にありがとうございました!!」
ヒナ
「また来週も、楽しみにしていてくださいね〜!」
拍手喝采。
二人は深くお辞儀をし、手早く片付けを始める。
その様子を見ていた瑠璃子は、意を決して一歩前に出た。
「……あの!」
ヒナが振り返る。
「先ほどのショー、とても良かったです!」
「ありがとうございます!」
にこっと笑うヒナ。
「ところで……あなた方は?」
その一言をきっかけに、自然と輪ができる。
瑠璃子を先頭に、次々と自己紹介が始まった。
「私たちは、旅をしていて……」
「声を使う仕事をしていた仲間で……」
ダイスケは腕を組み、興味深そうに頷く。
「へえ……声で生きてきた人たち、か」
ヒナも目を輝かせた。
「なんだか楽しそうですね!」
日が傾き、話は尽きないまま夜になる。
「よかったら……」
ダイスケが言う。
「今日は、うちに泊まっていきませんか?」
「宿より、広いですし」
ヒナ
「お兄ちゃん、勝手に決めてる〜」
そう言いながらも、どこか嬉しそうだ。
こうして一行は、
ダイスケとヒナの家へ向かうことになった。
異世界では――
ダイスケが兄、ヒナが妹。
笑い声の絶えない、少し不思議な兄妹。
この出会いが、
やがて“ワンダーランズ×ショータイム”という
新たな物語の歯車を回し始めることを、
まだ誰も知らなかった。
ダイスケとヒナの家は、外の喧騒が嘘のように静かだった。
広い居間にはピアノが置かれ、壁には小道具や衣装が無造作に掛けられている。
「今日は本当に楽しかったですね」
瑠璃子がそう言った、その瞬間だった。
――ぬるり。
ダイスケの背後で、空気が歪む。
黒く、粘つく影が、ゆっくりと彼の身体に絡みついた。
「……え?」
ダイスケの動きが止まる。
「……兄さん?」
ヒナが呼びかけるが、返事がない。
影は、スライムのように形を変えながら、ダイスケの胸元へと食い込んでいく。
「……声……奪う……」
低く、不快な囁き。
「……来た!」
Machicoが叫ぶ。
「声を奪う魔物……!」
ダイスケは苦しそうに頭を押さえる。
「……やめろ……音が……消える……」
「お兄ちゃん!!」
ヒナが駆け寄ろうとした瞬間――
「下がって!」
瑠璃子が前に出た。
勇者のランクカードが、淡く光る。
「あなたの声は……こんなところで消えない!」
黒いスライム状の魔物が、ダイスケから剥がれ、瑠璃子へと襲いかかる。
「……っ!」
瑠璃子は一歩踏み込み、叫んだ。
「私たちは……声で生きてきたんだ!!」
剣を振るう。
声と想いを乗せた一撃。
「――戻れ!!」
魔物は悲鳴を上げ、光に包まれて弾け飛んだ。
静寂。
ダイスケは、その場に崩れ落ちる。
「……兄さん!」
ヒナが抱きつく。
「……大丈夫……?」
しばらくして、ダイスケはゆっくりと顔を上げた。
「……ああ……」
そして、目を見開く。
「……ステージ……ピアノ……マイク……」
ヒナも、はっと息を呑む。
「……私……演じて……歌って……」
二人の目に、はっきりとした光が戻る。
ダイスケ
「……俺……声優だった……」
ヒナ
「……私も……!」
瑠璃子たちは、静かに頷いた。
「おかえり」
ヒナは涙ぐみながら笑う。
「……だから、あんなにショーが楽しかったんだね」
ダイスケは立ち上がり、深く頭を下げた。
「ありがとう……助けてくれて」
「いいえ」
瑠璃子は、まっすぐ答える。
「仲間だから」
こうして――
ハチャメチャなショーの裏で、二つの“声”が闇から解放された。
だが同時に、確かなことが一つ。
声を奪う魔物は、
すでに彼らのすぐそばまで来ている――。
笑いと光の裏に潜む“戦い”を、はっきりと刻み込んだ。
キャラクター紹介
― ハチャメチャ・ショータイムの兄妹 ―
⸻
■ 廣瀬大介
職業(現実世界): 声優
異世界での立場: 兄
異世界での職業: ピアニスト/移動ショーの演者
街を巡る移動ショーでピアノを担当する青年。
異世界ではヒナの兄として暮らしており、
明るく人を楽しませる一方で、妹思いで責任感が強い。
声を奪う魔物に取り憑かれたことで一時は力を失いかけるが、
野口瑠璃子に救われたことで、
自分が声で表現する仕事――声優だったことを思い出す。
音楽と声を組み合わせたパフォーマンスを得意とし、
戦闘時にはリズムで仲間の動きを強化するサポート役も担う。
⸻
■ 木野日菜
職業(現実世界): 声優
異世界での立場: 妹
異世界での職業: ショーパフォーマー/ムードメーカー
兄・ダイスケと共にショーを行う、元気で可愛らしい少女。
歌、動き、表情すべてで観客を笑顔にする天性の才能を持つ。
当初は自分が声優だったことを忘れていたが、
兄を守ろうとする強い想いをきっかけに記憶を取り戻す。
明るさと無邪気さの裏に、
仲間や家族を想うまっすぐな心を秘めており、
パーティ全体の雰囲気を一気に明るくする存在。
コメント
2件