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「相談してくれて嬉しいよ。またゆっくり聞くから!」
ポンポンと肩を叩いて、自席へ戻って行く遥さん。
やっぱり、頼もしいな。
それから遥さんとゆっくり話している時間がなかった。
仕事が忙しいため、お昼もバラバラ。
遥さんも外出や研修などが重なって、帰宅時すら一緒にならなかった。
なんで今週はこんなに忙しいんだろう。
でも木曜日が祝日だからお休みになるし、頑張らなきゃ。
月曜日・火曜日と働き、今日は水曜日。
明日は休みだ。
お昼時間に携帯を見ると
<今日、遅くなる。帰れないかもしれない>
優人から連絡が来ていた。
やったぁと心の中で歓声をあげる。夕ご飯、作らなくてもいい。
あっ、明日休みなんだから、STARに行って椿さんに会いたい。
そんな欲求まで出てきてしまった。
思いきって遥さんにLIEE(無料通話・メールアプリ)でメッセージを送る。
<今日の夜、STARに付き合ってもらえませんか?>
休憩時、携帯を見ると外出している遥さんから返信が来ていた。
<OK!椿に連絡しとくね!>
よしっ!心の中でガッツポーズを取った。
それにしても遥さんって、椿さんの連絡先知ってるんだ、羨ましい。
私も仲良くなれるように頑張らないと……。
なんだかんだで無事に仕事が終わり、駅で遥さんと待ち合わせをしていた。
「お疲れー」
「あっ、遥さん!お疲れ様です」
手を振りながらこちらに向かって歩いて来る。
「桜から誘ってくれるなんて嬉しい。珍しいね。今日は相談聞くからね」
あっ、ちゃんと覚えていてくれたんだ。
「はい、よろしくお願いします」
二人で地下の階段を降りて、BAR「STAR」の扉を開ける。
「いらっしゃーい!あっ、遥ちゃん、桜ちゃん!よく来てくれたわね!」
蘭子ママさんが声をかけてくれる。
今日も着物を着ているけど、やっぱり貫禄がすごい。
「ごめんなさいね。今日ね、予約が入ってて。カウンターでもいいかしら?」
「はいっ!もちろんです」
明日は祝日だし、みんな息抜きに通う人も多いんだろうな……。
そう思いながらカウンターへ。
すると――。
「こんばんは。上着、お預かりしますね?」
この声は――?
「椿さんっ!」
はぁぁぁっと顔を抑えて感動してしまう。
「あら?この前より元気そうで良かった。私に懐いてくれたの?」
よしよしと頭を撫でられる。
うはぁぁぁ、幸せ。
私が感激していると
「椿、あんた本当に桜に触っても大丈夫なのね?」
冷たい視線で遥さんがこちらを見ている。
「ええ。平気。蕁麻疹は起きそうもないわ。不思議ねー。よしよしっ」
恥ずかしすぎて椿さんの顔を見ることができないが、椿さんって身長高いんだ。百七十五センチ以上はありそう。
遥さんと二人でカウンターに座る。
前には、蘭子ママさんと椿さん、他のキャストさんもたまに来てお話をしてくれる。
「私、ビールで!桜は?」
「あっ、私もビールで!」
たぶん優人は今日も帰ってこない。
少しくらい酔って帰っても大丈夫だろう。
「珍しいね。桜がカクテル以外飲むなんて」
大丈夫?と遥さんは心配をしてくれているが
「大丈夫です。一杯くらいは。今日、たぶん彼氏は帰って来ないので」
「彼氏がいると飲んじゃいけないの?」
はい、ビールと蘭子ママさんに聞かれた。
「えっと……。私の彼氏、亭主関白っていうか、それが行き過ぎているっていうか、結構私には厳しくて。飲み会すらあまりよく思ってないみたいで。飲んで帰ると怒られちゃうっていうか……」
なんて説明すればいいのだろう。
「だって、彼氏だって飲み会はあるわけでしょ?桜ちゃんにだけ怒るの?」
「ええ、まぁ。はい」
飲み会どころか、自分が帰った時に家に居ないとすごく怒られる。
夕ご飯が出来ていない、お風呂の掃除をしていない、ベッドが整えられていない、そんな理由で私は今まで――。
「まぁ、自分勝手な彼氏ね」
蘭子ママさんがフンっと鼻を鳴らした。
「桜、聞くの遅くなっちゃったけど、相談ってなに?」
ビール片手だが、遥さんが心配そうな顔をしている。
「えっと、実は、彼氏が浮気をしているんじゃないかって思うことがあって……」
「えっ!?」
その場にいた、遥さん、椿さん、蘭子ママさんが言葉に詰まっている。
「どうしてそう思ったの?」
椿さんから聞かれて、この前の様子を話した。
すると
「ああこれ、完全に黒ね!女と男の勘がそう言っているわ!」
蘭子ママさんが一言。
両方の勘が使えるってすごいなと思ったが、やっぱりそうなのかな。