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「別れなさい」と遥さんが一言。
「うーん。他に怪しい行動とかはないの?」
一人冷静な椿さんにそう問われ
「そうですね。携帯は常に必ず持ってます。お風呂入る時とかも。当たり前ですけど、ロックがかかってます。後は、お弁当を持って行ってくれなくなったり。そういえば、休日も接待とか言って出かけることが多くなった気が……」
あぁ、と三人ともため息をつき「アウトね!」蘭子ママさんがみんなの意見をまとめてくれた。
やっぱり浮気してるのかな。
どうしてだろう、優人が浮気をしているって考えると悲しいって気持ちはあるけど、なんだかホッとする。
「完全に浮気してたらどうするの?桜は怒るの?更生させる?それとも別れるの?」
私が彼を更生なんてできるわけがない。
一方的に逆ギレをされて終わりになる気がする。
言葉で畳みかけられて、そして――。
「彼氏が浮気してるかもって思った時、不思議とすごく辛いって感情が生まれなかったんです。もし私より浮気相手の方を選ぶと言うのなら、私は引きます」
なんだろう、もしかしたら解放されるかもしれないって思ってしまった。
「意外とあっさりしているのね」と蘭子ママさん。
「未練とか……ないの?別れたくないっていう気持ちも」
椿さんに聞かれた。
「正直ないです。どうしてですかね?」
一通り話を聞いていた遥さんが
「いいよ、今日は飲もう!嫌なこと忘れてさ!」
グビグビとビールを飲み干す遥さんに
「桜ちゃんがあんたみたいになれるわけないじゃない。でも今日はゆっくりしていって。愚痴なら聞くから。少しは頼ってね?」
椿さんの優しい言葉に、急に涙が零れた。
「はいっ、私、椿さんみたいに綺麗になって見返してやります!」
一気にビールを飲み干した。
「無理しなくていいのに。ほら。涙を拭いて?今日、それ貸してあげるから」
ハンカチを渡された。
「えっ、申し訳ないです。こんなっ」
断りながらも涙が止まらない私の目元に優しくハンカチをあててくれる椿さん。
「ありがとうございます」
素直に受け取って、顔を押さえる。
フフっと彼女(彼)が笑ったのがわかった。
遥さんもそんな私を優しく見守ってくれていた。
一時間後――。
「私、椿さんのこと大好きぃぃ!」
「あーあ。桜、潰れちゃったじゃない!?こんなになるまで飲ませて」
椿さんの手を握って離さない私を見て、遥さんがため息をつく。
「いいじゃない。たまには?」
嫌な顔せず、手を繋いでくれていた。
「あっ、ちょっと、ごめん。旦那から電話。外行ってくる」
遥さんが外へ出て行った。
「あらあら。桜ちゃん、私は嬉しいんだけど、大丈夫?一人で帰れる?」
「はい、帰れます!私、椿さんのワンちゃん(犬)になりたいです!」
それを聞いてアハハハと蘭子ママが豪快に笑っていた。
遥さんが慌てて戻って来るのが見えた。
「ごめん。桜、子どもが熱出したって連絡が来て。もう帰るね!一人で帰れそう?」
子どもさんが熱?大変だ。
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、またね!ごめんね!」
足早に帰って行く遥さん、やっぱり家庭を持ってるママさんは大変だな。
私もそろそろ帰ろうかな。
携帯の時計を見た。
優人、帰って来ないって言ったけど、もしものことがあったらまずい。
そう考えたら、一気に酔いも醒めた。
「私も帰ります。今日も楽しかったです。相談聞いてくれてありがとうございました!」
お会計は?と椿さんに尋ねると
「あぁ、さっきね、遥さんが払ってくれたから大丈夫よ。気にしないで?」
えっ、また?今度ちゃんと渡さなくちゃ。
「気を付けてね。外、寒いから」
「はい、また来ます!ありがとうございました」
蘭子ママさんと椿さんに手を振り、お店を後にした。
椿さん、今日も素敵だったな……。
そう思いながら帰宅をする。
あっ、ハンカチ借りたままだ。今度返しに行こう。
また会える口実が出来たかと思うと嬉しくなり、口元も緩む。
自然と笑ってしまった。
しかし自分のアパートを見ると、一気に血の気が引いた。
アパートは二階建て。そんなに新しくもない。
部屋は二階の一番奥の角部屋だった。電気が点いている。
まさか……。
優人が帰って来てる?
ヤバいと思い急いでカギを開け、部屋へ入る。
玄関を見ると、優人の靴があった。
リビングへ向かうと彼がソファーへ座っていた。
「ただいまっ、ごめん。今日、帰りが遅いと思って……。夕ご飯まだだよね?今から作るから!」
上着を脱ぎ、カバンを置き、冷蔵庫を開けようとした。
が――。
「お前、こんな時間まで何してたんだよ?」
後ろに優人が立っていた。表情は険しい。