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夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
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第45話、読み終わりました…! 向井くんと久尾雨くんの再会シーン、めちゃくちゃ胸にきたよ。「許してへんけど話したい」って、その複雑さがすごく人間らしくて、切なくて温かかった。 あと、謎の少年・空染の登場で一気に不気味な空気に…!芙月さんの余裕の笑顔の裏にある強さもカッコよかったです。続きが気になりすぎる…!
向井は1人、とある場所へ向かっていた。
少し、緊張した面持ちで。
とある場所というのは、小さなカフェだ。
そこに会う約束をしている相手がいる。
カフェの扉を開けると、彼はもう来ていたようだ。
向井は、大きく深呼吸をする。
そして、名前を呼んだ。
「久尾雨くん。」
久尾雨は、ゆっくりと振り返る。
「……こーじ…ホンマに、来てくれたん…」
そして、驚いたように目を見開く。
会おう、と連絡をしたのは向井の方からだった。
颯馬から、久尾雨の伝言を受け取ったあの日から、向井は久尾雨と話がしたかったのだ。
向井は、久尾雨の座る席に相席する。
真っ直ぐに、久尾雨の瞳を見つめる。
「久尾雨くん…久しぶりやね。」
まずは、挨拶から。
「急に呼び出したのに、来てくれてありがとうな。」
そして、感謝を伝える。
「…こーじは、俺のこと許したん…?」
柔らかな向井の雰囲気に、久尾雨は尋ねる。
久尾雨は、向井に許されないと思っていた。
あれだけのことをしたのだ。
許されることではない。
例え、優しい向井であっても到底許されることではない。
それを承知の上で伝言を書いていた。
話したいと願ったが、本当に話せるとは思っていなかった。
それなのに、向井は目の前でいつも通りに話している。
「………許してへんよ。」
向井の凛とした声が響く。
その言葉に、久尾雨は顔を背ける。
当たり前だ。
覚悟していたことだ。
……それなのに、やはりショックを受けてしまう。
「でもな、久尾雨くん…」
向井の言葉は、続いている。
久尾雨は、顔を上げる。
向井は、柔らかく微笑んでいた。
「許してへんから会わんってはならんやん。少なくとも、俺は久尾雨くんと話しかった。」
「……意味、わからん…許してへんのやったら、俺のこと突き放してくれや。」
「そやね…自分でもわかっとらんのよ。久尾雨くんのこと許してへんのに、それでも話したいって思ってまうんよ。なんでやろね?」
向井も、その理由にはわかっていないようで、眉を下げて笑っている。
「………こーじは、優しいんやね。ホンマに優しすぎる…こんな俺と話したい思うなんてなぁ……心配やね…」
久尾雨も、情けなく笑う。
お互い、眉を下げて笑い合う。
向井は、久尾雨のことを許したわけではない。
久尾雨も、向井と向き合えてることが奇跡だ。
これから、2人はまた会うだろう。
ゆっくり、この関係を修復していくのだ。
許せないのに話したい。
それに、答えなんていらないから。
「こーじ!終わった?」
「めめ!?なんでここに…!?」
久尾雨との雑談を終え、カフェから出てきた向井の元に、目黒がいた。
行き先など教えていないはずだが…
「ごめんね、ちょっと心配でさ。」
「いや、そこやなくて…なんでここにいるのがわかったん!?」
「………さぁ?」
「え!?え、あ、あ!?怖いやん!!なんでわかったん!?」
向井がいくら聞いても、目黒は微笑むだけ。
「まあ、そんなことはどうでもいいからさ。」
「どうでも良くないやろ!?」
「うはは!ごめんごめん、ちょっとからかっただけ。迎えに来たよ、帰ろっか。」
目黒は、笑いながら手を差し出す。
向井は、まだ疑問が残っているが…
目黒のことだ。
何があっても向井のことを探せるのだろう。
向井は、目黒の手を取る。
そして、2人で手を繋いで帰る。
暖かい、陽の光を浴びながら。
「……おい…」
家の中、少し不機嫌そうな声が響く。
その声の持ち主は、渡辺だった。
そして、渡辺に”縋り付く影”。
「ねぇぇぇ…!!しょーたぁ!!たすけてよぉ…!!」
赤ん坊のように、深澤が泣きついていた。
「やめろ!離せ!!」
必死に振りほどこうと奮闘する渡辺だが、深澤は絶対に離れない。
想像以上に、深澤は強めの力で渡辺の服を掴んでいた。
「なんだよほんとに…!!頼るんだったら照にしろって!!」
「…ひかるじゃだめなのぉ!!!たすけてしょーたー!!」
「意味わかんねぇって!!はーなーせー!!」
その後、何とか深澤を落ち着かせることに成功した渡辺は、助手席に深澤を乗せて、とりあえずどこかに行くことにした。
もちろん、居酒屋ではない。
運転している間、深澤はずっと静かにぶつぶつ呟いていた。
感情が思いっきり正面に出るようになったのは、とても嬉しい変化である。
誰かに頼れるようになったのも、非常に良い変化である。
…だが、今まで隠していたぶんもあるのだろう。
1度蓋を開けたら、その蓋が全く閉じなくなってしまったのだ。
「おれも、しょうたみたいにびようにきぃくばればいい?」
「知らねぇよ。」
「しょうたみたいに、いっぱい、いいたいこといえばいい?」
「さあな?俺だって全部を話してるわけじゃねぇし。」
「うえええ…しょーたぁ…!!」
「お前…めちゃくちゃめんどくせーな…!」
渡辺が運転中であることもお構い無しに、ずっと質問を続ける深澤。
渡辺は思う。
感情を表に出せるようになったのはいいことだが、だからといって全部を出すな、と。
せめて、せめて幼児化だけはやめて欲しい。
「お前、30超えてんだぞ!?恥ずかしくねぇのか!?」
「はぁ!?翔太に言われたくないし!?」
「…って、お前のせいで道迷ったじゃんかよ!」
「…は…はああああ!?何してんの!?」
色々と言い合いをしていた時、渡辺がふとカーナビに視線を向かせたら、そこは知らない場所だったのだ。
「いつの間にこんな場所に来てたんだよ…?」
渡辺は、深澤に視線を移す。
だが、深澤はブンブンと首を横に振る。
「…お、俺のせい…?」
その後、少しショックを受けたような表情で自分を指さす。
渡辺も、こくりと頷く。
2人で1度、車の外に出る。
まずは、周りに何があるかを確認しようと考えたのだ。
「うわっ…めっちゃくちゃに”森”じゃん…」
「うわあ!!!虫!!!!!」
「へぁ!?うわっ!!最悪じゃん!!!」
周りにあるのは、都市部から少し離れた森だった。
そのため、自然がいっぱいということで…
虫がたくさんいるのだ。
そして、深澤ち渡辺は虫が苦手である。
2人でジタバタと暴れていると、深澤がバランスを崩した。
「……ほぁっ!!!」
「おい!やめ!掴むなぁ!!!」
深澤が転ぶ寸前に渡辺の服の裾を引っ張りったせいで、深澤と渡辺は悲鳴をあげながら森の中に突っ込んで行った。
どうやら、この森は”坂”が多いようで…
深澤と渡辺は勢いに任せて、どんどんと森の深いところまで入っていく。
そして、ようやく勢いが止まった。
「いったた…ごめ、翔太…巻き込んだ…」
「…ここ、坂多すぎだろ…」
抱きついた状態で倒れている2人は、葉っぱやら木の枝やら泥やらでボロボロになりながら、何とか立ち上がる。
だが、目の前の光景に息を飲む。
目の前には、”美しいガーデン”があった。
「…なに、これ…?」
「森の中、だよね…?」
都市部から離れた森の中には、異質な空間。
「………まさか、自力でここまで来れるとは…不思議ですわね。」
唐突に背後から感じた気配。
「…え…?」
2人は、振り返ってその姿を確認する前に、意識を失った。
「どうしましょう…私ひとりでは運べませんわ…」
芙月は、頬に手を当てて悩んでいた。
目の前には倒れる深澤と渡辺。
たまたま、深澤と渡辺が転がり込んだのは芙月の拠点であり、先程まで岩本がいた場所だ。
普通の人間なら来れるはずがないのだが…
「……面倒事にならないうちに、記憶は消してしまいましょうか。」
芙月は、倒れる2人の頭上に手を当て、2人の記憶を消す。
「………なるほど…そういうことなのですね。」
なぜ2人がここに入ってこれたのか。
芙月は、ゆっくりと立ち上がり振り返る。
「あなたが、連れてきたのです?」
「………バレたか。」
芙月の声に反応し、虚空から人が現れる。
それは、フードの男ではない。
「ここでなら、君の能力を知れると思ったんだけど…あと、ついでにその子たちをどう扱うかもね。」
新たな、人物だった。
「それに、君に僕が知られていたなんて驚きだな。」
謎の影は、少年のような見た目をしていた。
「もちろん、この盤上にのりうるものは、”全て”把握しておりますもの。」
芙月は、その少年に優しく笑いかける。
「あなたも、”変わった趣味”をお持ちなのでしょう?」
「失礼だな、君たちと同じにしないでよ。」
少年は苦笑いをする。
その言葉を境に、芙月は少年を”敵”だと判断する。
「たしか、空染(くうそ)様でしたね。名前の通り、本当に”空疎”ですわね。」
にっこりと、少年に笑いかける。
悪意を込めた、一言を持って。
少年は、少し不機嫌そうに顔を歪める。
「君も、あのフードの男も、なーんで、こう話してみると不快な気持ちになるんだろうね?大人って、ほんとにだるいね。」
先程まで大人びていた雰囲気から、少し少年らしさがにじみ出る。
だが、芙月は笑顔のまま答える。
「……面白いことを言いますわね。”その見た目”のおかげで、面倒な時は”子供らしく”振る舞うなんて…恥ずかしいと思いませんの?」
芙月の言葉に、少年…空染は、瞳を敵意で光らせる。
「…本当に僕のことを知ってるみたいだね。」
「当たり前ですわ。言ったじゃないですか。盤上にのりうるもの…私の邪魔をするものは全て把握しておりますの。」
芙月は、笑顔のまま答える。
その笑顔に、空染も口角を上げる。
「おもしろいじゃん。やっぱり、”モブ”も強くないとつまんないしね。」
さらっと、芙月をモブ呼ばわり。
その言葉に芙月も少し表情を歪める。
「…気持ち悪い。自分が主人公だと思っているのです?」
「君みたいな、”傍観者”じゃないからね。僕はこの物語にとことん介入するつもりさ。」
空染は、にこっと可愛らしい笑顔を浮かべてみせる。
童顔なせいもあるだろう。
笑顔だけを切り抜けば、ただの可愛い子供だ。
「で、その2人のどっちかにいたりするの?」
堂々と芙月の前を横断し、倒れる深澤と渡辺を見下ろす。
「……全く、学校で習いませんでした?主語を必ず言葉の最初に入れる、と。…おっと、失礼しましたわ。”お子様”には、理解が難しいですわね。申し訳ありません。」
芙月は、口元に手を当てて謝罪する。
しっかりと、皮肉を込めて。
「あっはは!ごめんごめん!君みたいに”理解力が低いやつ”には伝わんなかったか!」
空染も笑って答えてみせる。
「どっちかに、”漆黒の龍の所有者”がいんのかって聞いてんの。」
そして、何も映らない、真っ黒な瞳を光らせて、空染は芙月に問いかけた。
芙月は、笑顔を絶やさないまま、
「さぁ?自分の頭で考えることを学んだ方がいい、とだけアドバイスいたしましょう。」
まるで、子供をあやすように空染に視線を合わせ、片手を頬につきながら、もう片方の手で頭を撫でる。
完全に見下す目をしながら。
「……やっぱり、君とは話になんないね。」
空染は、芙月を睨みつけながら、頭に置かれていた手を振り払う。
「ちっ…全く、無駄足だったよ。」
「うふふ、負けを認めますかぁ?」
空染はイラついた表情。
芙月は余裕の笑顔。
そのまま、空染は森から出ていった。
今回は、芙月の勝ちのようだ。
「………ん…?」
渡辺が、目を覚ました。
だが、目を覚ました場所は芙月のガーデンではない。
「…あれ、何してんだ…?」
エンジンのかかっていない車内で、ハンドルを握っていた。
助手席には、同じく目を覚ました深澤がいる。
「…あれ…?翔太…」
目を覚ました深澤が、クイクイと渡辺の服の裾を引っ張る。
深澤に促されて、渡辺は車窓に目をやる。
「……家、じゃん…」
2人がいる場所は、家の車庫の中だった。
だが、2人には家に帰ってきた記憶がない。
渡辺は、深澤をやっとの思いで連れ出すことに成功した記憶がある。
深澤も、渡辺と家を出た記憶がある。
だが、どこへ行っていた?
車に乗っただけ?
本当にそうなのか?
この違和感の答えが見当たらない。
もしかしたら、車に乗った瞬間寝てしまっていたのかもしれない。
結論が出ないまま、2人は車から降りる。
そして、玄関の扉を開けると…
「翔太!それに、ふっかも!みんな、帰ったきたよ!!」
慌てて宮舘が飛び出してきた。
宮舘の声を聞き、どんどんメンバーが集まってくる。
まるで、2人が神隠しにあっていたみたいだ。
「あの女…噂には聞いてたけど、ほんとに読めねぇな…」
少年…空染はポケットに手を突っ込みながら歩いていた。
その表情には、微かな苛立ちがこもっている。
『”その見た目”のおかげで、面倒な時は”子供らしく”振る舞うなんて…』
芙月の言葉が、空染の頭を過ぎる。
全くその通り。
空染は、見た目こそ少年の姿ではあるが、中身は立派な成人済みの大人だ。
とある時期を境に、身長は伸びなくなり、声変わりもしなくなった。
体が、子供の姿のまま成長しなくなったのだ。
それが、空染の特性であった。
「恥ずかしくないの?だって…?」
空染は拳を握りしめる。
自分を、小馬鹿にして見下した芙月に対しての怒り。
「恥ずかしくなんてないさ。そのおかげで、俺はより警戒されずに接触できるんだから…!!」
空染は、怒りのこもった瞳を光らせる。
その瞳は、何も映さず、何よりも暗かった。