テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
3,266
はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
(深澤視点)
あの日からずっと、照とまともに話せてない。
俺の隠し事のせいだと思うし、だから話そうと思うのに…
最近の照は、すぐにふらっとどっかに行っちゃう。
だから、最近はまともに顔も見れてない。
このことについては、メンバーにも心配されてる。
だって、部屋は一緒なのに遠くにいるみたいなんだもん。
みんなも、それに気づいてる。
……それに、もしかしたら…
もしかしたらだけど…
恋人…できたんじゃない…?
だって、照が家に帰って来た時…
女性がつけるような、甘い、香水の匂いがする。
今はレジの仕事終わって帰ってる途中。
今日も、レジですら会えなかった。
本当に、俺は捨てられた…?
不安になって、太ももを撫でる。
照のために治してる傷…照のせいで増えそうだよ。
まぁ、阿部ちゃんに怒られるからしないけど…
「はぁ…」
だめだ…
全部が嫌な妄想に変わってく…
ため息だけが溜まってく。
誰か、こんな俺を慰めてくれないかなぁ…
「…だーれだ?」
「うわっ!」
急に後ろから目を隠される。
この声…
「ま、真白さん…?」
「大正解♪」
後ろを振り返ったら、真白さんがいた。
「どうしてここに…?」
目の前にいる真白さんは、本当にオフみたいで、髪の毛も少しぼさついてるし…
オフだと眼鏡つけてるんだ…
「どうしてって…ふっかくんがいたからだよ♡」
当たり前みたいに真白さんは笑う。
「それに…相方くんはいないんだね?」
真白さんは、少し周りを見渡して照がいないことに気づいたみたい。
当たり前だよ…
照はここにいない……
「……ふっかくん、この後暇?」
「…ぇ…?あ、はい…暇ですけど…?」
「よかったぁ!じゃあさ、ちょっと付き合ってくんない?」
「…へ?」
真白さんは、にっこり笑いながら手を差し出す。
普段の俺だったら、多分断ってたと思う。
でも……
照のいない寂しさを埋めたいのか…
それとも、誰かの体温を求めてたのか…
分からないけど…
俺は、真白さんの手を取った。
「……ご機嫌よう。ようこそいらっしゃいました。」
「……話って…?」
森の奥に潜むガーデン。
岩本は、最初にここに来た時とは表情が違っていた。
顔を少し歪ませているのは、芙月のことを警戒しているからではない。
「…ふっかに、何かあったの…?」
ただ、それだけだった。
焦る岩本を、落ち着くように座らせる。
「少々、面倒な敵が増えたので…一応共有しておこうと思いましたの。」
「……敵…?」
「ええ、彼も漆黒の龍を狙っておりますわ。」
芙月は、チェス盤に新たな駒を置く。
「……ナイト?」
「ええ、その通りですわ。」
芙月が加えた駒は、ナイトだった。
「恐らく、深澤様が漆黒の龍の所有者であることがバレるのは時間の問題かと…」
「……また、面倒なのが増えたのか…」
岩本は真剣な表情で盤上を見つめる。
芙月のチェス盤。
中心には白いクイーンが置かれている。
これが意味するのは、漆黒の龍の所有者である深澤だ。
その隣には、同じく白いキングと7つのポーン。
これは、岩本と他のメンバーを表す。
今、白のクイーンに近い存在は、白のキングと7つのポーンだ。
そして、そこから少し離れた場所。
白いビショップ。
これはdominatorを表している。
遠くから、Snow Manを支える存在として。
そして、さらに離れた位置に黒いルーク。
これは、フードの男を示している。
Snow Manと敵対するものは、全て黒の駒で表す。
そして、散らばるように配置される黒いポーン。
これは、その他の小さな戦力を表す。
そして、チェス盤のギリギリに追加された黒ナイト。
空染が、盤面に追加された。
「……ありがとう。気をつけるよ。」
岩本は素直に感謝を伝える。
芙月も微笑みながら答える。
「いえいえ、私も彼のことは強く観察しておく予定なので…もし何かあったら、また伝えますわ。」
岩本は、その言葉を聞いてから森を出ていく。
芙月は、その背中を見えなくなるまで見つめていた。
「……カラオケ…?」
「そう!カラオケ!」
深澤が真白の手を取り、1番に連れてこられた場所。
カラオケ。
真白は笑顔のまま、深澤を引きずりながらカラオケ店に足を踏み入れる。
「よーし!ふっかくん、今日はいっぱい楽しもー!!」
「…お、おお!」
深澤は、真白に抵抗することをやめる。
今は、真白と同じテンションで楽しむことが必要なのかもしれない。
そう、感じたから。
「____♪___♪」
「ふっかくん、すごいいい声してるね。」
「そ、そうですかね…?」
「うん!最近の言葉で言うなら…“キャラメルボイス”?」
「それ、最近の言葉ですかね?」
「あっはは!俺もわかんないや!」
カラオケでは、ほとんど深澤が歌っていた。
真白にマイクを渡しても、選曲した曲を自分は知らないと言い出し、結局全て深澤が歌ったのだ。
それを、真白はマラカスをシャカシャカしながら聞いていた。
次に向かったのは、ゲームセンター。
「俺さ、クレームゲーム好きなの。でも、取れないんだよねぇ!!」
真白は、ゲームセンターに入ってからすでに、紙幣を2枚失っていた。
そして、真白の手の中は空である。
深澤は、隣で苦笑いを浮かべる。
「ふっかくんもやってみてよ!これ、本当に難しいから!!」
真白は、深澤に100円玉を渡す。
深澤は、ゆっくりクレームゲーム台を見つめ…
静かにコインを入れる。
「…え?え、え!?」
迷いなくアームを動かしていく深澤に、真白は目を見開く。
そして、そのアームはしっかりぬいぐるみを掴み…
景品受け取り口へ向かった。
「えええ!?ふっかくん、一発でとった!?」
驚く真白に、深澤は少し誇らしげに笑う。
「俺、クレームゲームめちゃくちゃ得意なんですよ。」
その後、深澤は真白に頼まれた台に挑戦し、最低限の消費で大量の景品をとった。
「そういえば..,失礼かもですけど、真白さんって、いくつなんですか?」
ゲームセンターから出て、深澤は大量のぬいぐるみを抱える真白に質問をする。
「俺?俺はね、今年で35だよー!颯馬と同い年!」
「…え!?俺とほぼ変わんないの…!?」
深澤は現在34。
真白のことをもっと年上だと感じていたが、想像以上に年は近かったようだ。
「よし、着いたよ!」
次に深澤が連れてこられたのは…
「家?」
「そう!”俺の家”!」
真白の家だった。
「お、お邪魔しまーす…」
「はーい!ゆっくりしてってねー!」
恐る恐る、深澤は真白の家へ足を踏み入れる。
真白の家は、一人で住むにはもったいないほど広かった。
「もともとは、俺らdominator6人の家だったんだよねぇ。」
どうやら、やけに大きいのはdominatorで共同生活を送っていたからのようだ。
「今もメンバーと住んでるんですか?」
深澤の質問に、真白は綺麗な笑顔で答える。
「”いや、俺1人だよ”!だって、みんな”出てっちゃったんだよね!」
「…え?出てったって…?」
深澤には、何となくその理由がわかっていた。
だが、一応確認のために問いかける。
「最初に颯馬が、『お前のわがままに毎日構ってられるか!』って、その次に『お前朝おっせーんだよ!』って歩夢が出てって、『歩夢が行くなら俺も!』って卓も出てって、『颯馬はんいないとあんたの相手めんどくさいからなぁ…』って久尾雨も出てって、最後に『ごめん、俺もあんたと2人きりは無理だ』って玲王が出てったの。」
「それは、そうでしょうね…」
深澤がひきつり笑いを浮かべる。
どうやら、真白と共同生活など同じメンバーであっても難しいようだ。
「それにさぁ!聞いてよふっかくん!!」
「うわっ、はい、なんですかー?」
真白は急に深澤の肩をがっしりと掴み揺らす。
深澤は遠い目をしながら話を聞いてあげる。
「俺のこと置いてったくせにさ!颯馬はなんか高級なビルに住んでんだよ!?あいつだけめっちゃ贅沢な暮らししてんの!!ズルくない!?」
どうやら、メンバーの愚痴が始まるようだ。
「歩夢と卓は当たり前みたいにルームシェアしてるし!久尾雨はちょこちょこここに来ては、冷蔵庫あさって帰ってくんだよ!あいつが来た次の日にはお酒なくなってんの!!玲王は、そもそもここに来ない!!いや、玲王も最初のうちは来てくれてたの!なのに、途中から来なくなった!てか、颯馬に関しては任務以外で一切会わないんだけど!?」
深澤の肩をガクガク揺らしながら真白は嘆く。
だが、それはそうだろうと思う。
真白の自由すぎる性格だ。
毎日振り回され続ければそうなるだろう。
「それに、ふっかくんたちも今共同生活中なんでしょ?」
「そうですね。」
「なんか、喧嘩とかしないの?Snow Manって9人もいるし、個性強いじゃん。」
「…まぁ、たしかに…」
真白に個性が強いとは言われたくないが…
深澤は今までの生活を振り返ってみる。
「…喧嘩っていう喧嘩は、したことないですね。」
「へぇ!俺ら…特に俺と颯馬とか、俺と歩夢とか、いつも言い合いしてたけどな。」
「ほんと何してるんですか……俺らは、なんか…家族みたいな感じで…言わなくてもわかる?みたいな距離感なんです。あ、もちろんいっぱい話もしますよ!」
深澤は真白の発言に呆れながら、今までの生活を振り返ってみた。
「…家族、か…いいね。俺らは家族っていうよりも長年の戦友みたいな感じだからさ!そういうの憧れる!」
「そう、ですかね?」
真白は、Snow Manの生活に憧れを抱いているようだが、深澤は、真白のことを羨ましく思う。
(俺も、照ともっとぶつかれたらよかったのにな…)
「……ここが、俺の部屋だよ!」
リビングで少し雑談をしてから、真白は深澤を自分の部屋に連れてきていた。
完全に、真白のテリトリーだ。
真白の部屋は、思った以上に整っていた。
置いてあるものも少なく、シンプルな部屋だった。
てっきり散らかっていると思っていた深澤は少し驚く。
「思ってるよりシンプルでびっくりした?」
「……はい。」
真白が隣でにこにこしながら問いかける。
深澤も素直に頷く。
「あの…どうして俺を…?」
真白に背中を押されながら、深澤は問いかける。
わざわざ部屋にまで入れる。
例え、相手が深澤であろうと、部屋に入れるなどなかなかできないことだ。
その質問に、真白はにっこりと笑う。
「”ふっかくんだから”だよ。俺の部屋なんて、今まで誰も入れたことないし。」
その言葉に、深澤はさらに目を丸くする。
真白は、そのままベッドの上に深澤を座らせる。
その隣に、真白も腰を下ろす。
「…ふっかくんさ、相方くん…岩本くんと、何かあったんでしょ?」
真白は優しく微笑みながら、目を丸くする深澤を見つめる。
深澤は、小さく頷く。
真白は、最初から気づいていたのだ。
いつの間にか深澤は、押し込めていた思いを吐き出していた。
それを、真白は頷きながら聞いていた。
話を終えて、微かに震える深澤の手を、真白は優しく握る。
深澤は、驚いたように揺れる瞳を真白に向ける。
その顔に、真白はにっこりと笑う。
「…俺だったら、ふっかくんにこんな顔させないのになぁ…」
その笑顔には、ほんの少しの悔しさが滲んでいた。
真白は、震える深澤を見て思う。
自分だったら、深澤のことを不安にさせずに楽しませられる自信がある。
決して、寂しい思いなどさせない。
苦しくなるほどの愛情を注いでみせよう。
…それでも、深澤が真白のことを選ぶことはないだろう。
どれだけ辛い思いをしようが、深澤は岩本を選ぶ。
それだけ、深澤にとって岩本は唯一無二の存在なのだ。
真白は知らないが、深澤は岩本によって生かされている。
岩本がいないと、何もできない身体になってしまっている。
深澤の選択肢には、岩本以外が入ることは、絶対にないのだ。
「…真白、さん…ありがとうございます…でも…」
深澤は、苦しそうに笑いながら自分の手のひらを握る真白の手をよける。
真白は、もう片方の手で深澤の口を塞ぐ。
「うん、わかってるよ。だから、その先は言わないで。」
深澤は、眉を下げる。
いつも通り、『でもふっかくんのこと好きだよ♡』や『俺のこと選んでよ。』など、少し軽くして欲しかった。
そうすれば、こんなに苦しい思いをしなかったのに…
その後は、真白はいつも通りのテンションで深澤に接してくれた。
何気ない会話をしながら、深澤を家まで送ってくれた。
家の前に来た時、真白は優しく深澤の頭に手を置く。
そして、
「辛くなったら、いつでも俺のとこに来てね。」
俺も、寂しいからさ。
と、冗談めいた笑顔を見せて帰って行った。
深澤は、軽く息を吐きながら玄関の扉を開ける。
「ただいま。」
深澤は、少し大きめの声で帰りを知らせる。
すぐにリビングから顔を出したのは…
阿部だった。
「ふっか!遅かったね、心配したよ!」
「あはは…ごめんごめん!」
岩本ではなかったことに少し気持ちが沈みながらも、帰りを待ってくれていた阿部に安心する。
2人でリビングに向かうと、すぐに何かに突進される。
「うぐっ…!」
「にゃはは!ふっか、おっかえりー!!」
「ふっかさぁん!待ってたでぇ!」
佐久間と向井が、突進してきたようで…
深澤は笑いながら2人を引き剥がす。
「やめろって!わら」
阿部、佐久間、向井だけでない。
他のメンバーも深澤の元へ集まってくる。
……岩本は、まだ帰ってきていないようだ。
深澤は、少し寂しい。
それでも、笑える。
自分を待っててくれる人がいる。
帰るべき場所がある。
辛い時に逃げ込める場所もある。
深澤は、苦しくても笑えているのだ。
コメント
1件
わあ、読んだばかりでまだ胸がぎゅっとしてる……。深澤くんの「照がいない」寂しさがひしひし伝わってきて、真白さんの優しさが逆に切なかったな。カラオケやゲーセンのやりとりはほっこりしたけど、最後の「辛くなったら俺のとこに来てね」で涙腺が緩んだよ。家に帰ったとき、待っててくれるメンバーがいるのに照が不在で、その対比がまたリアルで苦しい。この逃げ道、優しくて哀しいね。