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「はてしかし、能力を失くす方法ですか。それはさすがにちょっとなんとも言えませんが……やはりそこを知りたいのであれば、原因を追究すべきではないでしょうか?」


「原因……」


「ええ。いきなりそのような能力が身に着いたにしても、何かしらの要因はあるはず。もしかしたらそれを取り除けば良いのかもしれませんよ。何か予兆のようなものはありませんでしたか? ……その、お婆さんのお話では」


「あ、予兆っていうか、きっかけみたいなのはわりとはっきりしてて……婆ちゃんから聞いてたんですけど、言うの忘れてて」


「ああ、はいはい。結構ですよ」


各務さんはニコニコしている。


「えっと、その事が起こる前、ちょっと前にお稲荷さんにお参りしたみたいなんです。えー、百回くらいしたらしいんですけど……」


「お百度を踏んだのですか!」


「ええ、まあ。なんでそんなことしたんでしょうね?」


僕はハハハ、と気の抜けた笑い声を上げた。


「それでそのような能力を身に着けた、と……。何を願掛けしていたのでしょうか? その、お婆さんは?」


「そこまではちょっと……婆ちゃんの記憶もあやふやで」


いなくなった猫を探していて、などと言うと自分のことだとバレてしまうのではないかと用心したのだ。


田舎のことで、どこから僕の話が伝わるか分かったものではない。


「ふむふむ。少なくとも〝猫の言葉がわかるようになりたい〟などという願掛けではなかったわけですね?」


「それはまあ……そういうことではなかったみたいですよ。おそらくなんですけど」


うーん、と一つ唸って各務さんは何度も頷く。


「やっぱりこれって、何かの事故みたいな……」

「いや、面白い!」


各務さんは、小さい文机のようなレジカウンターに肘を置き胸の前で両手を結んだ。


「それはさすがに、何か意図的なものを感じますよ」


「い、意図的ですか?」


「ああ、お稲荷さんの、という意味ですけどね。それはあの稲荷が夏雄くんに何かをさせたいということじゃないですか?」


「僕の話じゃないですってば!」

「そうでしたね。失敬失敬」


あまり悪いとも思ってなさそうな、おざなりの口調で言い、


「夏雄くんが住んでるのは陣池《じんち》でしたよね?」


と、素早く話題を移した。陣池は僕の住んでいる、あの地域の住所名だ。


「……ええ、まあ」


「陣池は古くは神地と書いたそうです。神様の土地、領地という意味ですね。あそこに住んでいる人たちは元々あの稲荷に奉仕する人々だったらしいですよ。ウチも昔はそうだったという話です」


「へ、へえー。だから婆ちゃんが神様の何かに選ばれた、ってことですか。でも、お稲荷さんなら狐じゃないんですか? 猫は関係ないんじゃ」


「それがあるんですよね」


各務さんは無邪気にニコニコしている。

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