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眠狂四郎
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10 優佳の会社・社長室
優佳「今日であなたとは離婚する。私たちの夫婦生活は終わりよ」
立ち上がった優佳、サイン済みの離婚届を晴馬に押しつける。
優佳「はいこれ、離婚届。書き終わったら、今日中に家を出ていってね。あの家は『貴崎』の持ち家であって、あなたのものじゃないんだから」
晴馬「まだ俺は離婚に同意していない」
優佳「考えてみれば、あなたって『貴崎』の家に住み着く寄生虫みたいな存在だったわね。家も、家具も、全部貴崎家が用意したもの。晴馬はただそれらを借りて、身の丈に合わない、いい暮らしをしてただけ」
晴馬「……寄生虫? 夫のことを寄生虫と言ったのか?」
西波「だーかーらー、もう優佳社長はあなたを夫とは思っていないんですよ。相手に言われたことを認められないそのプライド、さっさと捨てたらどーですか?」
晴馬「くだらない理由で一方的に離婚を押しつけられて、認めるわけないだろう」
西波「はぁ。私ももっと早くこの男の正体に気づいて、優佳社長に別れるように進言すべきでした。優佳社長のお祖父様の言葉を信用しすぎましたね」
優佳「もしかしたら、お祖父様は判断力が鈍ってきているのかも。今後はあまりお祖父様の言うことを真に受けないほうが良いかもしれない」
晴馬「重一さんのことを悪く言うな」
晴馬、少しだけ怒りの感情を見せる。
優佳、気圧される。
優佳「な、なによ……お祖父様に気に入られてたからって、かばおうっていうわけ?」
晴馬「……お前が予想以上に愚かな人間だということはよくわかった。その事実は受け入れる。だが、重一さんを貶めることだけは許さない」
優佳「あはは、愚かなのは晴馬のほうでしょ! 私じゃない。晴馬が愚かすぎて、私の素晴らしさを理解できていないだけよ。お祖父様の件だって、事実を言っただけじゃない。あなたみたいな人を勧めてくるなんて、お祖父様はもう信用できない」
晴馬「……救いようがないな」
優佳「いいから。ほら、早く、離婚届をか・い・て! あ、そうそう。晴馬はもちろん、うちの会社も解雇だから。いくらうちが大企業でも、身内でもない無能を置いておくなんて無理。慈善事業じゃないんだから」
西波「家もなくなって、仕事もなくなって、災難ですね〜。まぁ、今まで私たちを騙して、有能な夫のフリをしてたんですから、当然の報いですけど」
晴馬、受け取った離婚届に視線を落とす。
晴馬「本当に、いいんだな。俺と離婚して。離婚すれば、これまで俺がおこなってきた優佳の会社への支援はすべて打ち切ることになる。後悔するなよ」
優佳と西波、顔を見合わせてから吹き出す。
優佳「それあなたの妄想の話でしょ? なんで私が後悔することになるのよ? 立場わかってる? ははは! だから無能だって言われるのよ!」
晴馬「……わかった。離婚しよう。だが、優佳。お前は俺の話を妄想だと言ったが、それは間違いだ」
優佳「まだ言ってるの?」
晴馬、服の左胸の辺りに手を当てる。手で隠した部分が光を放ち、晴馬が手を離すと同時に、左胸に「善界」を表すバッジが現れる。
晴馬、スマホを操作する。優佳のデスクの上にあるPCが通知音を鳴らす。
晴馬「俺はお前を守るため、お前の身辺に信用できない人間がいないか、権力を使って調査していた。今送った資料は、先日の調査で判明した事実をまとめたものだ」
優佳、PCを操作し、目を見開く。
優佳「これ……この資料……」
西波、横からPCの画面を覗き込み、驚きで声を上げる。
西波「……え!?」
晴馬、西波を睨む。
晴馬「そこの秘書、ずいぶん信用しているようだが――優佳の秘書になった数か月前から、秘書の立場を利用して、会社の資金を横領している」
西波、青ざめる。
西波「い、いや……」
晴馬、西波を眺めて言う。
晴馬「俺とお前、寄生虫はどっちかな?」
コメント
1件
うわ、この展開すごいですね……!「♡♡♡」って言われた晴馬が最後にあの台詞を返すカタルシスがたまらない。優佳の傲慢さと西波の横領が明らかになるタイミングも完璧で、まさかここで「善界」のバッジが伏線として効いてくるとは思わなかった。晴馬、ただの無能な夫じゃなかったんだな……。続きが気になります!