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四月二十三日……午後八時……。
「よし、そろそろ風呂に入るか」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が風呂場に向かおうとすると新入りのメインがこんなことを言った。
「あっ、じゃあ、私も一緒に入るー」
女性陣の殺気がメイン(綿の精霊たちの女王)に集まる。
彼女はそれに気づいたが、彼に抱きついた。
「うえーん! みんなの目が怖いよー! お兄ちゃん、なんとかしてー」
メインは彼に見えないように女性陣に向かって舌を出した。
それを見ていた女性陣の堪忍袋《かんにんぶくろ》の尾《お》が切れかけた時、代表のミノリ(吸血鬼)が彼女にこう言った。
「メイン、ちょっとこっちに来なさい」
「えー、やだー。どうせ、お兄ちゃんを独り占めするなーとか言うんでしょ?」
ええ、そうよ。その通りよ。
「そ、そんなことないわよー。ただ、ちょっと言っておきたいことがあってね……」
「俺は別に構わないよ」
え?
女性陣は彼の意外な発言に驚き、数秒間呼吸するのを忘れていた。
「は、はぁ? あんた、何言ってんの? 変なものでも食べたの?」
「いや、食べてないよ。あと、お前が……いや、みんなが言いたいことはだいたい分かる。メインが俺に過度なスキンシップをしたり、抱擁を迫ってきたり、性行為を要求したりするのが気に食わないんだろう?」
「え、ええ、そうよ」
「お兄ちゃん、どうしたのー? 早くお風呂入ろうよー。ねえねえ」
彼女が彼の腕を掴《つか》んで風呂場に連れていこうとする。
「メイン。俺は今、ミノリと話をしているんだ。お前は少し黙っててくれ」
「やだ! 私は今すぐお兄ちゃんとお風呂に入りたいの! 話なんて後にしてよ!」
「あんたね……いい加減にしなさ……」
ミノリ(吸血鬼)が最後まで言い終わる前に彼はメインの耳元でこう囁《ささや》いた。
「お願いだ、メイン。少しの間、静かにしてくれ。あとで体の隅々まで洗ってやるから」
「か、体の隅々まで!? しょ、しょうがないなー。今回だけだよ」
「ありがとう、メイン」
「んふふー、どういたしまして」
すっかり上機嫌になったメインは彼の腕に頬擦《ほおず》りをした。
「えっと、どこまで話したっけ?」
「あ、あんた、なかなかやるわね」
「ん? 何の話だ?」
へえ、自覚ないんだ。
「別に。こっちの話よ。えっと、メインがナオトに愛を求める行為を減らしてほしいってところまで話したわ」
「あー、そこか。えー、まあ、しばらくしたら飽きると思うから、ちょっとやりすぎだと思ったら注意するくらいでいいと思うぞ」
「そうね。まあ、しばらくはそれでいきましょう」
「お兄ちゃん、話終わったー?」
「ああ、終わったぞ。それじゃあ、行こうか」
「うん!」
二人の入浴が済むまでミノリ(吸血鬼)は廊下で二人の会話を聞いていた。
何度か危ない場面があったが、一線を越えることなく入浴が終了したため彼女はほっと胸を撫で下ろした。