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タイトル「君の全部、俺だけに」
バンドの打ち合わせ後。
帰り際のスタジオで、若井さんと何気ない会話をしていた。
「最近、ちょっと髪型変えた? 似合ってるじゃん」
「……え、あ、わかります? 嬉しい……!」
そんな他愛のないやり取り。
でも――
ふと視線を感じて振り返ると、
少し離れた場所で、涼架さんが黙ってこちらを見ていた。
(……?)
笑ってるように見えるけど、目が笑ってない。
(……なんか、機嫌悪い……?)
そのときは、深く考えなかった。
けれど――
その夜。
夜・藤澤さんの家
静かな部屋に入った瞬間、
背後からそっと抱きしめられた。
「……涼架さん?」
返事はない。
代わりに、耳元にかかる吐息だけが熱い。
「若井と……楽しそうだったね」
「……え?」
彼の声が、静かに、けれど明確に冷えていた。
「“似合ってる”とか、“嬉しい”とか……」
「っ、それは……別に、そんな意味じゃ――」
「ふーん。じゃあ、俺の見間違いかな」
ゆっくりと体を引き寄せられ、
壁に押しつけられるようにしてキスを落とされる。
いつもより、強く、深く。
「……ねぇ」
「な、なに……?」
彼の手が私の腰を撫でながら、低く囁いた。
「俺だけに可愛いって言われてればいいのに」
「え……っ、ちょ――」
ソファに押し倒され、視線が絡む。
その目に、いつもの余裕はなかった。
そこにあるのは、明らかな独占欲と――少しの怒り。
「他の男と、あんな顔で笑ってた罰。ちゃんと受けて?」
「……っ、涼架さん……!」
「大丈夫。優しく“しない”とは言ってないよ?」
言葉が終わると同時に、
キスがまた落ちてくる――首、鎖骨、胸元へと。
それはまるで、印を刻むようにゆっくりで、でも強くて。
「……俺のことだけ、感じてて」
肌と肌が重なるたびに、
彼の中にある“独り占めしたい”感情が、
すべて身体に伝わってくる。
「ほら、さっきの笑顔より……今の顔のほうが、断然好き。」
「……っ、ひど……」
「俺にだけ、そういう顔見せてよ」
服を脱がされるたびに、
深く結ばれるたびに、
私はもう何も考えられなくなっていた。
そして――
翌朝
目を覚ますと、
体のあちこちに、くっきりとキスマの跡。
「……こんなに……」
ぼそっと呟いた声に、隣で涼架さんが笑う。
「ちゃんと反省した?」
「……して…ません……」
そう返すと、彼はまた唇を寄せてくる。
「じゃあ、まだ足りないね?」
「っ……うそ、また……?」
「だって……他の男の前であんなに可愛くしてた君が悪いんでしょ?」
その目は、楽しそうに細められていた。