テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

湊音は、今日剣道部の朝練がなくてよかったと思いつつ、ゆったりとした気分で登校していた。

新しいスーツは初めてのオーダーメイドで、体にフィットしている感覚が気持ちよかった。高かったが、その分の価値はあると満足している。


ただ、朝の出来事さえなければ、もっといい気分でいられたのに――。


朝、李仁の部屋で出くわした謎の男は、李仁の元彼だと言った。


さらに驚くべきことに、あのマンションの一室は彼名義で購入したものだという。


湊音は今まで李仁の部屋に他人の気配を感じたことはなかったが、確かにあの広さは独身の男性が一人で住むには不自然なほど広い。


その元彼は、

「来週にはあの部屋を李仁に譲る予定だ」

と冷たく告げた。

その口ぶりから、彼と李仁の間には何かしら大きな出来事があったのだろう。

ただ、それを深く聞く勇気は湊音にはなかった。


それよりも、彼が鼻で笑いながら投げた言葉


――「あいつでいいのか?」――


が、何より胸に引っかかっていた。


昼休みにでも李仁に連絡しようかと考えながら、湊音は学校に到着した。


職員室に入ると、湊音に視線が集まる。


『スーツが似合ってるから注目されてるのかな?』


少し照れながらもそう思っていると、同僚の大島先生がニヤニヤしながら駆け寄ってきた。


「湊音、お前、これ見たほうがいい」


大島は湊音に紙を差し出した。

そこには写真が貼られており、見覚えのある情景が映っている。


「……これ、昨日の……」


湊音の声は自然と震えた。写真には、李仁と再会し抱きしめられた瞬間が、はっきりと写っていた。


「この写真が、生徒たちの間で出回ってるんだ。それだけじゃない、朝には校長のパソコンにも送りつけられてた」


「……誰が撮ったんだ」


湊音は頭を抱えた。気が緩んでいたのは自分の責任だ。


「それだけじゃない。生徒たちの間で噂が広まってる」


「どんな噂ですか?」


湊音が恐る恐る聞くと、大島は苦い表情で答えた。


「湊音が同性愛者だと……多様性がどうのこうのの時代だがよ、やはり難しいなあ」


『どうしてそうなるんだ?!』


湊音は混乱しながらも、頭の中で整理しようとする。

確かに、生徒や保護者がそんな噂を聞けば、誤解を与えるのも無理はない。そこに校長が現れた。


「湊音先生、ちょっと話がある。朝から保護者たちが電話をかけてきているぞ」


「……そんな、僕は……」


「さらに悪いことに、他校の生徒指導の先生から、君がナイトクラブから泥酔して出てきたと報告があった」


「それが僕だとどうして……」


「過去に教員インタビューを受けただろう。その写真で顔が一致したそうだ」


『そんな……』


湊音は頭を抱え、肩を落とした。李仁との交際を隠すつもりはなかったが、それがこんな形で広まるとは思っていなかった。


校長は腕を組み、真剣な表情で湊音を見つめた。


「君が同性愛者であるかどうかは関係ない。このご時世。ただ、生徒たちに与える影響を考えれば、このままでは済まないぞ」


「……はい、わかっています」


「保護者説明会を開くつもりだ。それまでに、君自身がどうするかを考えなさい」


校長が去ると、湊音は周囲の教師たちからも視線を浴びた。誰

もが口を出しづらそうにしているが、その視線には好奇心と心配の両方が混ざっている。


『どうしてこんなことに……』

湊音は李仁にメールしようとスマホを取り出したが、結局何も書けずに画面を閉じた。



loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚