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次のニュースです。公園で遺体が発見されました。被害者は田村みどりさん(30)と見られ、警察は殺人事件として捜査中とのことです。犯人は捕まっておらず、警視庁は一刻も早く犯人逮捕に努めたいと話しています。次のニュースです…
「先輩、知ってます?あの事件、かなりヤバイらしいですよ。」
目の前で植木がラーメンを啜りながら話す。
「ん?そうなのか?」
俺は餃子を取りながら適当に相槌を打った。
「まあ、最近は物騒な事件も減ってきてるし、インパクトがでかいだけじゃないのか?」
俺がそう言うと植木はこれ見よがしにため息をついた。
「まったく、先輩は話題に乗るのが遅いっすね。記者として致命的ですよ。」
「ふん、余計なお世話だ。命じられたらすぐに飛んで行くさ。」
俺は刑事事件を担当する記者だ。会社に入ってから残業も顧みず、徹夜で必死で頑張り続け、今年、新しい部署に配属された。しかし、部署内でも序列はあり、俺が任されるのはどれも規模が小さいものばかりだった。植木は俺の後輩で生意気なところがあるが情報収集が速く、勘も鋭い。上司からは目をつけられることが多いが俺は植木の勘を見込んでいた。
「で、どんな事件なんだ?」
俺は植木のコップに水を注ぎながら聞いた。植木は机に身を乗り出して声を潜めて言った。
「それがこの事件、連続殺人っぽいらしいんすよ。なんでも過去の事件の殺し方と似てるんだとか。」
「へぇ、なんの事件なんだ?」
植木はあざっす、と言って注がれた水を飲んで一呼吸おいて話し始めた。
「先輩、5年前の××県のばらばら殺人事件覚えてます?」
「ああ、覚えてるよ。俺が会社に入る少し前にニュースになった事件だ。あれは衝撃だったな。凶悪犯罪が収まっていたと思われていた頃に起きた事件だったから尚更な。しかもなんか殺し方が変だったとか。」
「そうなんすよ。なんでも被害者のお腹には刺し傷が10箇所あって、その後にばらばらに切断されたとか。10箇所も刺すってどんだけ恨んでたんでしょうね。」
「そんなに人を憎めるもんなんかね。」
「さあ。それは犯人にしかわからないすけど…。でも、なんで今になってまた動き出したんですかね。しかも今回も同じ殺し方なんて…。もし恨みが動機なら変ですよね。」
考え込む植木を見て俺はこの事件を調べようと思った。植木の勘は当たる。
「じゃあ、俺らで調べてみるか。過去の事件と繋がっていることに気づいている奴はまだ少ないはずだ。急ぐぞ。」
俺は伝票を持って会計を済ませ急いで店を出て、会社へと向かった。大事件を担当できるかもしれないと俺は少し期待感を抱いていた。