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#四季総受け
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21,509
「……仕事の話なら、わざわざ家まで来なくても、社内で済むだろう」
ずれた眼鏡を中指で押し上げ、澪は努めて平坦な声を絞り出す。
冷静になれ。主導権を取り戻せ。ここは俺の家だ。威圧しろ。
「いいんですか?」
芹沢は困ったような、それでいてどこか嬉しそうな、あざとい笑みを貼り付けて小首を傾げた。あからさまに作り物だと分かるその無垢な仕草が、かえって底意地の悪さを際立たせる。
「血も涙もない氷の編集長様が、実は恋愛経験が皆無で、うっかり間違えて出張ホストなんか呼んじゃうようなポンコツ男だって、みんなに知られても」
「なっ……!?」
喉まで出かかった怒鳴り声を、澪は慌てて飲み込んだ。
言われてたまるか、そんな大恥。よりによって社内の連中に知られたら、編集長としての威厳もプライドも木端微塵に砕け散る。
「――っ」
顔面から一気に血の気が引くのが分かった。
(間違えたんじゃない。あれは取材だ。取材のつもりで――)
必死の反論は、頭の中で空回りするだけで、口からは一言も出ない。
その一瞬の空白を、男は見逃さなかった。するりと澪の横をすり抜け、革靴を脱ぎ捨てて、ひたひたと靴下の足音を廊下に響かせながら、勝手知ったる様子でリビングへ上がり込んでいく。
「おい、待て!」
慌てて追いかけた先で、芹沢はもう、ソファの前に悠々と立っていた。
「俺は別に、構わないんですよ? 面白いから」
悪魔のような、どこか艶やかな笑顔を浮かべたまま、芹沢は手に提げていた紙袋から一本のワインを取り出し、澪の胸元へ容赦なく突きつける。
「これ、お土産です。すごく美味しいらしいので一緒に飲もうと思って買ってきました」
反論する隙すら与えられず、押し付けられたボトルの冷たいガラスが、冷や汗に濡れた掌にずしりと重く沈み込んだ。
「……お前、性格ねじ曲がってるって、言われないか?」
「よく言われます」
にっこり、と笑う。悪びれる様子すらない。
ぐうの音も出なかった。追い返す口実も思いつかないまま、ここで無作法なもてなしをして後からネチネチ言われるのは、編集長としてのプライドが許さない。
澪は奥歯を噛み締めながら、フッと鼻を鳴らした。
「……そこらに座ってろ。グラスくらい出してやる」
吐き捨てるように言うと、澪はソファの脇にあるサイドボードからワイングラスを二つ取り出し、冷蔵庫から手早く取り出したチーズやナッツを上品な小皿に盛り付ける。不機嫌さは隠しきれないものの、手つきにはどこか洗練された大人の余裕(意地)が滲んでいた。
「で。結局、何しに来た。まさか本当に仕事の話をしに来たわけでもないだろう? 俺は別に、お前と話すことなんて、何も――」
「いやぁ、俺はただ、編集長と仲良くしたいだけですよ」
芹沢はまったく悪びれた様子もなく、ふっと柔らかく目を細めて微笑んだ。その、どこまでも人懐っこくて無害なフリをした笑顔が、かえって底知れぬ悪意と余裕を感じさせてタチが悪い。まるで、手の平の上で転がされている小動物でも見るような目だった。
「……っ、俺はお前と友達になるつもりなんて無い!」
「そうツンツンしないでくださいよ。あんなに仲良くした仲じゃないですか」
その一言で、封じ込めていた記憶が堰を切ったように脳裏へ雪崩れ込んできた。
あの夜、出張ホストとして現れた芹沢にいいように言いくるめられ、気づけばこのリビングのソファに押し倒されていたこと。背中に沈み込むクッションの感触と、逃げ道を塞ぐように手首をぴたりと縫い止めた、あの熱い掌の重み。
カッと、顔が一気に熱を帯びる。澪は、逃げ出したい羞恥と苛立ちで、キッと芹沢を睨みつけた。
コメント
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うわぁ〜〜〜!!めっちゃ攻防戦してる!!😭💕 澪さんの「冷静になれ…主導権を取り戻せ…」って内心の声がもう可愛すぎて笑ったし、芹沢さんの「よく言われます」の悪びれない返し、完全に主導権握ってるやつじゃん!!🌟 最後のソファに押し倒された記憶がフラッシュバックする描写、エモすぎて叫んだわ…!続きが気になりすぎる!!✨