テラーノベル
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靴紐を結び直すふりをして、しゃがみ込む。立ち上がる勇気が出なかっただけだ。
誰かに見つけてほしいのに、誰の目にも入りたくなかった。
時間だけが、喉の奥でつかえていた。
呼吸するたび、どこかがすり減っていく気がして、深く吸うのが怖かった。
「付き合っちゃおうか」
彼の言葉は、ふわっと軽くて、どこにも留まらなかった。
彼女は頷いた。
そのとき、彼の顔すらきちんと知らなかったのに。
この時から、心はずっと追いついていなかった。
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