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《ゆめレンタル -明晰夢お貸しします-》
「1泊1500円〜 あなたの願い、夢で叶えます」

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15 - 第14話「レンタルされた側の夢」/視点:夢の提供者(少女)

2025年06月23日

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第14話「レンタルされた側の夢」/視点:夢の提供者(少女)




瀬野ほのか(せの・ほのか)、16歳。

肩までのストレート髪、アイロンで整えた前髪。いつも控えめな笑顔を浮かべるが、表情は少しだけ硬い。

制服のスカートは校則ぴったりの長さ。人と話すのは苦手だけど、聞くのは得意。

――そんな彼女は、誰にも言わずに**“夢を貸している”**。


明晰夢文化が浸透して以降、《メイセキム。》では“夢の提供者”も増えてきた。

現実では話せない感情、誰かに見てほしい景色。

その一部を夢として登録すれば、他人が体験できるようになる。


ほのかが提供しているのは――


【夢名:図書室の窓辺】/ジャンル:静寂系/価格:100円/DL制限:なし】


放課後の静かな図書室、窓から差し込む夕日と、ページをめくる音。

「話さなくていいけど、隣にいていいよ」と、そんな気持ちだけが詰まった夢。







最初は、何も起きなかった。


購入者のログを見ても、コメントは「落ち着く」「寝る前にちょうどいい」程度。


でもある日から、夢に“違和感”が生まれた。





図書室の隅、誰かが本を読んでいる気配。

ページをめくる音が、彼女のものではない。


ふと視線を上げると、いつも誰かがこっちを見ている。


顔は見えない。影のような存在。

でも、確かにそこに「誰か」がいる。


“夢の提供者”であるほのか自身は、その夢を何度も見ることができる。

登録者特典として、夢の様子を観察・記録できる仕組みがあるのだ。





翌朝、《メイセキム。》の販売者アプリにログインすると、異常な通知が届いていた。


【再訪ユーザー:46名】

【うち、特定1ユーザーが20回連続滞在】




コメントには、こう書かれていた。


「あの子、何も言わないけど、たぶん誰かを待ってる」 「毎晩行くたびに、少しずつページを進めてる」 「もしかして、“話しかけてほしい”のかな?」




ほのかは、そのログを読んで、手が止まった。


自分が“黙っていていい夢”として作ったはずの場所に、

誰かが“こちらの気持ち”を読み取ろうとしていた。





その夜、夢に入ると、

本棚の間から、ひとりの少年が出てきた。


制服姿、目元がやさしく、髪は少しだけ乱れている。

彼は微笑んで、そっと声をかけてきた。


「今日、読んでたのって……最後のページ、だったよね」


夢の中なのに、ほのかは少しだけうなずいた。


「ありがとう。君の夢に、ずっと来てよかった」


そう言って彼は、本のしおりをそっと渡して去っていった。





目覚めた翌朝。

ほのかの手のひらには、紙で折られた小さな栞が残されていた。

開くと、文字が一行だけ書かれていた。


“今度は、君の話も聞かせて”





《メイセキム。》注釈:


夢提供者は、夢内の構造や訪問者の行動を“反映”として感じることがあります


再訪者との間に感情の共鳴が起こる場合、夢の一部が変化する可能性があります


「見られる夢」は、提供者の意識によって、“語りかける夢”に変わることがあります

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