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虹花 ありさ @て い ふ
7,178
うp主
48
#学パロ?
「…。」
「わかりました、あなたがそうしたいって言うなら、私とは利害が一致してるから、これはあげます。 」
_彼女のこういうところは、母親に似てしまった。
「…助かります。」
メイドは頭を下げた。
「でも、どうして欲しいんですか?」
「…私は身分をまた変えなくてはならなくなってしまって。」
メイドは少し言いづらそうにしながら、頭を搔く。
メイドは優しく微笑んだ。
「…私には、ちょっとした理想と、目的があるんです。」
メイドはそう言うと立ち上がり、ワインを取り出して自分のグラスに注ぐ。
「お気に入りのりんごジュースを持ってきますね。」
少女は息を吐いた。
「…もうりんごジュースで喜ぶ歳じゃないというのに。」
頬を膨らませ不貞腐れた少女に、メイドは笑いかける。
「まぁまぁ、すごく高いものですから、きっと気に入ると思いますよ。 」
「…そうなんですか!?」
あぁ、良かった。
彼女はずっと優しさを手放すことはなく、父の背中を見て育ってくれたのだ。
_この財閥をもらいたいことは事実だ、だが彼女に_冷酷になって欲しくなかったことも、同じくらい大きな思いなのだ。
「…ありがとうございます、メイドさん。」
「私は…父を追いかけようと思います。」
「…貴女に、任せてもいいですか。」
___
「……」
とうに炎も消え、 煤だけが舞っている。
そんな焼け落ちた館の廊下で、ヒナは崩れ落ちるようにして座り込んでいた。
「…」
その目に光はなく、ただ無限に続く闇をそこに宿しており、到底、今までのヒナと同じヒナとは思えない、深い絶望がそこにはあった。
人を殺すことは悪いことだと、兄から散々言い聞かされてきたし、ヒーローをやっている時も、1度たりと人を殺したことなどなかった。
_もう終わりだ。
_悪いことだとわかっていたのに。
_どうして?どうしてそんなこと_
「…」
菓子はヒナが辛そうにしているのを見て、必死に頭を撫で、抱きしめ続けた。
「ヒナさん、だいじょうぶ、だいじょうぶですよ」
「こわくない、こわくない…」
「こわくないですよ…」
この場所はすでに真っ黒だというのに、菓子がいる場所あたりだけは、日常を鏡写ししているかのような、そんな悲しみがあった。
_もう戻らないというのに、それに縋ってしまう自分が憎かった。
けれど、今菓子の方を向けば、全てが焼け落ちた場所であることをきっと突きつけられる。
(…)
(…怖いよ。)
(ごめん、ダメな妹で…)
きっと菓子も辛いだろうと頭では分かっているし、本来は_こっちが慰めてあげる側だ。
それなのに今は_動けない。
もう動くのも、目をそらすのも、何もかも怖くてたまらない。
_この場所を見るのが_怖い。
何十年、何百年も守ってきて、ずっとこの場所が安心できる家だと思っていた。
__頭ではわかっていた。
こうなることは覚悟した方がいいことくらい。
_けれど、受け入れるのは嫌であった。
「ひなさん、大丈夫、大丈夫ですよ、怖くない、こわくないです。」
「…」
菓子の声がどんどんと弱まって、悲しそうなものに変わっていく。
きっと答えてくれないからだ、だが今のヒナにそれを考える余裕はなかった。
_あの時、どうすればよかった?
あの時_兄に無理をさせればよかった?
(……わかんない、わかんない…)
「ヒナ様!!!」
メイドや執事も駆け寄ってきた、こんなに醜いというのに、どうしてかヒナには分からなかった。
焼け、爛れ、崩れ落ちてきた天井がヒナを黒く染める。
なにかがこちらに手を伸ばし、今にも足を掴もうとして、ヒナの身体を静止させてしまう。
もう、どうしようもないと_そう錯覚させてしまう。
こんなにも悲しいと言うのに、涙は一切出やしないのが、あまりに歪で_気持ち悪かった。
___
何日も歩くうちに、空は晴れていった。
今は暖かい陽がこちらに差し込み、2人を包み込んでいる。
Latteはふと聞いてみた。
「…この旅が終わったら、八幡宮さんはどうするの?」
なんとなくで聞いてみた、気になったから、なんてそんなあまりにチンケな理由だ。
八幡宮は歩きながら考える仕草を見せると、向けていた背をひっくり返してこちらに向き直る。
そして楽しそうに笑った、太陽に当たる向日葵のように、純粋な笑みを浮かべた。
「私は研究に戻るかな〜。」
相も変わらず八幡宮らしい理由に、Latteは安心すら覚えた。
_彼女はLatteが何を聞いたとて弱いところなぞ見せようとしないし、それが彼女だ。
_そう、きっとそう。
彼女は弱くなんかないし、どこまでもどこか狂ってて、それが彼女らしさで、心強すぎる理由である。
_彼女はたまに悲しそうな目をする、どこか寂しそうで、雨に濡れたみたいな_そんな顔をする。
(…八幡宮さん、どうして…そんな顔をするの?)
(……なにか隠してるの?)
(…この違和感は…なんなの?)
___
_研究。
それこそが、生きている理由。
自分を殺してでも真相を追い求めて、それが嫌な結果を招こうと、悲しみが生まれようと、どうでもいい。
_だけど
二十何回目だろうか、弾丸が身体を貫いて、瞬く間に再生していく瞬間を感じて、1週間が経った頃_
_体調に、異変があった。
軽い異変だった。
少し精神が不安定になる_それだけ。
だが少し_嫌な予感がした。
何かが違うと、そう感じたのだ。
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