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壁のない一室で、ひどく中性的な誰かが立っていた。
その誰かは遠目に見てもわかるぐらいに美しいお人であった。
しかし、その誰かはとにかく中性的で、ギリシャの彫刻を彷彿とさせるその肉体美を見たときには、若く力強い男性のようにも見えたし、瑞々しくはりのある女性にようにも見えた。
足元からなぞるようにその誰かの体を見た。
足の甲は高くそこに毛は見受けられない。爪は切り揃えられ、健康的な淡い桃色をしている。土踏まずは深く、全体的にほっそりとした足であった。
すねの毛は見えない。ひざは弓なりにすらっと伸びており、程よく筋肉がついている。そこに、女性的な曲線の美も感じるし、男性的な機能美も感じる。
腰より下には下着をつけている。それはトランクスともパンティとも違うようだ。しいて言えばボクサーのように見えなくもないが、もものゴムにはレースがついている。
その下着には太く浮き出る直線もなければ、細く沈み込む直線もなかった。また、下着には窓がついているようにもついていないようにも見えた。股の部分にやや膨らみがあるように感じなくもないが、それが女性の丸みなのか男性の丸い実なのかは分からなかった。
上半身は何にも覆われていなかった。
腹にはくびれがあり、うっすらと横に線が入っている。へそはきれいにへこんでおり、周りに毛は生えていない。
胸は微かに膨らんでいるようにも見えるし膨らんでいないようにも見える。膨らんでいるにしても、男性の胸筋と言われればそのように見えるし女性のふくよかさだと言われればそのように見える。視覚的にはそれが柔らかそうにも堅そうにも感じられた。
顔に髭はなく、これまた中性的な顔立ちをしている。鼻が高くて、色は白い。頬はやや紅色が混ざっている。やや肉が落ちたその顔は、凛々しさと甘いルックスを両立していた。
髪は肩にかかるかかからないかぐらいで男性にも女性にもいそうな髪型をしていた。ストレートで光沢のある髪は、風に揺れるたびに心地に良い香りを振りまいている。
たまらず私はこの中性的な誰かに、男なのか女なのか訊ねた。
するとその誰かは、「見た通りですよ」と答えた。
だから私は、この誰かを男だと思うことにした。
そう思ったほうが公開するには都合がいい。