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第11話 「最後の夏」夏の大会。
柳城高校は、3回戦を突破していた。
ベスト8。
2005年以来、届きそうで届かなかった場所。
球場には、久しぶりに柳城の校歌が響いていた。
「あと二つやな」
ベンチで田村が笑う。
その横で、小早川啓介はミットを抱えながら頷いた。
まだ一年生。
だが、この夏。
福間監督は啓介を正捕手として使い続けていた。
「緊張してるか?」
田村が聞く。
「してます」
正直に答える。
田村は笑った。
「それでいい」
グラウンドではノックが始まっていた。
対戦相手は――
西陵学園。
県内最強。
優勝候補。
スタンドから見ても、雰囲気が違った。
打球音。
選手の体格。
動きの鋭さ。
小早川は息を飲む。
(強い……)
その時。
「下向くな」
福間監督の声。
「強い相手とやれる場所まで来たんや」
その言葉で、少しだけ肩の力が抜ける。
整列。
礼。
――プレイボール。
初回。
西陵打線が襲いかかる。
連打。
送りバント。
犠牲フライ。
あっという間に2失点。
ベンチが静まる。
だが田村が声を張る。
「まだ終わってねぇ!!」
その声で空気が戻る。
3回裏。
柳城反撃。
二死二塁。
打席には小早川。
(繋げ……!)
低めを逆方向へ。
――カキン!
ライト前。
タイムリー。
2対1。
スタンドが沸く。
「よっしゃあ!!」
ベンチが飛び出す。
だが、西陵学園は揺るがなかった。
中盤。
わずかな守備の乱れ。
そこを逃さず追加点。
5対1。
点差以上の差を感じていた。
それでも柳城は食らいつく。
声を出す。
走る。
繋ぐ。
7回。
二死満塁。
打席は田村。
三年生。
最後の夏。
球場全体が静まり返る。
初球。
真っ直ぐ。
振り抜く。
――カキン!!
鋭い打球。
だが――
サード正面。
アウト。
田村は一塁へ走りながら叫ぶ。
「くそぉっ!!」
その声が球場に響く。
最終回。
最後の打者、小早川。
2ストライク。
(終わるな……!)
振る。
――空振り。
ゲームセット。
柳城高校 1―5 西陵学園。
ベスト8敗退。
整列。
「ありがとうございました!!」
涙を流す三年生。
空を見上げる者。
その場から動けない者。
小早川は悔しさで唇を噛んでいた。
あと二つ。
その距離が遠かった。
ベンチへ戻る途中。
田村が立ち止まる。
「小早川」
「はい!」
「次は、お前らや」
汗と涙でぐしゃぐしゃの顔だった。
「絶対、ここで終わるな」
その言葉が、小早川の胸に深く残る。
夕焼けが水路を赤く染めていた。
三年生の夏が終わる。
だが――
柳城高校野球部の“再建”は、ここから始まろうとしていた。
第11話 終
#高校生