テラーノベル
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とても大きな事故が起きた。
それは、生配信中だった。
いつも通りの企画。
いつも通りの流れ。
コメントも回ってる。
あっきぃは、ちゃんと笑っていた。
ちゃんと相槌を打って、
ちゃんと“役目”を果たしていた。
――はずだった。
企画終盤、トラブルが起きた。
段取りミス。想定外の空白。
一瞬の沈黙。
誰かが慌ててフォローに入ろうとした、その時。
あっきぃが、反射で口を開いた。
【あき】「……ごめん、俺がいなくても大丈夫だから」
空気が、完全に止まった。
コメントが流れなくなる。
誰もすぐに笑えない。
【けち】「……え?」
けちゃの声が、かすれる。
あっきぃ自身も、はっとしている。
【あき】「ち、違くて!」
「今のは言い方ミスって――」
取り繕おうとすればするほど、
言葉が軽く、空回る。
ぷりちゃんの顔が、はっきりと変わった。
笑ってない。フォローに回ってない。
見抜いた顔。
まぜたんは、画面を見たまま動かない。
誰も突っ込めないまま、配信は進む。
時間も進んでしまう。
でももう、戻れなかった。
【けち】「い、一回配信切るね!」
「みんなごめんね!」
配信が終わったのを確認した瞬間。
【ぷり】「……ちょっと待て(低 声」
「今の、どういう意味だ(低 声」
あっきぃは視線を逸らした。
【あき】「ほんとに深い意味ないって!」
「流れ的に――」
【ぷり】「嘘 (即答」
「流れで出る言葉じゃない」
空気が、一気に重くなる。
みんなも、はっきり気づいた。
【あと】「あっきぃ」
「それ、前にも言ってたよな」
「無意識で」
逃げ場がなくなる。
あっきぃは、笑おうとして、失敗した。
【あき】「……だってさ」
声が、少しだけ掠れる。
【あき】「最近、俺がいなくても」
「普通に回ってるじゃん」
「フォローも早いし」
「俺、いなくても成立するなって」
誰も、すぐに否定できなかった。
その沈黙が、答えみたいになってしまった。
【あき】「だからさ、変に心配されるくらいなら」
「最初から期待されない方が楽で――」
【ぷり】「やめろっ!」
ぷりちゃんが、声を荒げた。
【ぷり】「それ以上、自分で削るな」
あっきぃが、ぎゅっと拳を握った。
【あき】「削ってない」
「戻ってるだけ」
「元の俺に」
まぜたんが、静かに言った。
【まぜ】「それ、“元”じゃない」
「一人で抱えてた頃の戻り方だ」
その一言で、全員が確信する。
――闇期だ。
隠してた。
気づかせないようにしてた。
でも、もう無理だった。
あっきぃは、観念したみたいに息を吐いた。
【あき】「……はぁ。バレたなら、もういいや」
【あと】「いいわけないだろ」
あっとくんが、はっきり言う。
【あと】「勝手に納得すんな」
「終わらせる前提で話すな」
あっきぃは、目を伏せた。
【あき】「安心、しすぎたんだと思う」
「だから、落ちた」
「守られてるのが普通になって」
「戻れなくなった」
誰も、笑わなかった。
これは事故だった。
でも同時に――
助けを出さざるを得ない合図だった。
配信のログは消えない。
切り抜きも回る。
でも、それ以上に消えなかったのは、
あっきぃの言葉だった。
「俺がいなくても大丈夫」
その一言で、全員が理解した。
――今度こそ、本気で引き戻さなきゃいけないって。
コメント
2件
コメント失礼します! ストーリーの作り方とか繋げ方 すっごくお上手ですね! 続き楽しみにしてます❣️