赤×水
制服の下の余裕.
赤「こ~ら、また夜道1人で歩いてるでしょ」
柔らかく低い声に振り向くと、近所の警察署で働く若い警察官、
大神赤が立っていた。
制服姿の彼は、まだ20代前半だというのに,
落ち着いた雰囲気とどこか余裕のある表情を見せる。
水「赤ちゃん……、また見回り…?」
赤「そ~だよ。こんな時間に会うの、最近多いよね」
赤「何か危ない事あったらど~すんの?」
彼は、微笑みながらも軽く眉を上げて問いかける。
彼の言葉は叱るようでもなく、どこか揶揄いの半分のような調子だ。
水「特に危険な事無いよ~…?仕事帰りがちょっと遅くなるだけ…‼︎」
そう答えると、彼は「なるほど」と頷いてから、
歩き出す。
赤「じゃあ…、俺も見回りついでに家の近くまで送るね…」
水「えっ…、申し訳ないし良いよッ…?」
赤「俺の仕事だからい~の」
赤ちゃんは軽い調子でそう言うけど 、
その言葉の奥には、確かに優しさがあるのが分かる。
彼と出会ったのは、2年前。
夜22:30分。
新人警察官だった彼に、交差点で声を掛けられたのがきっかけだった。
赤「こんばんは、夜遅い時間までお疲れ様です」
その時の彼の柔らかな笑顔が印象的で、
なんだかほっとしたのを覚えている。
それからというもの、夜道で彼と会うことが増え、
軽い挨拶を交わしたり、少しだけ立ち話をするようになった。
彼の言葉や態度には余裕があって、僕よりも歳下なのに、
まるで自分が包み込まれるような感覚になる。
水「それにしても赤ちゃんって、落ち着いてるよね~」
歩きながらふとそう言うと、彼は少し驚いたような顔をした。
赤「そ~かな?」
赤「良く歳上の人には、余裕ありそうって言われるけど」
水「僕もそう思うな~…」
水「何か、緊張しなさそうだよね。赤ちゃんって。」
赤「へぇ…、そう言われると、ちょっと嬉しいかも…笑」
彼は少しだけ微笑むと、僕の顔を覗き込むようにして言った。
赤「でも、俺も緊張してる時あるよ?」
水「え、そ~なの…?」
赤「今とか」
そう言われて、思わず立ち止まってしまった。
彼は一歩だけ僕に近づき、笑を浮かべる。
赤「嘘じゃないよ…。好きな人の隣居る時って、誰だって緊張するもんでしょ?」
水「……えッッ、?」
その言葉に、頭が真っ白になる。
赤「驚いた…?笑」
赤「言わなきゃ伝わらないな~って思ったからさ」
彼はさらりと言うと、少しだけ表情を緩めた。
赤「こ~いうの、ずるいよね」
赤「でも、俺としてちゃんと伝えたかったから」
水「赤ちゃん………」
余裕そうな態度に見えて、何処か真剣なその瞳を見つめると、胸が熱くなるのを感じる。
それから彼は、いつものように僕を家まで届けてくれた。
赤「返事、いつでも待ってるから」
水「ッッ……」
赤「ほら,そんな思い詰めた顔しないの~。可愛い顔が台無しだよ?」
水「僕の返事…、待っててくれるッ…?」
赤「うんッ…いくらでも待つよ…」
赤「だから、いつか返事、ちゃんと聞かせてね」
水「うんっ…!」
赤「ん、い~こ」
赤ちゃんは僕の頭を優しく撫でて、今まで来た道を戻って行った。
その日から彼の言葉が頭の中で何度も響いて、鳴り止まない。
彼の存在が特別なものになって行ったのは、言うまでもない。
制服の下に隠された余裕と優しさに、僕はすっかり恋をしていた。
end.
これって完結させた方がスッキリしそうですね…🥹