TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


ーーあれ以来、ユキは本当に穏やかになった。



こっちも嬉しくなる位の笑顔を見せてくれる。



きっと、これが本当のユキなんだろう。



そして、もう一つ変わった事がーー



“もう自分を偽る必要はありませんから”



これまで偽装していた姿、特異点としての本当の姿のままに。



他への接し方は相変わらずだけど、ユキの銀色の姿は徐々に村の皆に受け入れられていると思う。



特にミイのユキへの懐き様ったら、少し妬けてくる位。



それでもユキの不器用で少々焦った様な接し方が、何処か微笑ましくもある。



かつての氷の様な雰囲気は薄れていき、ユキと一緒にいると、こっちまで暖かい気持ちになる。



毎日が新鮮で、楽しくて仕方ない。



どうかこの時が、少しでも長く続きますように……。



でも……この平穏は、何か突然やってくる禍の前触れのようなーー



そんな気がしていた……。




※ここ数日の平穏。



初めから狂座との闘い等、無かったのでは無いか? と思える程、平穏で穏やかな日々が続いていた。



だからこそ、違和感や不安は募るばかりとなる。



知らない処で、何かが確実に進められている感覚。



それは破滅への序章なのかと。



***



その夜の夕食後、ユキはアミの膝上で、すやすやと寝息をたてて眠っていた。



それはこれまで、ほとんど眠る事の無かった時間を取り戻すかの様に。



本当に安らかな寝顔だった。



アミは膝上で眠り続けるそんな彼の白銀髪を、慈愛に満ちた表情で優しく撫で続ける。



異質な迄の白銀色髪。その白銀髪は光に照らされると、美しい迄に輝いて見える程の美麗さを漂わせていた。



穏やかで暖かい時間が、ゆっくりと流れていく。



その穏やかな時間の中、ユキの髪を撫で続けていたアミも何時の間にか、ゆっくりと眠りに堕ちていくのであった。



ある違和感を感じ、ユキは不意に目を覚ました。



“また何時の間にか、眠ってしまったのですね……”



見上げるとアミも膝枕した状態のまま、すやすやと寝息をたてて眠っていた。



「何時もすみません……」



“そしてありがとう”



アミを起こさぬよう起き上がったユキは辺りを見回し、毛布を座ったまま眠るアミに羽織わせる。



“先程の違和感は?”



ユキは窓の外を見る。



ここ何日か、ずっと感じていた小さな違和感。



それが何か形となって感じ、一つの確信となった瞬間だった。



ユキは眠るアミを眺める。



「すぐに戻ってきます」



そう聞こえる事無く囁き、ユキは此処を後にするのであった。



***



「これで全ての情報を送信……と」



集落の外れにある森の木陰で、黒装束を纏った赤い髪の一人の男が、腕に嵌めてある機械の操作をしていた。



「……任務完了」



狂座第四十七軍団長スクはその瞬間、今までの緊張を解き、思わず笑みが零れそうになる。



数日に渡る、完全に気配を消しての調査は流石に骨が折れた。



何より特異点の存在。

戦闘禁止令。



スクはその赤髪をかき上げながら夜空を見上げ、ホッと息を吐く。



残された役目は本部へ帰還するだけ。



近い内にこの地は、一人残らず消滅するだろう。女子供問わず、全員皆殺しの予定だ。



そう思うとスクは自分の功績により、この任務が成功に導かれた事になる事を思うと、自然と心が昂揚していく。



「今までの違和感は、これだったんですね」



そんな心の緩みが、近づいて来る者が自分の近くにまで侵入を許している事に、スクは気付かなかった。



「なっ!」



“何時の間に!?”



スクはその声がした方へと振り返ると、白銀髪をした少年が立っていた。



それは雪一文字を携えたユキだった。



「この私に気配を悟らせず、ここまで接近を許すとは……」



“流石は特異点と謂った所か……”



スクは数日に渡る調査の結果、侍レベルが異常に低く、それに対して異質な迄の雰囲気を持つこの少年こそが、特異点である事を確信していた。



勿論、それらは全て本部へ報告送信済みであった。



「アナタの気配の消し方は流石でしたが、気の緩みが出たのは失策でしたね」



ユキは冷酷にスクを見据えて囁きかける。



「ちっ……」



“どうする? 逃げるか? だがーー”



恐らく逃げられない。逃がすつもりが無い事を、スクは彼の雰囲気で、すぐに察知した。



「全く……」



“見た目は餓鬼だが、こうやって感じる雰囲気は、とんでもない化け物だなコイツは……”



逃げられない以上、闘う以外に道は無い。



スクはサーモの電源を落とした。



下手に測定して、敢えて絶望に浸る必要は無い。どの道、相手は臨界突破の特異点。



とても及ばない事は、測定しなくても雰囲気で一目瞭然。



機械に頼り過ぎると、見えるものまで見誤る事を、良く知っていたスクの判断だった。



“まあいい……”



スクは腰に差した刀を鞘から、ゆっくりと抜き放つ。



特に何の変哲も無い日本刀。



“私の任務は既に完了している。特異点と呼ばれた者との闘いを最後に果てるのも、悪くは無いだろう”

雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚