テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
44
18
#短編
水底 ずい
376
13ed1
130
さて。今回はこの七ヶ崎高校の七不思議についてでも話そうか。一応怪談についてのお話だから、ホラー短編としては間違っていないはずなんだけど。まあ、部長さんの判断に任せましょう。
でもその前に。
僕にも僅かながらの良心が存在するらしくてね。此処まで順番に読んできた人は、これ以上読まないことをオススメするよ。特に、これを図書室倉庫で読んでいるなら尚の事。
部活の一環として作られた『ヨモツ日記帳』が今後どういう保管のされ方をするかは分からないけど、学校が存在しているなら間取りはそう変わらないはずだ。そして、この本が燃やされていないことを祈るとしよう。
あとは──、そうだね。『括られの木』『踊り場の少女』『紅桜』『影』『子どもの時間』を読んだ人も、この先を読むことは勧めない。
つまり、僕こと『佐枝子』が書いた作品を読んでくれた人は読まない方が良いということだ。理由はこの後に書くつもりだけど、先にも言った通り、これ以上読むことを勧めはしないよ。
此処を読んでいるということは、わざわざ頁を捲った、ということだね。ダメと言われた分だけ気になるのは、人間の性みたいなものだ。僕もついやってしまうから、人のことは言えないね。はは。
それで七ヶ崎高校の七不思議についてだったね。
キミはこの学校の怪談について、一体いくつ知っている? 正直七不思議といえど、細かいものもあわせれば十や二十ではきかないだろう。どこの学校にもある話だし、そもそもどれが本当の七不思議か分かりゃしない。
要は七不思議という怪談は、案外尾ヒレがついてまわって出来た模造品みたいなものというわけだ。本物を隠すにはちょうどいいというわけさ。
今後七不思議が大きく改変することはないだろうけど、今これを書いている平成七年時点で噂されている七不思議をあげてみようか。
一、旧校舎にある、一本だけ生えた木には絶対触ってはいけない。触ると木に取り込まれてしまう。
二、学校のとある鏡に囚われると、二度と戻ってこられない。
三、桜の木の下には死体が埋まっている。
四、誰かの影が離れても気付かないふりをしなければならない。影に気付かれると、その影の持ち主は死んでしまう。
五、夜の校舎で放送を聞くと、知らない世界に引きずりこまれてしまう。
六、本自体が怪談と呼ばれる本が存在する。読むと異界に連れられてしまう。
七、開かずの扉の先は違う世界に繋がっている。
何れも細かい部分は省いたものの、数ある怪談の中で特に派生先の多い怪談が上記の七つになる。その派生先の怪談を一つひとつ極限まで削り取ると、最終的には上記のような存在になるわけだ。
もちろんそれ以外の怪談も存在するが、これらよりも格段に数が減るために今回は触れないでおこう。
派生先が多いということは、どういうことだと思う? 怪談というものは、なにかしらの理由がなければ広まらないはずだ。ということは、本物が混ざっている率が高いということだろう。
とりあえず、僕は調べるのが好きだったから、この学校やこの町に関わる事件事故を調べてみたんだ。この学校もあまり良い場所に建てられたわけじゃなさそうだけど、まあこの作品の最後に資料を貼っておいたから、きみにも是非見てもらいたい。きっと気に入るはずだ。
で、結論から言うと大元になる事柄は存在したんだ。多分それらがホンモノだろうね。
ただし、開かずの扉と本自体が怪談と呼ばれるものについては確認が取れなかった。この二つは派生先が多いにも関わらず、他の怪談のように大元が見つけられないなんて不思議じゃないか。
だから僕は、誰かが七不思議用にでっち上げたんじゃないかって考えている。馬鹿げた話に聞こえるかもしれないけど、こんな話を聞いたことはあるだろう?
『元々何もなかった場所に一つの怪談を蒔いたところ、いつしかそれが実際にあったかのような話になり、そのうち幽霊を見る人が出てくるようになった』
ありえない、とは言い切れないね。しかし、自分で検証するにはとにかく時間が足りない。種が芽を出す頃には卒業しているかもしれないからだ。
でも、都合が良いことに七不思議というものは、既に土台が完成されている。実験するにはちょうど良かったんだ。
僕は仲の良い友人に五つのホンモノの怪談と、でっち上げられた二つの怪談をこの図書室倉庫で話してみた。此処には図書室第二倉庫と呼ばれる、開かずの扉があったからね。
もちろん彼は心身ともに健康なスポーツマンだったし、その開かずの扉も普通に開くただの扉だ。でも実験をするからには、舞台は整えないとだろう。
それでその彼がどうなったかというと、話をした翌日から行方不明さ。
ははは、面白い結果だろう。まあ現在五つの怪談を知っている僕に何も起きていないというのだから、全くの偶然なんだろうがね。
さて。きみはこのあと僕が調べた資料を見るはずだけど、二つだけ面白いことを先に話してあげよう。これが、これ以上読まない方が良いと言った理由にもなる。
一つ目は、怪談の大元になった事件事故以外にも奇妙な行方不明事件が度々起きていること。
実験する前は、この時折起きている行方不明の学生も、たまたまホンモノの怪談を知ってしまったからではないかと思っていたんだ。だから、この学校の七不思議は全体的に違う世界へ繋がる系が多いんじゃないかってね。
でもさっきも言ったけど、五つの怪談を知っている僕に何も起きていないんだから、正直よくわからないな。ただ、この七ヶ崎高校で度々行方不明事件が起きていることは事実だよ。
二つ目。これが僕の一番話したかったことだ。
実はホンモノの大元になった事件事故の被害者は、それぞれ漢数字と怪談に関わる名前になっていたんだ。その子が怪談を呼んだのか、それとも選ばれたのか。何れにせよ興味深い話だろう?
だから僕は、残りの二つもホンモノにしようと思ったんだ。実験が成功すれば、ホンモノの七不思議を知った人間にはきっと何かしらの怪異が降りかかるはずだ。
まあ、そうであってほしいという勝手な希望もあるがね。僕はこちらの世界とあちらの世界の垣根がなくなればいいと思っている。怪異に侵食されるなんて、少し面白そうだろう?
それで残りの二つをホンモノにするには、六と七の数字、且つ怪談に関わる名前の人間が必要なわけだ。とりあえず、七は既に解決している。僕だ。
僕が怪談の大元になれば、残りの六を探す役割はこの部誌がしてくれるだろう。既にこの部誌の中にはホンモノの怪談が全て入っている。もちろん実際にあった事件事故を媒体に、書きやすいようフェイクを盛り込んではいるけどね。
六の条件を満たす人間が現れれば、自動的にこの本が『本自体が怪談と呼ばれる本』になるわけだ。仮に条件が満たされなくとも、この本を読んだ人間が僕の友人のように行方不明になるのか試みるにはちょうど良い。
だから、コレは一種の賭けのようなものだね。なんせ僕が大元になるってことは死んでるってことだから、この目で実験が成功したか確認できないのが残念だよ。
では、これから僕は図書室第二倉庫で灯油を被って焼かれるとしよう。消火設備も備わっているから、そこまで燃え広がりはしないはずだ。
焼身自殺以外にも方法はあるだろうけど、開かずの扉が開かないようにするには、開けてはいけない扉にするのが一番はやい。
最後に。此処まで読んでくれたきみに心から感謝する。
あなたが六の数字、且つ本に関わる名前であることを切に願う。
七ヶ崎高校二年 七種子元(ペンネーム佐枝子)
コメント
1件
うわ、これ…めっちゃゾクゾクしたわ。七不思議を“でっち上げ”で増やそうとする主人公の狂気じみた冷静さが怖すぎる。最後の「あなたが六の数字、且つ本に関わる名前であることを願う」って、読者ごと巻き込むメタ構造がガチで刺さった。タイトル回収も綺麗だし、この人の書く作品は“強さの理由”じゃなくて“恐怖の設計”が完璧。次も読むわ🔥