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_奴らの足取り__🥀𓈒 𓏸
「お!来た!!ダレイくーん!!」
高そうな車に寄り掛かりながら、ダレイの存在に気付いたシロエは声を張り上げた
後部座席に大人しく座っているふたりは何やら話をしているようで気づいていない様子だ
「すみません、遅くなりました」
「全然〜寧ろ手掛かりを見つけてくれて感謝するくらいだね」
シロエが助手席の扉を開け、ダレイを手招きする
小さく会釈をすると素直に中に入った
シロエが微かに笑うと扉はそのまま閉まる
「……ほーんと大人だねぇ〜…」
車は既にダレイの指示と共に走り出していた
ここから近くも無ければ遠くもない基地は、道がかなり複雑で一般人は通りにくい
隠れるとしてもそこが1番有利で安全だろう
車の中は無言だった
シロエが曲をかけながら鼻歌で楽しそうに歌っている
エイデンとオリビアは、大人しく座っており,先程の行きの時間とは桁違いの静けさだ
それでも構わないと思うのは…俺だけだろうか
「良いよね〜この曲!ダレイくん知ってる?」
「曲は聞かないもので」
「仕事熱心なのか!さぞ頼りにされてるんだろうね」
「いえ、そんなことは…」
エイデンがじっ…とシロエを見つめている
そんな視線を感じ取ったのか…または元々気付いていたのか、シロエがミラー越しに目を合わせる
こんな状況なのに、緊張感もなく微笑む彼の顔は、エイデンを更に強ばらせた
「…何も無いな、逃げられたか」
基地に着き、それぞれ捜査を単独で行ったが,誰一人、人の気配はなく,もぬけの殻だった
近くに建てられている小屋には何も無く、すぐ近くに焚き火の燃やした後だけが残っていた
「逃げられたっすかね?」
「……」
捜査が困難になったその時、奥からオリビアの呼ぶ声が聞こえた
その場駆け足に寄ると、木々で覆われたひらけた場所に出る
木はなにかに打たれたかのように銃弾が幾つも当たっていたのだ
「……なんだ?これ」
「調べてみます」
小瓶からサラサラ砂をばら撒くと、人の形が浮び上がる
膝を着いた男の姿と、目の前に立っている男の姿。
「マイクだ」
という事は少し前までここに奴らがいたのだ。間違いない
「見る限りかなり乱暴したみたいだね」
至近距離でマイクの形をした砂を見つめるシロエは隣の男をちらりと見る
「……ッ!バロイン…!?」
「社長、この男の事……なにか知ってるんすか?」
「此奴……ッ」
彼に出会って初めて人間らしい表情を見た気がする
どうやらシロエはバロインと言う男の事を知っているらしい
決して激しく怒る訳でなく、雨音のように静かに喋る声には怒りが込められてるのがわかる
「嘗て街にこの男が現れたんだ。通りすがりの道行く人、更には子供構わず皆殺し 罪の無い人の命を一瞬で奪った殺人鬼だ」
「……そんな…!」
オリビアの嘆くような声が聞こえたが、シロエは更に続けた
「まだ僕が捜査刑事をしていた時、この男に同僚部下全員殺された。」
「……ッ!」
「この男は…捕まえずに僕が殺す」
言葉と同時に砂を腕で思い切り払うと、形が崩れ落ちれ、やがて地面へとサラサラ積もる
シロエは手に残った砂でさえ、汚いものを払うように払い捨てた
「この男が…」
ダレイは胸元から、小袋を取り出す
かつてマイクがダレイの為に用意していた物だ
何かの役に立つと思い持ってきたのだ
「……ダレイさん…それなんすか?」
小袋を開けると、小包と共に、何かが出てきた
マイクが毎日身につけていた青色の綺麗なブローチだ
「おや、珍しい宝石だね」
シロエが興味津々にブローチを覗いてくる
「まぁ…綺麗…」
ダレイはブローチだけを取りだし腕に身につけた。
小袋を再びしまうが、一つだけ、マイクが前回事件に使っていた紙切れの入った小瓶を取り出した
そのまま跪いている、マイク形をした砂に全てぶつける
勢いよくぶつかった欠片は辺り一面、キラキラと舞う
「…………そんな強くやらなくても良いんだよ…ダレイくん」
「…えっ!?……すみません…つい」
欠片はそのまま来た道を戻り始める
「急ぎましょう!遠ければ遠い程、あれは速度が早くなるのです!」
オリビアが走り出すと、その他3人は後に続くように車に戻り、欠片を追いかけ始めたのだ
「しかしダレイさん。なんであれが見えるんすか?」
後部座席に座ったエイデンが疑問に話しかけてくる
「…あれって言うのは欠片か?」
「あれは一般の方には見えないようになっているのです」
「そうなのか…」
そんなの色々あり過ぎて分からない
ただ、全てあの店に行ったことがきっかけで変わった事は承知だ
「マイクの作ったカクテルを…呑んだからだろう」
「なるほど…となると、マイクさんの小包は全て使いこなせるんじゃないっすか?」
「こんな面倒な仕事……お手上げだな」
「あははっそんな事言わないでよ〜僕たち凄く君を頼りにしてるんだからさ〜」
欠片はやがて、人気の無い道を通り続ける
次第に,どこに向かっているのか想像がついてきたのだ
「これは…まさか」
「港……だな。船で国外に行かれでもしたら大変だ」
風景はやがて海で大きく取り囲われる
沖には大きな客船や小舟まで船がズラリと並べられており、観光客で人混みも激しい
既に動きだしている船もあれば、戻ってきた船も行き来している
行けるところまで車を走らせた後、素早く車から降りると、ダレイが真っ先に追いかけた
欠片はやがて、沖付近まで近付い次第には人混みの中をグイグイ進む
「失礼……!!通ります!」
観光客を押しながら、欠片を見失わないようにダレイは追いかける
中には嫌味を言う人もいたがそんなこと耳に入る暇すらない
欠片はやがて、大きな客船の中へと入ろうとする
しかし、既に動きだしてしまっていたのだ
「っクソ!!遅かったか!」
「ダレイさん!俺に任せてください!!」
あとから追いかけてきたエイデンが息を切らしながらその場に立つと、少し大きめの包を水面に投げつける
水の中で泡を出しながら包みが溶けると、水がやがてブヨブヨの個体に変わっていく、
船より早いスピードで広がっていく謎の力は、やがて船の動きを止め、その場にいる多くの客がザワザワと騒ぎ出した
「海が…!?」
「ここからは歩くしかないっす!時間が無い…!切れる前に早く!!」
ダレイ、エイデン、オリビアが走り出している中、シロエはどこかへと電話をかけていた
「……僕だよ…要件は__」
その頃、船では客の悲鳴と騒ぎが多く上がっていた
騒ぎ狂う外の声を、部屋ではグリード団、そしてマイクが離れた位置に座りながら耳を立てていた
楽しそうにマロンとトランプをしていたミジは突然の騒ぎに苛立ちを隠せない
「何よ!もう!!」
「…大丈夫……だよね、バロイン…」
「……」
マロンの声と共に、バロインが席を立ち、部屋を無言で出ていった
「あたいも行くわ!マロンとマイクはここに居てね」
バロインの後に続きミジも席を外す
ゲホゲホ 咳をこみながらトランプをゆっくり置くと、マロンは離れて窓の外を見つめているマイクに近付いた
その場に止まるとマロンは目も合わせないマイクをじっと見つめながら質問をした
「ねぇ…この騒動ってマイクの仕業?」
マイクは無視をしながらポケットに手を入れ立ち上がる。歩き出す度に、鈴のような音色が響き、そのままマロンを置いて扉から出ていく
「待ってよ……マイク…!」
マイクの後に続くように、マロンも扉から出ていった
部屋は騒動を初め、誰も居なくなってしまった