【あるま視点】
ふじみや「あるまってさ、1回引き取られてまた施設に送られたんだよね?」
しんと静まり返っていた部屋の中にふじみやの声が響いた。それとほぼ同時にカタン、と筆記用具が置かれる音がした。
K「酷い話だなぁ。自分で引き取っておいて」
あるま「僕のせいだよ。僕がダメだったから。」
そう。僕のせい。血の繋がった両親に捨てられたのも、あの日引き取ってくれた両親に捨てられたのも。
ぐるぐると嫌な過去が頭を巡る。忘れたいけど忘れられない過去。忘れることなんて許されない。
プテ「なんであるまは、瞳が好きなの?」
あるま「欲しいから。綺麗な瞳、母さんに認められるような瞳が。」
もう、わかってる。瞳が綺麗じゃないから捨てられたわけじゃないって。
それに僕のことなんて覚えてなくたっておかしくないんだ。
あるま「僕の目は綺麗じゃないから。綺麗な目が欲しかったの。」
いつかふじみやに言った言葉。これが僕の人生の全てだ。
あるま母「化け物の子よ!あんたなんか私の家の子じゃない!」
あるま父「あぁ、この地に災いをもたらす気か!俺たちが何をしたって言うんだ!」
小さい頃から、こんな言葉をずっと浴びせられてきた。母も、父も、そのもっと前の先祖も。僕の家系はみんな黒い目。でも僕だけが、赤い目をして生まれてきた。
なにか化け物の生まれ変わりだとか、災いをもたらす予兆だとか。
好き勝手言われて、自身の両親にも何度気持ち悪いと言われたか分からない。
殺されなかっただけ、マシだと思う。化け物の子だ、悪魔の子だと言われ、そのまま殺されてもおかしくなかった。
だからこそ、なのかもしれない。目の色が違っても、綺麗な目をしていれば。そうしたら一緒にいてくれたんじゃないかって。
だから、綺麗な目さえ手に入れられていたら。
僕の人生はまた違ったかもしれないって。
だから僕は、綺麗な目が欲しいんだ。
だから僕は。だから。
施設から引き取られたあとも地獄のようだった。最初こそ幸せだった。
成績も要領も良くない。オマケに綺麗な瞳を見ると欲しくなってしまう。
もっと、いい成績を取らなければいけなかった。でも僕にはそれが出来なかった。
だから、また見捨てられた。
全部、自分が悪い。僕が僕を苦しめた。
ふじみや「だから言ってんじゃん。あるまの目は綺麗だって。」
全部話し終えて一息つくとふじみやがそんなことを言った。
あの日もこうやって、ふじみやは僕の目をほめてくれた。
それが嬉しくて、嬉しくて。
あるま「やっぱ僕にはふじみやしかいない〜!」
突然ぎゅっと抱きついても動じずに受け止めてくれて。
僕の全部が認められてる気がした。勘違いかもしれないけどそれでいい。
K「まじで唐突にいちゃつき出すのやめて?」
影。「毎回見せつけられるこっちの身にもなって?」
なんか言ってるけどそんなの関係ないね。
ふじみやと居られればそれでいい。
でも。
あるま「いつかふじみやの目、貰うからねー!」
みや「あくまでも目的はそれね。はいはいw」
ふじみやは誰よりも綺麗な目をしてると僕は思う。もちろんかげまるの目だって綺麗だし、はたさこや瀬戸も綺麗な目をしてる。
でもそれでも。
僕のことを認めてくれた唯一の人の目がいちばん綺麗で1番輝いていて、
いちばん、
欲しい。
今日も僕はそのために生きる。ふじみやが死ぬ、その日まで。
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