命を救われ託された者と、権力を持った支配者の戦い。
決戦の火蓋が切られた今……どうなるのか。
〈No side〉
能力乱闘により機械で埋め尽くされた研究室は、もはや荒地と思われるような場に変わっていた。
そんな中、残された2人が睨み合う……。
その視線にはどちらも“敵意”が熱く籠もっていた。2人が何を起こそうとするのか……今となっては予想は容易い。
『………(睨み合う)』
💚「(…ひまちゃんの分も、しっかり背負うよ。)」
💚「…さぁ、始まりだ。」
1つの風を合図に………
激しいぶつかり合いが始まった。
殺意や敵意の籠もった能力や魔力が部屋に充満する。
💚「竜巻……!!!!」
母「スカッくっ……ザッ…!!」
💚「(掠っただけ…)もう一発!!」
母「ッ…させるか!!」
母「魔技【能力解除】」
💚「!?…(竜巻がッッ…能力が消された!?)」
母「シュン!!(その隙に距離を詰める)」
💚「っしま……っ!」
母「ドカッ!!!!(殴る)」
💚「う”ぁッ〜…シュン(距離を取る)」
母「ふぅッッ…。」
💚「ッッ…殴られた……(骨…少し逝ったかも)」
💚「でも、魔技で攻撃しなかったってことは……やっぱり魔力はそこまで使えないってことだ。」
💚「それに…あの【能力解除】も魔力消費激しいだろうし……そんなポンポンと使えない。」
💚「(やっぱり……魔力が戻る前に…削らないとっ!!)」
すちは、自分の風の力を存分に発揮し相手を戦闘不能に追い込もうとする。
母は、少し残った魔力で攻撃を凌ぎながら、隙を見計らって攻撃をする。
能力と魔力の押し合いは体力を削り合う消耗戦と化した。
お互い一歩も譲らない攻防に、終わりはいつ来るのか……どちらが勝つのか……誰も分からなくて予想も出来なかった。
しかし、五分五分の状況化の中で……
気持ちに焦りが出てしまった者がいた。
隙を見せてしまった者がいた………。
💚「(ッッ……押しきれない…!!!)」
彼の見せた焦りの表情は……
母「!……ふふっニヤリ」
この場を大きく動かしてしまった…。
〈💚side〉
💚「(っ……決め手に欠ける…押しきれないッッ!)」
風の力で倒そうとしたのに…既の所で躱されたり裁かれたりする。
俺の攻撃パターンが単調だから、まだあんまり能力を極められてないから……相手に読まれてしまうんだ……もっと複雑な手で攻めなきゃ…。
でも……複雑って……何なんだ?能力攻撃の複雑化の正解は…どんなものなんだ?
💚「(分からない…そもそも俺にそんなことが可能なのか??)」
どっちにしろ、このままだと俺も消耗してしまうだけだ…。
今は魔力があるとはいえ……俺の風の力の消費も半端ない。この調子だと後数分でガス欠…。
それに………あいつも、時間が経てば立つほど魔力は回復していく……甘い攻撃ばっかしている場合ではないんだ!!
やられる前に決めろ……決めなきゃ、負けだ!!
💚「決め手に欠けるなら……今自分のできる最大を使えばいいだけだろうが!!!」
ひまちゃん………少し技、借りるよ。
ひまちゃんが見せてくれた、あの火球のような攻撃を!!
ひまちゃんの火球は本当に綺麗だった。
かっこよくて、美しくて、温かくて……その火球が好きだった。
なら俺も……その技にかける!!!
💚「……今自分ができる最大級の風の弾丸を……ッ!!!」
俺はゆっくりと魔力を掻き集め、風の塊を作り出す。
母「!!デカいッ……」
💚「見様見真似の技、完成度なんて褒められたものじゃないけど……あいつを倒すための力なら十分にある!!!」
速度も威力も倒す技としては不足なし!!
俺の魔力を込めたとっておきの技!!
💚「ッッ…行け!!!当たれ!!!」
母「っ…………」
母「ばーかッッ……ニヤリ」
母「魔技【反射】」
💚「っ!?!?なッッ…」
💚「ゴォッ!(撃ち落とされる)……グチャ!!…」
母「……焦りが見えたわね。すぐに決めなきゃって思惑が丸見えだわ。」
母「“相手がそろそろ勝負を仕掛けてくる”。それだけでも分かっていれば十分なアドバンテージになり得る……なつに教わらなかった?」
母「……あなたが仕掛けてくるなら、そのタイミングに合わせて【反射】を使うだけ。まぁ……少しずつ溜めてた魔力も無くなったけど…これで終わりね。」
💚「………………」
朦朧とする意識の中…俺は思う。
相手は自身の溜めてきた魔力を全て消費して……魔技を使って俺を倒した。
……凄くリスクのある方法、でも………その方法に俺はやられてしまった。
やっぱり………強い。こんな深手を追ったのに、俺に少し押される程度で……決める時はしっかり決める……本当に強いや。
……俺は、焦りを顔に出してしまった…。ポーカーフェイスが上手くできなかった。その隙を突かれて負けてしまった。
ひまちゃん……俺、やっぱり強くなかったや、弱かった。結局負けちゃったよ。
………怒れるかな?折角託されたのに…負けたりしたら……。
けど………頑張ったよ?竜巻も風の刃も風弾も……最大限を生かして戦ったよ?
それだけでも………君は褒めてくれるかな?
❤️【何やられてんだよすち…】
❤️【…生き残れよ、馬鹿…ッッポロポロ】
………いや、きっと褒めてくれないね。
きっと悔しそうな顔をしながら……俺が4んでしまったことに泣いてくれるだろうな。
………ひまちゃんを、また泣かせちゃうのか。
💚「……ぉ……ッれ……さい…てっ…だ、な…」
母「っ!…(まだ生きているのか…こいつもしぶとい)」
大切な人との約束を破り、大切な人が掛けてくれた命も守れず、大切な人を泣かせてしまう…そんな最低なやつになっちゃう。
母「……やっぱり、トドメを刺さないと…」
でも………使える力は……全部使った。
それでも無理だった……もう、俺が勝てる道なんて……。
【妖精には、稀に突然変異種が生まれる】
【突然変異種は、普通の妖精とは全然違い、魔力や能力が一味も二味も違う。】
【しかし、その変化した力が自身を救うこともあるが、自身を苦しめることもある。】
💚「(………ぁ……そう、じゃん。)」
俺……自分を理解できていなかった。
俺は…突然変異種。普通の妖精とは違う妖精。
使う能力だって、流れている魔力だって、生えている羽だって………全部“周りとは違う”
けど、それらは全部“俺の力”なんだ。
母「シャキン(ナイスを構える)……」
俺の魔力は特殊魔力だ。王族と同じような魔力で……凄く強力な力。
俺はそんな魔力を上手く扱える……だって、彼がそう言ってくれたから。戦闘センスも…俺にはある。
なら…魔力を上手く使おう。そうすれば、まだまだ戦える。
でも……型にハマるようなありきたりな魔力の使い方じゃ、またやられてしまう。
そしたら、誰も真似できないような……そんな魔力の使い方をすればいいだけ。
大丈夫……俺はできる…、だって俺の羽が証明してくれるから。
【羽の美しさが綺麗であるほど、自分の可能性の表れ】
俺には、不可能を可能にできる“可能性”があるから。
……………これで良いんだよね?ひまちゃん?
君が俺に伝えたかった“強さ”って…これなんだよね?
自分の全てをかけて、新たな自分になれって……自分の可能性を信じろって…ことだったんだ。
母「っ!(刺そうとする)」
……はは、こんな簡単なことだったんだ。
……ごめんひまちゃん……ヒヤヒヤさせて、もう間違えないよ。
💚「……魔技【融合】」
母「っ!!…またこの展開…どれだけ覚醒すれば気が済むのよ!!」
母「それに……何?【融合】??……そんな魔技…聞いたことない……。」
母「まさかあいつ………新しい魔技を…………あの場面で作り出しというの!?!?」
💚「…………(風が……気持ちいい)」
俺が作った魔技【融合】……この魔技は、他者の力や部位を自身と融合し、取り込むという力。
しかし、取り込む力や部位は、自身との相性や適正率が高くないと取り込むことができず、逆に身体に合わず力が壊れてしまう……そんなリスクが伴う一発逆転の魔技だ。
今の俺ができる魔力制度じゃ、こんなデカすぎるリスクが伴う魔技までしか作れなかったが、それでも十分過ぎる。
だって………そんなリスク、俺には“0”に等しいから。
そうでしょ?俺達は適正率100%なんだから。
母「!?……炎の竜巻ッッ…」
💚「(身体の中で巡る……温かい波動。これが君の力…。)」
今度こそ……仕留める。
2人の力で………勝利を掴む!!
💚「パァンッッ!!!(竜巻が爆ぜ、火の粉が舞う)………ファサッ!!」
母「……なにその姿。…まるで、別人…っ」
💚「そうだね……今の俺は前の俺とは全然違う。」
母「何で炎を…扱って…ッッしかも、羽に赤のグラデーションが………緑色なはずだったのに…。」
💚「…………何でって…。」
💚「【融合】……したからね。」
母「…………まさかッッ……バッ!!(辺りを見渡す)……やっぱりない…ってことは……」
母「なつを羽を……取り込んだと言うの!?」
💚「そうだ…俺はひまちゃんの羽を取り込んだ。彼の大事な、羽を…自身のために使った。」
💚「……分かったでしょ?俺も…お前も…もう前には戻れないところまで来てしまった。」
💚「……全てをかけて戦えよ。覚悟を決めろ。」
第20話「決着」
コメント
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はわぁ✨✨ 今回もめっちゃ最高すぎました!!こんな熱い戦いを言葉で表現出来るの凄すぎます!!! つぎもたのしみです!!