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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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『片想いしてんのは、ほんとなんだろ?おまえ見てたらわかんもん。ま、『誰か』までは、わかんねぇけど』

「……」

『いいんじゃね、そういうの。それだけ真剣な想いを持ってるってことだろ。本音言うと…ちょっとうらやましって思うんだ。

俺はまだ、そういうのないからさ…』

こいつ…案外…。

喜怒哀楽の喜と楽しか持ち合わせていないと思っていたのに、思いもよらない哀の部分を見せられて戸惑った。

なんだよ、急に…。かける言葉に迷うじゃねぇか…

『なーんて。はぁ、しんみりしちゃったぁ』

そんな俺に気づいているのか、岳緒はすぐにいつもの声の調子に戻った。

『ネクスト、ネクストぉ。運命の出会いは俺を待ってくれてるはずだからな!お、さっそく前方から俺に向かって女子が―――って、あれは…!蓮さーん!!』

割れるような大声が聞こえて、思わずスマホから耳を離した。

なんだよ急にハイテンションに戻りやがって…

って

『蓮さん』?

スマホを離して岳緒がなにやら話をしている。

女の声が聞こえる。

この声は、やっぱり…蓮だ。

『…今ちょうどしゃべってたんすよー。代わる?』

『え、いいよ…!』

と戸惑っている声がすでにこっちに聞こえてくる。

『世話の焼ける幼なじみいたわってやってくださいよー』

『いいってば…!別に話すことなんてないし』

『えーでも心配してたじゃないすかー』

『心配なんてしてないよ…!』

はぁ…?

心配してない、だと??

たしかに昨日はひどいことをやらかしちまったけど、それ以前はおまえを思って雨の中を大急ぎで帰って来てやったんだぞ?

おまえだって安心しきって抱かれてたじゃないか。

風邪の大元はおまえだってのに、心配のひとつもしてないだと?

ムカつくな…。

スマホの向こうではしばらく押し付け合いみたいな雑音が聞こえていたけど、やがてしんとなった。

押し黙っているような雰囲気が伝わる沈黙だった。

蓮に代わったみたいだった。

そう思った途端、嫌な緊張感が押し寄せてきて、熱でぼんやりしていた頭も冴えてきた。

一方的に突き離して帰ってしまった手前、なんて話すればいいのか気まずいけれど、とにかく呼びかけてみる。

「蓮」

「……」

だんまりでも決め込むつもりか?

と思ったけど、ぽつりと答えが返ってきた。

『…風邪、ひいたって?』

けどその声は…ひどく硬くて冷たい。

…やっぱ、怒ってるかな。

『昨日家帰って、ちゃんと温まらなかったの?』

「…みたいだな」

『ばっかじゃないの?小さい子じゃあるまいし』

と続ける口調は、いつもみたいにツンケンしている。

まるで、昨晩のことなんて、なかったみたいに平然としていたいらしい…。

あーあ可愛くね。

「ずいぶんな言い方してくれるけど、誰のせいでこうなったと思ってんだよ」

『…』

「昨日のこと、なしにしようとしたっては、そうはいかないからな」

押し黙る雰囲気が、蓮の困惑ぶりを伝えてくる。

それでも俺は詰問するような口調を抑えることができなかった。

「言っただろ、俺の想いに報いることしろよ、って。答え、出せよ。もう、わかってんだろ。俺がウザイなら、ちゃんと振れ。それができないなら認めろよ。俺のことが、好きだって」

『だ、誰があんたのことなん』

「ムカつくんだよ、いい加減、もうそんなガキみたいな返事は。素直になれよ…」

『…』

「なにか言えよ、蓮、おい、蓮」

『……』

「言えよ!」

『おいおい蒼』

答えたのは、蓮ではなく岳緒だった。

『おまえ、なに怒鳴ってんだよ。蓮さん、泣いちまったぞ…?』

「……」

『なにがあったんだよ、蒼』

「…別に。おまえには関係ねぇよ」

『はぁ?』

「もういい。切るわ」

『おいちょっと待てよ、そ』

俺はスマホをタップすると、枕元に投げ捨てた。

思い出したように、熱が意識を覆いつくすして、身体全体がどっと重くなる。

頭痛ぇ。

ムカついた分、頭に血がかっと熱くなって、ズキズキとした痛みまで感じ始めた。

くそ…蓮を泣かせてしまった。

なんだかもう、俺も泣きそうな気分だった。

解かっている。あいつが困惑するのは。

誰だって驚くよな。弟として思っていた男から恋愛感情なんて押し付けられれば。

蓮のことガキって言ってるけど、告白したのをいいことに、考える暇もあたえず蓄積していた想いをガンガン押し付ける俺の方が、もっとガキみたいだ。

俺、今ので嫌われちまったかもな…。

でもそれもそれで…いいのかな。

何年も何年も苦しまされた。もうこんな想いうんざりだ…。

身体が重い。頭が痛い。天井が、なんだかすげぇ遠い。サイアクだ。

頭も体もふわふわしてどっかにいっちまいそうだ。

ああもういい。もうどうにでもなってしまえばいい。

スマホが、いつからかひっきりなしに振動している。

岳緒のバカか。

うるせぇな、もう誰ともしゃべる気になれねぇよ。

はぁはぁ、と荒れる自分の呼吸を聞きながら、俺は意識が次第に朦朧としてくるのを感じた。

ガタン

そうして、何十分か経った時だった。

気のせいかもしれないが…。

下の階から音が聞こえた気がした。

ドアが閉まるような音だ。…誰か入ってきた?

そういや俺、鍵かけたっけ?

たしか昨晩帰ってきてからは、ずっと家から出てなかったけど…。

足音が聞こえる

泥棒か…?

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