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「痛っ…」
またか、と思う。何度目だろう、この痛み。指に刺さった画鋲らを無言で取り出し、いつもと同じように自分の靴箱に敷き詰める。「これで、誰かが間違って履けばいいのに。」 そんな考えが、頭をよぎる。少しだけ、楽になる。いや、本当にほんの少しだけ。
僕の教室は、2年4組。静かだろうと思ったけれど、外から漏れ聞こえてくる騒がしい声に、またあの重たい気分が胸に湧き上がる。
ガラガラ、ドアを開けると、教室の中から数本の視線がこちらを向いた。
「あ、また来たの。」
その声が自分に向けられているのは、もう慣れた。慣れすぎて、何も感じないはずだった。でも、やっぱり少しだけ胸が痛む。
無視して、何も言わずに自分の席へ向かう。
そこには、またいつも通りの落書きが増えていた。
「ばか」「くそ」「あほ」「やーいぼっち」「羽キモイ」
羽、か。
自分の背中に生えている、あの羽。
それが、どうしても気持ち悪いと言われることに、僕はどうすることもできない。誰かがそれを笑っているのを見て、言葉にできない辛さが胸を締め付ける。それでも、必死に平静を保とうとする自分がいる。
ただ、黙って座るしかない。
椅子に座ろうとしたその瞬間、後ろから誰かが近づいてくる気配がした。
「ねえ、これなに? コスプレ? まじでキモくね?」
次の瞬間、背中を引きちぎられるような鋭い痛みが走った。
「い゙っ…!? ゃ、やめ…」
声が震えて、涙がじんわりとにじんでくる。
やめてよ、お願い、やめて…
なんて思っても、何も言わずに耐えるしかなかった。
背中の羽が、また傷つけられた。
羽の根元が引きちぎられるような、激しい痛みが広がる
それでも声を上げることはできない。
もし声を出したら、もっと酷い言葉が返ってくるのを知っているから。
涙をぬぐう手が震える。どうして、こんなことをされなければいけないんだろう。
ただ、学校に来ただけなのに。
ただ”生きてるだけ”なのに。
「…僕が、いけないのかな…」
自分でも聞き取れないほど小さな声が、口の中から漏れた。
__ 羽を持っているせいだろうか。
人と違うから?
変だから、いじめられるのだろうか。
でも、羽があっても僕は僕だ。誰かを傷つけるようなことはしていない。
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