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「……逆に言うと、俺にはガードが緩いってこと?」
「そう、かも?」
「それはそれで、男としてはちょっと複雑で傷つくけど……まあ、この際いいや」
それから叶人くんは、何かぶつぶつと独り言を呟いていたけれど
少し間を置いてから、真剣な表情で再び口を開いた。
「質問なんだけどさ。さっちゃんって、なんでそんな『経験豊富』なんて噂されるようになったの? こんなにウブなのに」
「そ、それは……っ」
私は観念して、事の顛末をすべて白状し始めた。
最初はナンパされて困っていた後輩の女の子を助けたのがきっかけだったこと。
その流れでよく恋愛相談に乗るようになり
自分なりに必死に考えてアドバイスをしたら、その通りにやった後輩が好きな人と見事に結ばれたこと。
「そしたらみんなが私を持て囃してくれて。でも途中から、どんどん話が大きくなっていっちゃって……」
「『先輩ってめちゃくちゃ恋愛に詳しいですよね、今までの経験からですか!?』って聞かれたときに、つい引くに引けなくなって『そうそう』とか言っちゃったりして……」
みんなからの期待の眼差しが重くて、後戻りできなくなって
噂にどんどん尾ひれがついていったのだと
私は思いっきり溜め込んでいた不安を一気に吐露した。
叶人くんは少しの間黙り込んだ後、深い溜息をついた。
「……そういうことか。なるほどね」
「お、お願い!会社の皆には黙ってて欲しいの……!!」
私は懇願するように、ベッドの上で叶人くんに泣きついた。
「……黙ってるのはいいけど、嘘っていつかバレるものだよ?何かの拍子にボロが出たら、それこそ挽回できないよ?」
叶人くんの正論が容赦なく私を襲う。
「そ、そうかもだけど……」
私が俯いて悩んでいると、叶人くんはゆっくりと、どこか企むような言葉を紡ぎ出した。
「ならさ。いっそのこと、本当に『経験豊富な女』になっちゃうのはどう?」
「へっ!?そ、それって…色んな人とえっちなことしろってこと……っ!?」
「なわけないでしょ。まず、さっちゃんって、恋愛での〝経験豊富〟の意味、分かってる?」
「えっ?そりゃ……色んな人と付き合ってきたとか、夜のテクニックを熟知してるとか…?」
「んー、まあそれもあるけどね。単なる交際人数の多さだけじゃなくて、相手を思いやって理解して、どんな状況でも柔軟にコミュニケーションを取れる『精神的な余裕』や『対応力』がある状態の人のことを言うんだよ」
「精神的な、余裕……」
「あと、感情的にならずに、冷静に問題を解決できる判断力も必要だね」
#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
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