朝。
目が覚めた瞬間、
らんは一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。
白い天井。
カーテンの隙間から入る光。
静かな空気。
(……あ)
家だ。
ちゃんと、自分の部屋。
ちゃんと、今の家。
それを確認して、ゆっくり息を吐く。
ドアの向こうから、物音がする。
足音。
床のきしむ音。
キッチンの扉が開く音。
(いるま)
それだけで、起きる理由になる。
布団から出る。
少しだけ冷たい床。
でも、前みたいに怖くない。
リビングに行くと、
いるまがキッチンに立っていた。
マグカップを手にしている。
「……おはよ」
らんが言う。
いるまは振り返らないまま、
「おはよ」
短く返す。
それだけ。
それだけなのに、
胸の奥が、ちゃんと温かくなる。
らんはソファに座る。
昨日と同じ場所。
でも、今日は少し違う。
昨日より、“慣れてる”。
「今日」
らんが言いかける。
でも、続けられない。
いるまが先に言う。
「休みだろ」
「あ……うん」
学校は休み。
だから。
だから、逆に怖い。
“次”を考える時間があるから。
沈黙。
時計の音。
外を走る車の音。
らんは、自分の手を握る。
少しだけ、震えてる。
気づかれたくなくて、
膝の上に隠す。
「買い物行く」
いるまが言う。
突然。
「……え?」
「牛乳ない」
ぶっきらぼう。
でも。
少しだけ、らんの方を見る。
「……そうなんだ」
「……」
数秒。
それから、
「来るか」
小さく。
本当に小さく。
らんの心臓が、大きく跳ねる。
「え」
聞き返してしまう。
いるまはもう一度は言わない。
代わりに、
「別に、どっちでもいい」
逃げ道を作る言い方。
らんは迷う。
外。
知らない人。
視線。
音。
全部、まだ怖い。
でも。
(いるまが、いる)
それだけで、
怖さの形が少し変わる。
「……行く」
小さく言う。
いるまは「そうか」も言わない。
ただ、
「準備しろ」
それだけ。
玄関。
靴を履く。
手が少しぎこちない。
ドアの前に立つ。
心臓が速い。
外は、まだ怖い。
でも。
隣に、いるまが立ってる。
近すぎない距離。
触れてない距離。
でも、
すぐ隣。
「……らん」
名前を呼ばれる。
「なに」
「無理なら戻れ」
優しいわけじゃない言い方。
でも、
逃げていいって言ってくれてる。
らんは、
ゆっくり首を横に振る。
「行く」
今度は、少しだけはっきり。
ドアが開く。
外の空気。
光。
音。
世界。
怖い。
でも。
ひとりじゃない。
歩き出す。
並んで。
触れないまま。
同じ方向へ。
境界線は、まだある。
消えてはいない。
でも。
その線の上を、
二人で歩いている。
なんか、なんというか、、、、ごm((じしんもて






